国づくりは人づくり−坂本龍馬育成計画 in ラオス−

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「外交の極意は、誠心誠意にある。ごまかしなどをやると、かえって、こちらの弱点を見抜かれるものだよ」

これは勝海舟の言葉です。私が新入職員研修先のラオスで出会った宮田伸昭JICA専門家は、まさに勝海舟のような人でした。

民間企業に就職した友人と話していて感じるのは、JICAは「ボランティア事業」のイメージが強く、その他の事業内容はあまり知られていないということです。かくいう私も、入構前に持っていた「JICA人」のイメージは「農村などで汗を流して、笑顔で働く優しい人」。そのイメージが、ラオスである会議に出席した時、宮田専門家によって覆されました。

「もう3ヵ月、私がずっと言ってきたことだ。なぜそれができないのだ!あなたならできるのに、なぜしないのだ!!」「このページは先週の会議と同じ!ちゃんと作っているのですか!!」「話を変えないで!これはどうなっているのです!!」

実際は英語でのやり取りなので、これは私の翻訳ですが、宮田専門家はすごい剣幕で、大勢の相手政府の人たちに、一人で立ち向かっていました。その姿はまるで、不正に対して一人で立ち向かい、「やられたらやりかえす。倍返しだ!」と叫ぶ、ドラマ『半沢直樹』の主人公の銀行員のようでした。会議で大勢の人を前に毅然とした態度で発言する宮田専門家は格好良く、優しいだけの「JICA人」ではありませんでした。

しかし、会議が終わると一転、菓子をつまんでコーヒーを飲みながら、ガハガハと笑い、相手方と談笑していました。真剣な会議の後に、大丈夫なのかと心配する私に、宮田専門家が教えてくれました。

「結局、この仕事で一番大事なのは人間関係だよ。そこはどこの国でも一緒。ごまかしが利かない。私たちはラオスの発展のために日本国民の税金を使っているが、日本方式をラオス人が身に付ければ、将来的にラオスに日系企業が参入しやすくなるという側面もある。僕たちの肩に両国関係の将来が掛かっている。そのために必要なことはどれだけ厳しくても言う。誠実な態度でね。それが終われば、楽しいおしゃべりもしないと。嫌われちゃったら終わりだから」

この言葉は非常に印象的でした。JICAの使命は途上国を支援する国際協力だと考えていましたが、それが日本企業などの海外進出の土台づくりにもつながっていることに気付かされたからです。

宮田専門家と過ごす最後の日の夜、歓送会を開いてくれました。そのときの言葉を紹介したいと思います。

「僕はね、国民性とかそういうの、この国づくりの仕事には関係ないと思っているんだよ。本気で国を良くしたいと思っている人間は、世界中どこでも同じ志がある。ラオスの国民性がのんびりしているとか、そういうのは関係ない。僕やJICAがこの国を変えるんじゃなく、この国の人間が自分たちで変えていけるようにするために仕事してるんだ。僕はね、ラオスの坂本龍馬を育てたいんだよ」

明治維新の原動力となった坂本龍馬。そんな人材を育てたいと宮田専門家は誠心誠意、相手国政府と向き合っています。国づくりは人づくり——。世界中、JICAのプロジェクトがある所、勝海舟がいるに違いありません。

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ラオス風焼肉シンダート。歓送会の席で

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ラオス政府との会議

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ラオスで柔道を教える青年海外協力隊員。隊員も「JICA人」だ


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