モンゴルの地方の現状−人々の心に寄り添う地方開発とは−

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日本の約4倍という広大な国土に人口は日本の40分の1の300万人。さらにその人口の4割程度の130万人が首都ウランバートルに集中-それがモンゴルです。

ウランバートルはモンゴルの一般的なイメージを大きく裏切ります。高層ビルが立ち並び、交通渋滞は日常茶飯事です。雇用や教育機会を求める人の流入が続き、ウランバートルへの一極集中化が進んでいます。一方で地方はどうなのか、複数の町や村を訪れる中で、地方の現状と人々の思いが見えてきました。

ウランバートルから西に1,500キロほどのホブド県。車なら丸2日、飛行機でも3時間かかり、1時間の時差もあります。ここはカザフ族を含む多様な民族のるつぼといわれ、モンゴル西部地域の中心です。県庁所在地であるホブド市では一通りのものがそろいますが、町を出ればすぐに何もない広大な大地が広がっています。ホブド市から最も離れたソム(郡にあたる行政組織)に行くには未舗装道路を車で片道4時間以上かかります。モンゴルでは国内の製造業が十分育成されておらず、ほとんどを輸入品に依存しているため、学校の教材一つ調達するにしても町から草原のでこぼこ道を数時間かけて運ばなくてはなりません。多大な手間とコストがかかりますが、これは他県でも同様です。ただでさえ十分な財源があるとはいえない地方で効率的な行政サービスを実施することの難しさを実感しました。

アルハンガイ県では県庁所在地からも遠く離れたソムを訪問しました。ウランバートルから車で7時間ほどの県庁所在地ツェツェルレグ市から、草原を3時間走ってようやく辿り着くウルジットソム。香川県よりやや狭い面積に、人口はソムとしては平均的な3,000人程度。中心地にはソム役場・病院・学校・小さな商店があり、そこにソムの人口の4分の1ほどが暮らしています。そのほかは草原で暮らす遊牧民です。中心部には電気は通っているものの、上下水道は一切ないため、生活に必要な水は井戸からくんでいます。こうした状況は市から遠く離れたソムでは珍しくはありません。

このソムの中心地から遠く離れた大草原にゲル(移動式住居)を構えている遊牧民のお宅を訪問しました。4世代にわたって同じ土地にゲルを建てて暮らす大家族の曾祖父が、「自分の4世代前から、秋はこの場所にゲルを建てて遊牧を営んできたんだ」と誇らしげな表情で話してくれました。モンゴルの遊牧民は、季節ごとに毎年ゲルを構える場所が決まっていて、その場所を先祖代々受け継いでいることも多いのです。いくら町へのアクセスが悪くても、生活インフラが無くても、彼らにとってはこの場所で暮らすことが何より大切なことなのだと気づかされました。

世界で最も人口密度が低く、全てがウランバートルに集中するこの国で、地方の開発は容易ではありません。人口規模が小さいために産業の育成が困難だったり、物品の輸送コストが高くついたり、事業の実施に際しても裨益(ひえき)人口が少なく事業対象地域になりにくかったりと、多くの障壁が存在します。そして地方の公共サービスの質の低さや雇用機会の少なさから、過疎化も確実に進んでいます。このような現状では、「いずれかの地域に人口を集約化して公共サービスの効率化や産業の振興を図る」という対応策が考えられるのかもしれませんが、モンゴルの人々も日本人と同様かそれ以上に、故郷の大地に愛着を持ち、大切に思っています。モンゴル事業を担当する職員として、こうした人々の気持ちに寄り添った地方での事業展開を模索していきたいと思います。

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高層ビルも立ち並ぶ首都の中心部(ウランバートル市)

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ホブド市の中心部(ホブド県)

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ホブド市街を出るとすぐに広がる光景(ホブド県)


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県庁所在地からウルジットソムへの道(アルハンガイ県)

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ウルジットソムの中心部(アルハンガイ県)

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訪問した遊牧民のゲルの前に広がる大草原(アルハンガイ県ウルジットソム)


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