青年海外協力隊員によるカイゼン活動—コンポンチュナン州立病院—

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「鍋の港」という意味を持つコンポンチュナン州。カンボジアの真ん中近くに位置し、ここで採れる粘土を使ったコンポンチュナン焼きが有名だ。

州都のコンポンチュナン市にある州立病院は、1962年に設立されたが、1975年から79年のポルポト政権時代に破壊されたのち、再建を果たした歴史を持つ。州内では1番のレベルの病院であるが、スタッフも医療機器も足りず、保健省から支給される薬が限られているため薬剤の使用にも限界があり、重症の患者は首都プノンペンに送っている。この病院で、青年海外協力隊員が活動中だ。


【看護師による院内カイゼン】

藤塚依美さんは看護師。このコンポンチュナン州立病院より院内のカイゼン指導を求められ、日々奮闘している。着任してから、1年目は救急病棟にて病棟内の環境や業務改善に取り組んだが、病棟スタッフが大変忙しい状況にあり、思うように彼女の活動は進まなかった。

しかし、徐々に形になってきた。病棟内の整理整頓に始まり、今まで定期的にされなかった「月一回の病棟会議」を定着化し、みんなで問題点を話し合う場をつくった。院内の掃除については、病院の清掃スタッフだけでは足りないため、泊まり込みで患者の世話にきている家族に目をつけ、患者の家族にも手伝ってもらうようにした。また、ゴミはちゃんと分別するよう、ゴミ箱にわかりやすくイラストを貼付した。掃除スタッフとも打ち合わせを行う。藤塚隊員も定期的に病院スタッフと一緒にゴミ拾いをしたり、たばこの吸い殻の数まで一緒に数えたりしたこともある。

人々に行動を変えてもらうには、「自分でもやって見せて、同じことを何度も何度も繰り返して伝えることが大切なんです。」と藤塚隊員は言う。
2年目は院内全体の改善に取り組んだ。その中での画期的な取り組みは、院内放送の開始である。

藤塚隊員はまず、元々あった院内の決まりや清掃スタッフからの情報、自分で見聞きしたことを基にして、独自に院内の掟7か条を策定した。破った人は罰金だ。

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1.ゴミはゴミ箱に捨てましょう。
2.ゴミは分別しましょう。
3.便器以外での排泄はやめましょう。
4.使ったものは元の場所に戻しましょう。
5.ものはきれいに使いましょう。
6.院内は禁煙です。
7.病院内は静かにしましょう。
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それをポスターにして院内に掲示したものの文字を読めない患者や家族もいるため、掲示だけでは効果が薄い。そこで過去にも院内で行われていたが、スピーカーの故障を機にそれきりになっていたという院内放送を再開させることとした。

まずクメール語で原稿をつくって同僚にチェックしてもらう、ラジオ局でアナウンサーに音楽付きで録音してもらい、スピーカーを購入して院内に設置する…ここまでで2か月。その後、しばらく担当者から音沙汰がないため何度も確認。立ち消えになったかと思われていたが、さらに2か月後、ついに流れた放送を聞いた藤塚隊員は「今日は初回なので、しつこいくらい同じ放送が繰り返されていますが(笑)、まずは一安心。あとは担当者が毎日スイッチ押して放送を続けることが大事なので、フォローしないと。」と、嬉しそうに語った。

任期はあと半年。「人に恵まれ、みんなに助けられてここまで来た。これまでやってきたことを、残りの期間で定着させたい。そしてこれからはカンボジアのスタッフが、自分たちで考え、動き、改善して行けるようになって欲しいと思っています。」

病院長はこう語ってくれた。
「内戦後、何もなかったころから行われてきた日本の支援を、カンボジア人は忘れていない。」

ここでカンボジア人と生活をともにしながら、悩みながら、自分にできることを1つずつ実行に移している隊員たちの、これからの活躍にも期待したい。

【写真】

院内放送を流すスピーカー

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院内のゴミ箱

【写真】

清掃


【写真】

7か条を読み上げる藤塚隊員

【写真】

病院スタッフと藤塚隊員

【写真】

産科病棟


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