自分の信念を伝える-ガンバ大阪、元キャプテンの木場さんから学んだこと-

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スリランカの主要都市コロンボから北へ360キロメートル、幹線道路沿いには飲食店や衣料品店などさまざまな店舗が所狭しと軒を連ねるが、幹線道路を一つ入るとのどかな草原が広がるキリノッチ。平和そうに見えるこの地も、ほんの数年前まで、約25年間続いた内戦(注)の最後の激戦地として、すべての建物が破壊され人々も避難を強いられていました。人口のほとんどはタミル人で、今でも人種や宗教の溝は深く、当時を知る彼らの心の傷もいまだに癒えていません。

そんなキリノッチの教育支援を担うため、小学校教育隊員の私が派遣されました。終戦後、NGOなどさまざまな機関の支援で建物などハード面は整いましたが、教育についての課題は山積していて、活動は常に手探り状態。学校の巡回が主な活動ですが、文化や慣習、価値観の違いに加え、大きな、大きな「言葉の壁」があります。

活動を始めたころは、「これではいけないよ」「こうした方がいいよ」と教諭たちに伝えていました。でも、「より良い教育への改善を」と思って伝えているのに、伝わった満足感はなかなか得られず、自分が間違っているのではと悩み始め、だんだんと伝えることが少なくなっていました。

そこで、活動のヒントにつながればと思い、任地を離れてコロンボとコロンボ近郊で北東へ車で1時間程の場所に位置するガンパハで行われたサッカークリニックに運営補助として参加しました。このイベントは、Jリーグのガンバ大阪で以前キャプテンを務めていた木場昌雄さんが、子どもたちのサッカー技術向上や、阪神・淡路大震災での被災経験、災害が起こったときの心構えを伝えようと実施しているもの。昨年に続き2回目の開催でした。

まず、水分補給の時間は与えても、ただ単に座って休むような暇は与えない、日本を彷彿させるテンポのいい練習にスリランカの子どもたちがついていっているのに驚きました。私が知っている学校の子どもたちは、苦手なことや分からないことがあればすぐに諦めてしまう状態で、対照的です。

1対1の練習が始まると、「ボールまで全速力で走ってスピードを保ったまま相手を抜きなさい」との指導がありました。初めは頑張る子どもたちも、疲れてくるとだんだんスピードが落ちてきます。すると木場選手がすかさず、「今、全力でやったか? 難しいことじゃないぞ。全力でいきなさい。練習でできないことは試合でもできないぞ」とげきを飛ばします。すると、どの選手も全力でプレーし、最後の最後まで力を抜くことはありませんでした。

木場さんの信念や思いが詰まった指導を間近で見て、文化や慣習を言い訳に、私自身が諦めていたことに気づかされました。

私自身が大切に思っていることを、「伝わらないから」と諦める必要はない、遠慮もいらない。全力で伝えれば教諭たちだって気づいてくれるかもしれない、そう感じることができました。残りの任期もあと1年弱。私の信念を、現地の教諭たちに伝えていきたいと思います。

(注)スリランカ政府とLTTE(タミル人の独立を掲げて作られたタミル人組織)の間で起こり、1983年~2009年の約25年に及んだ武力紛争。合計7万人以上が亡くなった。紛争終盤は北部の都市で激戦が繰り広げられ、キリノッチはLTTEの本拠地であったため甚大な被害を受けた。政府軍が北部を完全制圧し紛争は終結したが、不十分な地方分権や大きい経済格的、社会的格差の問題は解決しておらず、依然としてシンハラ人とタミル人の民族間の溝は深い。

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まずはストレッチから!

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コーチの指導を目と見て耳で聞く、木場さんからの最初の指導をすぐに実践していました

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「教わったことを間違えてもいいからやってみる!」


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今年も木場さんが自身の被災経験を語り継いだ

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とても真剣に聞いていました

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この笑顔。有意義な時間になったこと、間違いなし!


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