「大丈夫だよパワー」はソロモンの人々の生きる力

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「Mone sista!(モネ・シスタ。ピジン語で「おはよう、お姉さん!」)」

毎朝道を歩いていると、見知らぬ人たちからも必ず声をかけられます。私のいるソロモンの首都ホニアラは、急激な発展に伴い、海とジャングルに囲まれながらも、人や車やモノが溢れているようなやや混沌としている様子も見られますが、それでも「ザ・南の島国」。人々はシャイだけどフレンドリー、時間も人の流れもゆったりしています。

そんな気質は、私の活動にも大きくかかわっています。配属先は、国立中央病院リハビリテーション科。ソロモン最大の病院で、全国から患者が集まります。そんな中、同僚と共に、脳卒中、脳性麻痺、神経疾患、呼吸器疾患などにより障害が発生してしまった患者たちへの理学療法(注)を実施しています。

ところが、病室までリハビリに誘いに行くと、「今は動けないから、寝てないといけないんだ」「病気が治ったらエクササイズするよ」と、なかなか動いてくれません。私は、いやいや、動けないから動けるようになるためにリハビリするのですよ、と思うのですが、付き添いの家族も「今は休んで、明日から」と、回復への焦りなどは見られません。

私は、障害受容なんてそんなに簡単にできるものではない、と思っています。しかし、彼らは、急に動かなくなってしまった身体をあっさり受け入れているように見えます。もちろん、肩が痛い、足が重いなどの症状を訴える声はたくさん聞こえますが、「じたばたしても始まらない」とのんびり構えています。家族も、福祉用具などもほとんどないこの環境の中で、介助や介護することをいといません。私にとっては過酷に見える状況の中で「Hemi Oraet(ヘミ・オーライ。「大丈夫だよ」の意味)!」と言い切ります。

以前、下半身不随になった体格のいい男性がリハビリに来たとき、さらに体格のいい息子2人が、軽々と彼を持ち上げて車いすに乗せてから、心配そうに見ていた私に向かって、「大丈夫だよ、何か問題があるかい」。私は、いや、ない、ような気がする、と答えるのが精一杯で、彼らの圧倒的な「大丈夫だよパワー」にノックアウトされた気分でした。

もちろん、もう一度自分で歩けるようになりたい、スポーツに復帰したいなど、身体機能の回復への意欲が高い人も大勢います。だけど、意図せず障害を負ってしまった場合でも、この国では「介助すること」「されること」を、当たり前のようにお互いに受け入れ生活を続けられる姿を見て、これもリハビリテーションの目指す一つのゴールなのだ、と思うようになりました。

とは言え、私は理学療法士。今日も患者にリハビリにつながるエクササイズを促すべく、奮闘中です。

(注)病気やけがなどによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気などの物理的手段を用いて行われる治療法

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使用する車いすのサイズを計測中

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車いすに乗り、2ヵ月ぶりに病室の外へ

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ぐずっていた子どもに、遊びながらセラピー(右が筆者)


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同僚、実習生と共に(前列左が筆者)

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家族と歩行訓練をする患者

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理学療法室での訓練


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