ソロモンの「ハンドパワー」−ものづくりの現場から−

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「Gud mone(グドモーニン)」(ピジン語)
「Mari sasanoe(マリササノエ)」(ラングス1)
「Saruku biraka(サルクビラカ)」(ラングス2)

南太平洋の小さな島国ソロモンの朝は、こんなあいさつから始まる。首都ホニアラから海を隔てて550キロメートル北に離れたチョイセル州が私の赴任地だ。

ソロモンには、共通語のピジン語があり、さらにラングス(部族ごとの言語)が100近くあるといわれている。チョイセル州だけでも、10以上のラングスが存在し、話す相手によってそれぞれを使いわけている。だから朝のあいさつだけでも何種類もある。目下、勉強中だが、今はまだ、あいさつを使い分けるだけで精一杯...。

さて、私の配属先はチョイセル州全土を管轄とする州政府の建築課だ。ここで私は建築技術者として、現地の同僚たちと共に、新規案件の設計から、着工中の現場管理、完成後の建物の使用状況調査などを行っている。

建築を取り巻く状況は日本と大きく違う。建築を専門的に学んだ者はおらず、積み重ねた経験をもとに業務を行っている。建築現場にはショベルカーなどの重機や電動工具などはなく、ほとんどの作業を人の手で行っている。職人の服装も半袖に半ズボン、足元はサンダルかはだしで、安全管理の概念も確立されていない。

そんな環境の中、ソロモンの建築事情を踏まえ、同僚との仕事を通じて、新しいデザインの提案や建築手法の伝達などを行うのが、私の活動だ。技術的な支援だけでなく、仕事に対する姿勢や安全管理への意識も、二年間の任期中に定着させたいと考えている。

こちらに来て半年が過ぎ、初めて担当した現場の建築物が完成を迎える。ここまでの道のりは平たんではなかった。赴任直後、訳も分からず建築現場の管理を任された。島が点在する地理的条件もあり、建材は予定通り届かず、工事は遅れ気味に...。現場ではさまざまなトラブルが次々と発生し、現場と各担当者、上司の間を駆け回った。トラブルがない日はないと言っても過言ではない。それでも同僚や職人の「No wari! No wari!(ノーワリ、ノーワリ。ピジン語で大丈夫、大丈夫)」という笑顔に励まされた。

大変な事も多々あったが、建築工事が途中で止ってしまい、完成しないことも多くあるこの国で、約半年でなんとか完成したことは、一つの大きな成果だと思う。

州都の中央市場の着工が控えている。私が初めてデザインを担当した案件で、住民たちの期待も大きい。工事が始まれば、きっとトラブル続きだろう。でも最近、トラブルも「ものづくり」の一環として楽しめるようになってきた。トラブルの中でソロモンの人たちと意見を交わし、時に衝突しながら、理解する。お互いの価値観の違いを認め合いながら、一つのものを作り上げる。これこそ「ものづくり」の醍醐味(だいごみ)なのだと。

今日も太陽が照りつける現場で作業が進んでいる。「日本は、『マシンパワー』を使っているだろ。ソロモンにあるのは、『ハンドパワー』だ」。そう言って笑う人たちに支えられ、今日も私の活動は続いている。

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建築現場。半袖、短パン、はだしで作業している

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現場で作業方法を指導する筆者(左)

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完成間近の現場で、職人と共に


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未完成のまま5年以上放置された体育館のプロジェクト

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州都の中央市場の現状。手狭なため、屋外でも販売している

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ホームステイ先の家族と共に


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