ヒマラヤ山脈麓の活断層に迫るべく日印研究者・大学院生が一丸となって現地調査を実施

2011年3月10日

2月22日から3月10日、「自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究」プロジェクト(DISANET)(注1)の一環で、奥村晃史広島大学教授、竹本仁美さん(同大学博士課程)、立道智大さん(同大学修士課程)、リカルド フェリペ クストディオバティスタさん(ポルトガルから同大学修士課程に留学中)の計4名の研究チームが訪印しました。同チームはインド側カウンターパート機関であるIITカンプールに滞在した後、ディキシット工学部教授、マリック同学部准教授、他同学部博士課程大学院生3名とともにヒマラヤ山脈の麓で移動式GPSやGPRを活用した地盤変動や活断層の調査を実施し、新たな活断層とみられる地点を発見しました。

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現地調査にて。(写真左 右から)竹本さんと立道さん、(写真中央 右から)奥村教授と現地調査を実施したIITKカンプール博士課程在籍中の大学院生3名、(写真右 右前から)リカルドさんと現地の子供たち(写真中央と右:撮影竹本仁美さん)

(注1)DISANETは、IIT-Hと慶応大学を中心研究機関として実施されている「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS:Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)」の愛称です。SATREPSは、科学技術と外交・国際協力を相互に発展させる「科学技術外交」の一環として、外務省、文部科学省とJICA、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が連携して、ODAの枠組みを活用した国際共同研究事業です。

IITカンプールでの技術移転

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講義を実施する奥村教授

DISANETは継続的に地震と気象データを収集するためのセンサーをそれぞれヒマラヤ山脈周辺及びアンドラ・プラデシュ州内に設置し、データ解析体制と国際的情報ネットワークインフラを構築、災害の早期把握、救援活動、復旧、復興を支援する基盤を整備することを目指し昨年7月に開始した5年間の日印共同研究プロジェクトです。ヒマラヤ山脈の麓の地盤変動や活断層をGPS等を活用して詳細に調査することはインドの地震の傾向の分析に資する本プロジェクトの大切な活動のひとつであり、IITカンプールのディキシット工学部教授、マリック同学部准教授はインド側研究者の中で同調査を進める中心的役割を担っています。今般日本研究チームはIITカンプールに滞在し、広く関係者に対し活断層調査の意義や調査に必要な機材の使用方法に関して講義と技術移転を行いました。

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日本研究チームが作成した簡易マニュアルを手に 奥村教授(左端手前)による機材活用の説明に耳を傾けるIITカンプールの学生達と補佐をする竹本さん、リカルドさん、立道さん(右から)

特に機材の使用に関する実地研修に際しては、奥村教授による説明書をもとに同行した竹本さん、立道さん、リカルドさんが簡易マニュアルを作成、奥村教授のデモンストレーションに続いてIITカンプールの学生達がデータ取得を試みるといった実践的な講義が実施され、学生達は試行錯誤を重ねながら機材の活用方法を身につけることとなりました。

ヒマラヤ山脈の麓の日印共同地盤調査

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昨年の現地調査結果をもとに再訪した調査地域から臨むヒマラヤ山脈。

インド北部にあるヒマラヤ山脈はインドプレートとユーラシアプレートの間の沈み込みで起きた大陸同士の衝突による造山運動から生じており、そうした運動は今も続いていることから、山脈の麓が地震の多発地帯となっています。

今般日印研究チームは昨年行った現地踏査をもとにインド北部のヒマーチャルプラデシュ州、パンジャブ州のいくつかの箇所で活断層調査を試行しました。

日本と異なり地形図等の信頼できる基礎情報がほとんどない場所での調査であることから、日印研究チームは地形を正確に把握するための移動型GPSによる調査と地中の地層の亀裂の有無を観測するためのGPRによる調査という二つの手法を地形観察と組み合わせて試行、それぞれを通じて得られた情報を総合的に分析すべく協議を重ねました。厳しい自然環境の中での調査の制約もいくつか見られたにも関わらず、今般の調査の結果、より詳細な調査が必要な活断層とみられる地点が確認されることとなりました。

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共同調査の様子(写真左 右から) マリック准教授、ディキシット教授、立道さん、竹本さん、リカルドさん、奥村教授、IITKカンプール博士課程在籍中の大学院生3名。(写真右)想定外の悪天候もものともせずマリック准教授の地形観察分析に耳を傾ける日印共同研究チーム

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地元の少年に見守られつつGPRによる調査を行う日印共同研究チーム(左端)ディキシット教授、(右奥右から)リカルドさん、竹本さん、立道さん、奥村教授、(右手前 右から)IITKカンプール博士課程在籍中の大学院生、マリック准教授、IITKカンプール博士課程在籍中の大学院生2名

竹本さん、立道さん、リカルドさんはいずれも初のインド訪問でしたが、こうした調査をインド研究者チームと協働して実施する過程で異文化にふれ、国境を越え学生同士の親睦も深めるといった稀有な機会を得ることとなりました。

日印研究チームは今回の結果をもとにより広範に、より深く地盤変動や活断層の共同研究をヒマラヤ山脈の麓で具体的に展開していくことになっています。