自分にしかできないこと

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インドの首都ニューデリーから、飛行機で北に約50分行ったところにあるウッタラカンド州デラドゥンで、私は養蚕農家の収入と繭収穫量の向上に向け活動をしている。

配属先は中央蚕糸(さんし)局の地域養蚕研究所であるが、私自身、養蚕業に携わったことはこれまで一度もなかった。周りが養蚕のプロという環境の中、「自分には一体何ができるのだろう」とずっと考えていた。

しかし現地で生活をし、同僚や養蚕農家、地元の人と話をする中で、どういうことが必要で、自分が何をすべきなのかが見えてきた。

そのうちの一つに養蚕農家、特に女性の識字率が低いということがあった。

大学でビジュアルメディアと写真を専攻した私は、農家にテキストや口頭で伝えられている養蚕技術が、写真やイラストを使って視覚化(ビジュアル化)され、それがポスターになれば、字の読めない人にもわかりやすく、より正確に技術が伝わり、最終的には収入と繭収穫量の向上に貢献できるのでは、と考えた。

早速そのアイデアを配属先の上司と州養蚕局に伝えたが、最初はどちらの反応もイマイチであった。

しかしその後、あきらめずに、試作品を携え、実際に見てもらい、何度も説明と話し合いを重ねた。その結果、同州にいる同じグループ型派遣の隊員と共に作成したポスターは、配属先、州政府養蚕局の協力を得て完成し、同州内の3地域に配布されることとなった。

ポスターは農家にも好評で、配属先からは、南インドでも配布したいという要望を得た。専門家とは違う視点で、自身の経験を生かせたことはうれしかった。

そしてこのポスターのやり取りを通じ、多くのことも学べた。

例えばインドのチャイ(お茶)文化。急いでいる時なのに、チャイ、チャイ、チャイ。「この忙しい時に何でチャイなんだ!」と心の中で叫び、インドのゆったりとした時間の流れを理解できない時もあった。

しかし実際に生活をしてみると、チャイの時間は重要で、そこから生まれるコミュニケーション、信頼関係があることに気づく。実際にこのチャイの時間のおかげで、このポスター活動が良い方向に進んだ一幕もあった。

以前の青年海外協力隊のポスターに、「僕たちにできることは必ずある」というフレーズがあった。その通りだと思う。まだやりたいこと、できると思うことがたくさんある。

インドの文化と価値観を吸収しながら、残りの任期も「自分にできること」、そして「自分にしかできないこと」を、現地の人と一緒に考え、取り組んでいきたい。



(関連リンク)

各国における取り組み インド

JICAインド青年海外協力隊機関誌 2017年1月発行 第2号(PDF/12.1MB)

JICA's Volunteer Activities in India (YouTube、英語)新しいウインドウで開きます

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村での調査風景

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村での養蚕

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あらゆる意味で生活において重要なチャイ


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完成した養蚕ポスター

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いつも温かく迎えてくれる養蚕農家さん

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アッサム州出身の友人とアッサム州の伝統衣装を着て


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