途上国のキノコ栽培に見る可能性

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私は協力隊参加前、キノコの種菌や資材を専門に扱う企業で働いていました。日本はキノコの栽培においても技術力が高いですが、それがあだとなり市場では激しい価格競争が行われています。そんな中、海外での栽培に挑戦することに魅力を感じ、協力隊参加を決めました。会社を辞める前、ある上司から「途上国の栽培なんか見て何の役に立つ? 意味ないだろ」と言われ、何も言えず悔しい思いをした記憶がありました。でも今なら言えます。「この可能性だらけの世界を見てくれ」と。

マレーシアでの配属先は貧しい農家を支援する政府機関のキノコ部門。任地はキナバル山というマレーシアで一番高い山の中腹、標高約1600メートルの場所にあります。そのため、赤道付近にもかかわらず夜は寒く、10度以下になることもあり、赴任当初は寒くて寝つけなかった記憶があります。同僚は先住民族で、主に現地語であるドゥスン語と公用語であるマレー語を話しています。言語の壁にはいつも悩まされますが、特に専門的な用語を不慣れな現地の言葉で覚えるのが大変でした。

赴任当初は、職員と汗を流しながら現地のやり方を覚え、さまざまな試験を行いながら、現地に適した栽培法や菌床の作製法の工夫を重ねました。任地では主にシイタケを作っており、おが粉と米ぬかを混ぜて作った培地(菌床)による栽培を行っています。ちなみに現地でもシイタケのことは「Shiitake」と呼びます。

マレーシアの高地は驚くほどシイタケの発生に適した温度になっており、日本では考えられないような栽培をしています。ざっくり言うと、現地の栽培法は非効率的ではあるけれども、自然の力を生かしたやり方をしています。また、断水などに対応した方法でもあります。そのため、一概に日本の方法を押し付けるのは何か違うなと思っています。

ただ、日本の技術が効果的な場合ももちろんあり、菌床工場の改革では赴任当初30パーセント以上あった菌床作製時の雑菌汚染率が、現在では5パーセント以下まで下がりました。これは植菌方法の違いや資材不足など、多くの難題を乗り越えて、ようやく成し得た成果でした。このほかにも、日本で栽培されていない珍しいキノコに挑戦したり、逆に日本で人気のある栽培キノコを任地で作ったりもしました。そしてこれらのキノコ市場もまた、開拓できる余地があるのです。

このように、途上国でのキノコの栽培は未成熟、未開拓の部分が多く、可能性の宝庫なのです。



(関連リンク)

各国における取り組み マレーシア

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キナバル山とキノコの栽培舎

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現地のシイタケ栽培

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菌床工場の様子


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野生キノコの調査

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栽培農家への講習会の様子

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マレーシアの学会でナメコ栽培について発表


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