キリバスの食の二面性

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キリバスは、太平洋の中央に位置する海抜の低い小さな環礁国である。地球温暖化に伴う海面上昇により沈みゆく国として世界から認識されており、結果的に各国からの手厚い援助を得ている。これらの資金を基に経済成長、近代化へと大きく舵(かじ)を切り始めているが、今なお伝統的な生活スタイルを守り続けようとする一面も垣間見られる。

今回は、栄養士という職種柄、食の「伝統」と「近代化」の二面性について取り上げ、お伝えしたいと思う。

まず、「伝統的」な食事は、自生する植物(ココナツやブレッドフルーツと呼ばれる木の実、タロイモなど)や近海で採れる魚介類の恵みを生かしたものである。イモが、主食と野菜の両方を兼ねた役割を果たしていたと考えられ、栄養的なバランスはとれていたようである。

これらの伝統的な料理の一部は、今でも「ボータキ」と呼ばれる現地のセレモニーで見られる。各家庭がプラスチックの洗い桶(キリバス語でベイスン )に料理を入れて持ち寄り、全員で食す。生魚のココナツクリーム和えやブレッドフルーツの甘煮など現地の食材を生かした料理がずらりと並び、そのどれもが美味である。

しかし、時代の流れと共にここにも食の「近代化」が見られるようになった。

食の「近代化」とは、海外からの輸入に頼る食生活を意味する。商業の発達に伴い、大型スーパーや各種小売店が町に広がるようになり、手軽に缶詰などの輸入品が手に入るようになった。

主食は、イモからご飯やパン、インスタント麺へ、飲み物は、ココナツ果汁から砂糖水へと変わっていった。カップ1杯の水に対して、スプーン山盛り3杯以上の砂糖を入れるのがキリバス流である。

食事は、「ご飯と魚(その多くは塩蔵品)」という組み合わせが多い。直径20センチメートルの平皿に山盛りのご飯が盛られ、そこに、塩やしょうゆなどの調味料を直接かけて食べることも多い。

栄養学的に、炭水化物と塩分の摂り過ぎが危惧(きぐ)される。

これらの食事スタイルは、残念ながら糖尿病をはじめとする近代の病気につながっていった。事実、キリバスでは人口の約4分の1以上が糖尿病との診断を受けている。

食の「近代化」は、もはや止めることはできない。栄養士として、伝統を守りつつ、その土地、時代に合った新たな食の形を見いだし、一つ一つ小さな改善を進めていきたいと考えている。現在、キリバスのあちこちに地元野菜(特にかぼちゃ)の苗を一本一本植えているところである。

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地元食材。ココナツや魚介類が豊富

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地域に点在する小売店。缶詰など輸入食品がずらりと並ぶ

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主食として輸入米がよく食べられている


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インスタント麺を食べながら通学する子どもたち

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ご飯に調味料を直接かけるのがキリバス流

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砂糖水を買い求める子どもたち


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