セルビアの知的障害者施設の自立に向けて

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私は、配属先である知的障害者施設の自立支援のため、セルビア、ベオグラードに来ています。施設は20歳から40歳ぐらいまでの男女11人を、朝9時半から16時まで預かっています。

セルビアは国がまだまだ貧しく、障害者施設に対する国の支援がありません。そのため各国大使館や国内外の企業に支援を要請し、何とか運営しています。また料金を払って施設に通える障害者はほんの一握りで、大半の障害者は親が家で面倒を見ているのが現状です。

赴任時の要請は商品開発でしたので、障害者たちと、段ボールの切れ端で紙すきコースターを一緒に作りましたが、到底、販売に耐える商品にはならず、失敗に終わりました。

また、ノルウェー国大使館の援助によるレストランを施設内に開業する準備に入っていましたので、障害者と共に作った日本食を販売しようとメニューを検討。カレーに決め、毎週木曜を「日本食デー」として販売することになりました。

セルビアではカレーのルーが手に入りませんので、セルビア在住の日本人の方からも協力を得ながら、ルー作りからのスタートです。障害者もジャガイモやニンジンの皮むきや玉ねぎを炒める作業の手伝いができるようになり、カレー作りに積極的に参加しています。自分が作ったものを販売できる喜びを味わっているようです。

しかし、ここではルーとご飯を混ぜて食べる習慣がなく、カレーを発売して1年がたつ今でも混ぜて食べることに慣れてもうらうのに苦労しており、食文化を変える難しさを痛感しています。

ただ、それだけでは施設の自立は程遠いため、ベオグラード市植物園内にある日本庭園の補修を提案し、日本大使館の協力も得ながら、障害者と共に補修する許可を得ました。1年目はサクラ、2年目はサツキを障害者の手で植栽し、日常の管理も行う計画です。資金面では当地に進出している日系企業の支援が決まり、日本からサクラを輸入すべく準備を進めています。日本庭園がサクラとサツキで満開になる時期には市民の憩いの場となることを期待しています。

また、セルビアでは、日本のように障害者教育や施設運営ノウハウが整備されていないため場当たり的な活動が多く、ノウハウの整備や計画的な活動の実現が課題です。そこで、私の地元、京都精華町の協力を得て、財団法人自治体国際化協会にセルビア障害者教育の向上を目指すための3年間の案件を申請し、運よく採択されました。1月には、この事業を活用して、配属先の障害者支援のリーダー3人を連れて訪日。障害者教育研修を通じて多くを学んでもらうことができました。

今回採択された事業では、2年目には京都精華町の関係者がセルビアに来て、私の配属先やセルビアの障害者教育現場の視察を計画しており、最終年となる3年目には再び日本での障害者同士の交流を計画しています。うまくいけば産、官、学の協力事業になります。最終的には日本とセルビアとの障害者交流の場が作れればと願っています。

思えば国際協力の現場においてボランティアは技術以外にアピールすべきものは何があるのでしょう。私の場合何もありません。そのため活動を進めて行くためには周囲の人達の協力が不可欠です。今回も大使館の協力がなければ植物園の許可や日系企業の支援も得られなかったろうし、精華町役場の協力がなければ自治体国際化協会の活用もかないませんでした。

その後の活動でもセルビア、日本の関係者の大きな協力を頂いています。しかも皆さん障害者に対する関心は非常に高く、何とか力になれればという気持ちを強く感じます。今回私は声を上げたにすぎません。あとはすべて周りの人たちの協力です。いかに周りの人たちの協力を得るかがボランティア活動のポイントになってきます。

私の任期は残り半年となりましたが、今回紹介した取組みは任期中に全て完了できるものではありません。後任のボランティアも含めて継続的な支援が展開されることを願っています。

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失敗に終わった紙漉コースターの作製訓練。道具はすべて手造り

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日本式カレーライスの調理実習。集中力を持続してもらうのが大変

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カレーライスを障害者が試食。ご飯とルーを別々に食べてしまいます


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日本で障害者施設での実習を見学。示唆に富んだ情報をいただきました

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日本料理とセルビア料理の交換実習

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