こんな私でも

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昨年10月上旬にモロッコに到着し、首都ラバトでの研修後、海沿いの小さな都市エル・ジャディーダ市に配属された。

私の任務は、図工・音楽・体育という3教科を通しての情操教育をしつつ、この国の目指す教育改革に利すること。具体的には、
(1)教員養成校で授業案を提示して、一人一人の児童の学習ニーズに応える術を伝える
(2)エル・ジャディーダ市の公立小学校を巡回しつつ、現場のニーズを洗い出す
(3)それらを、教員養成校の授業改革に反映させる
——などだ。

だが、主に活動を行うはずの教員養成校は、配属当時、全国的ストで授業のめどが全く立たなかった。そこで、二つ目の活動である小学校巡りを開始した。

このおかげで、教育現場のニーズがはっきり見えてきた。

この国が国策として推し進めようとしている体育は、時間割には毎週60分が2回あるべきで、教員が使う時間割にもそう書かれているのに、ほとんど実施されていない。図工も週30分2回行うはずだが、実施されない。教員たちでさえ、それらを体験していないし教材も無いので、教授方法が分からないのだ。

当然児童は、教室で静かに座って学習する算数やアラビア語・フランス語などしか学んでおらず、体を動かし友達と協力して学ぶものは皆無。これでは、教員も児童も笑顔で授業し学習することは難しいし、教室で活躍する子も限られてくる。

そこで、次の三つの方法を取った。

1.まず、教員たちと授業を共に行いつつ、全児童が活躍できる授業方法を伝える
2.その際、教材は買わずに、身近にあるものをリサイクルして教材を作る
3.エル・ジャディーダ市の全公立小学校教員を対象とした情操教育のセミナーを開く

これまでの半年間に、体育では、整列や男女混合のチーム作り、縄などの用具操作や投捕球、二人や大人数で行う運動、さまざまな歩き方や走り方、いろいろな跳ぶ運動などを行った。

図工でも、ハサミの扱い方、いろいろな切り方や飾りの作り方、紙の折り方や折ってできる動物、色の塗り方や大勢で一枚の絵を描く集合絵画、使うものを作る活動などを子どもに体験させつつ技法を伝えていった。

セミナーについては、教育委員長や配属先校長の協力を得て3回実施。市内21の公立小学校の校長や教員、計170人ほどの熱心な参加があり、教育改革に資する情操教育の大切さを伝えることができ、好評を得た。

そうこうしているうちに、配属先である教員養成校のストも終わり、教員を目指す研修生への授業も再開。今は、来年から小学校で教員として働くことになる研修生を相手に、実際に役立つ授業をして喜ばれている。

年度末に小学校の児童と教員を対象に行ったアンケートでは、
子どもが皆生き生きし、児童との関係が改善したので、子どもの見方が変わった。
児童は、算数などでも集中力を見せるようになってきた。
病気の時も、情操教育があると登校したがる。
今は自分も、自信を持ってセミナーなどでも指導できる。
——などと、うれしい変化を伝える回答がたくさんあった。

まさに、「こんな私でも」周りの人々の協力を得て、多くの人の役に立てることに、感謝に堪えない。

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友達を信頼して背中に乗ると気持ちいい。先生の補助もあって安心

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1年生の初めての馬跳び。友達があってこそできる、こんな動き

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紙を折って切るだけで、こんなにきれいな飾りが。次は色も塗ろう


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たくさんの仲間が一緒だから、こんなにきれいな絵ができた

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ヤッター!自分だけのボールが作れた。早く使いたいなぁ

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セミナー参加者に体育のボール指導。女の私でも、やればできるんだね


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