エジプト初 日本をモデルとした点字ブロックの導入

Twitter Facebook はてなブックマーク メール

世界保健機関(WHO)によると、世界人口の約15%は障害者であり、その約80%が途上国に居住しているとされている。エジプトには正確な統計は存在しないが、エジプトも例外ではく、国民の約15%にあたる1,300万人近くが障害者であると言われている。

近年、障害者の社会参画促進は、エジプトの重要課題の一つとして認識が高まっている。包摂的な社会開発はエジプト政府の長期政策「Vision2030」にも掲げられ、2018年は「障害者の年」に定められた。法制度、街や人々の生活にも、少しずつ変化が見受けられる。

この背景には、NGOや障害当事者団体等、さまざまな市民社会の地道な努力がある。その一例として、エジプトで活躍する若き団体、Helmの活動を紹介したい。

Helmとは、アラビア語で「夢」を意味する。Helmは「バリアフリーと障害者雇用の推進により、障害者の夢を現実に」という思いを込めて、2014年に20代の若手社会活動家が設立したNGOだ。今年4月、Helmによって、エジプト最高峰の国立大学、カイロ大学キャンパス周辺にバリアフリー歩道が整備され、エジプトで初めて、視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)が導入された。

Helmは、ピラミッドやスフィンクス等、観光で有名なギザ県をバリアフリーの街にするべく、ギザ県知事と協力し、県内各地でバリアフリーの推進を行っている。最初のプロジェクトとして彼らが選んだのが、カイロ大学だった。カイロ大学の学生の中には約1,400人の障害のある学生がいるにもかかわらず大学周辺地域はバリアフリーの歩道が整備されておらず、障害のある学生は毎日の通学においてさまざまな問題を抱えている。彼らの困難を取り除き、障害を理由に大学進学をあきらめてしまう若者を一人でも減らし、障害のある若者の将来と希望を広げたいとの思いから、最初のターゲットにカイロ大学を選んだという。

カイロ大学に設置された点字ブロック、どこか見覚えがないだろうか。そう、この点字ブロック、日本がモデルになっている。これは、昨年7月に愛知県でJICAが行った「共生社会実現のためのアクセシビリティの改善-バリアフリー化の推進-」研修に参加するため、初めて日本に渡ったHelmが、街のあちこちで見かけた視覚障害者向けのさまざまな工夫に感銘を受け、日本の事例をエジプトに持ち帰り、日本の点字ブロックを参考に、エジプト国内で一から設計、製造し、実現したのである。

実際にバリアフリー歩道を利用した障害者の方に声をかけたところ、「点字ブロックのおかげで友人や家族のサポートなしで自力で歩けるようになって嬉しい」、「これまでは車道を通るしかなく頻繁に危険な目にあっていたが、スロープが設置されたおかげで歩道を安全に通行できるようになった」と喜んでいたのが印象的だった。

日本の知見や技術の共有が、エジプト人による、エジプトの社会課題の解決の後押しに繋がったことは、嬉しく思う。今後も、誰も取り残されることのない、インクルーシブな社会の実現に向け、政府、市民社会による活動が更に広がることに期待したい。

【写真】

カイロ大キャンパス前に設置されたバリアフリー歩道

【写真】

点字ブロックの意図の周知を目的としたバナー

【写真】

カイロ大周辺に住むアミーラさん


【写真】

国家人権評議会職員のアフマドさん(右)

【写真】

Helmのボランティアたち

【写真】

JICAの貢献がギザ県知事とHelmに表彰されました


Twitter Facebook はてなブックマーク メール