Ita ba hamutuk!−私たちは一緒に歩いていく−

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じわじわと暑さが増していく「初夏」の南半球、ティモール島での9月のある日。私たちを乗せた車は、東ティモールの首都ディリから、一路南へと向かっていた。悪路をたどること数時間、周辺にはクバの葉や幹を編んで作られた家が現れ、緑豊かな農村の風景が広がる。「Bondia! Mai lai!(ボンディア!マイライ!、テトゥン語で、おはよう!さあ、いらっしゃい!)」そのうちの一軒から明るい女性たちの声が聞こえてきた。ここはコバリマ県スアイ郡。今日も女性たちはたくましく、元気な笑顔で私たちを待っていた。

ここを訪れたのは、JICA草の根技術協力事業で活動するNGOに同行し、農村部の女性グループに対してココナツオイル作りの研修を行うためだ。このプロジェクトは、農漁村女性グループの経済活動活性化を目標として2013年にスタートし、コーヒーやハーブティー、ココナツオイルなどの特産品生産指導を通じて、女性たちの生計向上を支援している。

事業を実施するのはいずれも貧困率が高いとされる地方の農村部。東ティモールは東南アジア諸国の中でも特に貧困率が高く、東ティモールが定める1日を0.88ドル以下で生活する貧困ライン以下にある貧困層は国民の40%以上に上る。わずか120万人の国民の7割以上が生活する農村部の振興は、貧困削減の観点からも、また、主要産業の育成や食糧安全保障の観点からも、非常に重要な課題だ。

NGOの活動はまさに「草の根」である。地方へ絶え間なく足を運び、現地語のテトゥン語で密にコミュニケーションを取りながら、日々支援の現場と向かい合っている。「大事なのはこの国の人々と互いに知り合い、共に歩んでいくこと」だと彼らは言う。「モノだけ与えても意味がないのです」「彼女たちがいずれ誰の支援にも頼らず、自分たちで活動を続けていけるように、根気強く向き合ってやり方を伝えていく必要があります。常にこの国の人々の声に耳を傾け、ゆっくりでも着実に一緒に歩むことが大事だと思っています」。

研修に臨む女性たちの目も真剣だ。NGOの職員がテトゥン語で説明する製造手順や、コスト計算の方法に、食い入るように聞き入っている。衛生管理の徹底をしっかり教えられた彼女たちは、笑顔でそろいのエプロンや三角巾を身に着ける。「ココナツに水をどれだけ入れるの?」「保管する温度はどれくらい?」手を動かしながらも質問が飛び交い、研修が進むごとに手つきはどんどんスムーズになっていく。一方で、いいココナツは海岸沿いに生えるヤシの木から採れることや、ココナツの殻のきれいな割り方など、彼女たちに教えられることも多い。互いに教え合い、技術を伝え合う現場はいつでも明るい声に満ちている。

自給型農業と物々交換が主流の農村部で暮らす彼女たちにとって、自分たちの手で現金収入を得る機会はほとんどない。この事業を通して農産品の製造販売を始め、初めて彼女たちが手にした収入は、一人当たり30ドル。「たった30ドル?」と感じる人もいるかもしれない。しかし、これまで労働の対価に収入を得たことのなかった彼女たちにとってこれは大きな一歩で、喜びなのだ。「これで子どもたちに文房具や制服を買ってあげられる」と彼女たちは笑顔で話す。彼女たちが踏み出した歩みはまた、小さいながらも次世代への種をまいているのである。



(関連リンク)

平成24年度第2回採択内定案件(事業・プロジェクト、草の根パートナー型)

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NGOの説明に真剣に聞き入る女性たち

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そろいの黄色いエプロンを身に着ける彼女たちからは笑顔がこぼれる

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子どもたちも研修の様子に興味津々


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