家族と食事-モロッコの食卓、日本の食卓-

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美しい山々に囲まれた街、テトゥアン。モロッコ北部のこの眺めの素敵な町で約7ヵ月前から料理隊員として活動しています。私の活動内容は、職業訓練校の製菓クラスでの実習指導です。学業中退者や経済的に困難をかかえる青年が学生です。言語や考え方の違いから、ときに指導法やかかわり方に悩むこともありますが、モロッコの人々は陽気で明るく、みんなの笑顔にいつも助けられています。

さて、モロッコ料理といえばクスクスやタジン、そのほかにもいろいろな種類の伝統料理があります。それらの食事はみんなで食べるのが当たり前です。各家庭には、必ずと言っていいほど丸テーブルがあり、そして、大皿の料理をテーブルの中心に置き、豪快に手を使って食べます。モロッコ人はおしゃべりも大好きなので、みんなの顔を見ながらのにぎやかな食卓です。

私は5人兄弟と両親の7人家族で育ったので、小さな時からいつも兄弟で奪い合いながら食卓を囲んできました。モロッコの家庭で食事に招待してもらうと、そういった思い出がよみがえります。今は兄弟も大きくなり、それぞれ自立したりして、家族そろって食事をする機会は年に数回ほどしかありません。日本にいる時は特に気にも留めませんでしたが、モロッコでの生活は、「家族と食事」について考えさせられることが多いです。

現代の日本では「食育」が叫ばれていますが、みなさんは「こしょく」という言葉をご存じでしょうか?

孤食・個食など現代の日本人の食事を問題視した言葉です。「1人孤独に食べること」「同じ食卓でもそれぞれ違うものを食べること」。こういったことはモロッコの家庭においては無縁のように感じます。みんなで食卓を囲み、家族で会話を楽しむ。日本の家庭が失いかけているもの大切さに気付かされます。

食事内容にしてもそうです。モロッコの家庭では、ほぼ100パーセント、モロッコ料理を食べます。私は、学生や同僚、知人宅でごちそうになる機会が多いのですが、モロッコ料理以外が出てきたことは今のところ一度もありません。

現代の日本では、今日は和食、明日は洋食、明後日は中華などと、バリエーションに富んだ食事を好みますが、モロッコではそのような選択肢はありません。

2013年に和食がユネスコ無形文化財に登録された背景には、和食の存続という意図も含まれていると聞きます。日本の食事は豊かなようで、実は危機的状況にあるようにも思います。

モロッコでの生活は、食と人の関わりを通して「食べることの意味」を再確認しているように感じます。日本人として、「食」を「職」とする者として、今後もたくさんのモロッコの人々と食を共にし、味わい深い活動にしていきたいです。

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テトゥアンは景色がとても素敵な町です

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毎週金曜日のお昼はクスクスを食べます。各家庭に味や盛り付けのこだわりが

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伝統のタジン鍋でじっくり火を通したタジンは格別です


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たっぷり時間をかけて調理し、もてなしてくれます

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たくさんの種類の伝統菓子があり、お祝いの席には欠かせません

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いろんな家庭にお邪魔させてもらい、キッチンを巡るのが楽しみです


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