相手国の未来を考えて−マーシャルの算数教育現場から−

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太平洋に浮かぶ小さな環礁国マーシャルで、算数教育の現場に携わって10ヵ月。この国が抱える数々の問題を目の当たりにしてきました。最も大きな問題の一つが支援依存国としての姿です。マーシャルはその歴史から、各国の統治下にあった時代も独立後も他国からの支援を受けて現在に至ります。それは教育分野に限らず、医療、インフラ整備、環境問題など多岐にわたっています。

赴任して、最も驚いたことは、学校の教室の中で、教員が授業を行わないということでした。私が教室に入ると教員は授業を中断し、私の指示を待つことがありました。授業を続けないのかと聞くと、「日本人が授業をしてくれるんじゃないの?」「算数の得意な日本人がしたほうがいい」と返されました。この状況に遭遇して間もないころは、なんて人任せなのだろうと感情的になりましたが、観察を続けると、支援する側にも問題があったのではと考えるようになりました。これまでは日本人が授業をすることが多かったようで、それが当たり前になっており、現地の教員自身が授業を進めていくシステムができていなかったのです。

このことから国際協力で最も大切なことは、相手の将来のために何が必要なのかを考えることだと気づきました。教育分野に限った話ではありません。物やお金、技術を一方的に与えることは、はっきりと目に見え、「成果」として誤解してしまうけれど、必要なものは本当にそれだけなのか——。私が遭遇したケースでは、現地の教員自身が活用、運用していく持続可能なシステムが必要であったと考えられます。

食糧難で苦しんでいる地域には、そこで必要とされる支援があります。他の地域では、その場に必要な支援が、また別にあります。場所が変われば必要なものも異なり、たとえ同じ場所でも時がたてば、それは変化します。現地のニーズを把握し、その先の将来の姿を想像しながら、本当に必要な支援について、考え続けることが求められているということを学びました。

マーシャルの社会をつくっていくのは、マーシャル人です。自国の将来を真剣に考え、それに向かって主体的に動いていく。そのための仕組みの整備や、サポートをこの国の人たちと共に行うことが、私がすべき国際協力なのではないかと考えています。相手のことをよく見ること、相手のことを考えることを怠らずに、残された時間をマーシャルの人たちと共に活動していきたいです。

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小学校舎。行政の手が行き届かず壊れたまま使っていることも

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真剣に学習に取り組む子どもたち

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現地教員によるクラスマネジメント(授業)


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現地教員によるボードマネジメント(黒板の使用)

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青年海外協力隊員が現地用に編集した教科書を使う子ども

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現地のレベルに合わせた、必要最低限の内容で構成した教具


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