スリランカの勤務時間、仕事の進め方(後編)

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【仕事の進め方】
スリランカの気象局に勤務していて、つくづく思うことは仕事の流れの違いである。

ある本によると、日本人の仕事の進め方は徹底した職員の総意にもとづく一致団結型だという。

日本では仕事を始めるとき、職員はまず会議を開いて仕事の手順を議論し、分担を決め、一応全員が納得したうえで仕事を始める。だから日本の会社には、必ず大小の会議室が揃っている。仕事が始まるまでの議論に時間がかかるが、総意のもとで仕事を始めるので、仕事の進み具合は早い。典型的なボトムアップ型である。

日本で仕事をする上で大事なものは、みんなで決めた分担表と日程表ではないか。仕事が始まってから口を出す上司は好まれない。上司は仕事の先導役ではなく、監視役である。だから、何かの理由で上司が仕事の内容を変えようと思っても、一度みんなで決めたことの舵をすぐには切りにくい。

一方、スリランカの仕事の進め方は、典型的なトップダウン方式のように見える。

仕事を始めるにあたって、上司が仕事のやり方から分担までのすべてのことを自分で考える。それを個別に部下に伝える。部下は仕事の全体がよく見えないまま、与えられた仕事に力を尽くす。その総力として仕事が完成する。

上司は映画監督である。映画の撮影では、俳優が映画のどこの部分を撮影しているのかわからないまま、最後には立派な映画が完成することがよくあると聞く。上司は孤独かつ責任は重大であるが、もし仕事の内容を変更しようと思えば、上司の決断一つで簡単に変えられる。

だから私の職場には、日本には当然ある6人から10人程が集まれる小さな会議室がない。初めは不思議に思ったが、仕事のやり方の違いを見て納得した。必要なものは上司の椅子と机、そして部下が上司から指示を受けるための椅子である。

気象局で最も忙しいのは長官である。次が部長クラスである。彼らは一日多忙である。

長官は上級官庁の防災省大臣や次官によく呼ばれている。帰ってくると部長を呼んで指示を与える。部長は具体的な仕事内容を考えて、部下に直接かつ具体的な指示を与え、仕事が終了するまで目を離さない。責任も仕事も一手に引き受けている。

スリランカではみんなで仕事を始めると最初のうちは仕事がなかなか進まない。それは部下たちが自分たちの仕事の全体像と自分たちの分担がよくわかっていないからではないかとこの頃思うようになった。

その代り、日本人から見ると絶望的に遅れている仕事であっても、計画の終わりに差しかかると仕事が一気に進むことがある。これは映画の断片がつながってくるにしたがい、全体が見えてきて、がぜん俳優に力が出てくる、ということのようだ。

こうした比較をして、私は日本方式の方がスリランカ方式より優れているというつもりはない。それぞれの国には長い歴史と伝統がある。仕事の進め方にしてもそうだ。各国の事情に気が付くには時間がかかる。私の場合、これに2年かかった。だから最近では、カウンターパートには個別に仕事の話をするようにしている。全員が出席しての会議はあまり開かなくなった。

終わりに、トップダウン方式のスリランカでは、さぞ上司はいばっていると思われるかもしれないが、そうではない。

時々上司が部下を呼んで、あるいは部下から上司のところに行くのかもしれないが、長い時間話し込んでいる。話の内容は仕事そのものでない。職場環境や仕事への不満などを上司が部下から聞くという制度があるらしい。その時の上司の顔は、部下のお父さんやお母さんのようである。真剣に部下の話を聞いている。日本では見慣れない良い習慣である。



(関連リンク)

スリランカの勤務時間、仕事の進め方(前編)

【写真】

プロジェクト執務室。部下がいない私の机の前にも椅子が置いてある

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