「自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究」プロジェクトの地震災害の軽減研究チームがインド各地で 日印共同観測テストを実施

2011年12月1日

11月15日から26日、「自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究」プロジェクト(DISANET)(注1)の地震災害の軽減研究グループの日本側関係者計8名が相次いで訪印し、インド側カウンターパートであるインド国立地球物理学研究所(NGRI:NationalGeophysical Research Institute)、インド工科大学カンプール校(IITカンプール)、国際情報工科大学ハイデラバード校(IIIT-H:InternationalInstitute of Information Technology, Hyderabad)の各研究者とインドヒマラヤ山脈周辺及びアンドラ・プラデシュ州ハイデラバード内で強振動計・GPS・建物センサーを活用した共同観測テストを行いました。

(注1)DISANETは、IIT-Hと慶応大学を中心研究機関として実施されている「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS:Scienceand Technology Research Partnership for Sustainable Development)」の愛称です。SATREPSは、科学技術と外交・国際協力を相互に発展させる「科学技術外交」の一環として、外務省、文部科学省とJICA、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が連携して、ODAの枠組みを活用した国際共同研究事業です。

DISANETと地震災害の軽減研究グループ

DISANETは継続的に地震と気象データを収集するためのセンサーをそれぞれヒマラヤ山脈周辺及びアンドラ・プラデシュ州内に設置し、データ解析体制と国際的情報ネットワークインフラを構築、災害の早期把握、救援活動、復旧、復興を支援する基盤を整備することを目指し2010年7月に開始した5年間の日印共同研究プロジェクトです。地震災害の軽減研究は同プロジェクトの4つの大きな研究テーマのうちのひとつであり、同テーマに取り組む日印研究者達は纐纈一起東京大学地震研究所災害科学系研究部門教授とNGRIチャダ教授を日印研究リーダーとしてインドの地震ハザードおよび地震リスクの把握を進めるべく現在、強震動・GPS・建物センサーの観測ネットワークを構築しようとしています。

ハイデラバードでの強振動計と建物センサーの試行設置

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1基目の強震動計と纐纈教授(左)、東京測深の技術者の方々(右)

今般、纐纈教授と古村孝志東京大学情報学環/地震研究所教授はハイデラバード東部にあるNGRIでの強振動計の試行設置と観測テストに立ち会いました。本プロジェクトの研究目的に則り製造された日本製の強振動計の稼働状況を製造業者である東京測深の技術者の方々と確認、課題をとりまとめ、又、今後NGRI研究者達によりヒマラヤ山脈周辺各地で本格設置が円滑に行われるよう技術移転を実施しました。

2基搬入された強振動計のうちの1基をまず日本人チームが設置、その仕組みを学んだNGRI研究者達がもう1基を次に設置、両機器の稼働状況を日印研究者が協働して確認し、改善点や設置時の留意事項、運用方法等を整理、本格展開への準備が無事終了しました。

今後ヒマラヤ地域に強震計の観測ネットワークを本格展開できれば複雑な3次元速度構造のモデル化と強震動の数値シミュレーションを行うことが可能となります。

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2基目に設置された強震動計とNGRI研究者達

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NGRI研究者からの質問に応える古村教授(左)

同じ頃、鷹野澄東京大学情報学環/地震研究所教授と伊藤貴盛東京大学同研究所特任研究員はハイデラバード西部にあるIIIT-Hでの建物振動計センサーの試行設置にIIIT-H研究者達とともに取り組んでいました。ひとつの建物の振動状況が包括的に捉えられるように二種のセンサーをIIIT-H内のひとつの建物の要所要所に仮置きし、全センサーの動きをサーバーコンピューターで一括してモニターできるようネットワークをつないでみて稼働を確認しました。

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IIIT-H研究者とセンサーを仮置きしてみる鷹野教授(左)とインド研究者

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仮置きしたセンサーの稼働状況をインド研究者に示している鷹野教授(左)

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仮置きしたそれぞれのセンサーのデータがひとつ又ひとつとサーバーに送られてくる

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サーバーに送られたデータを検討する鷹野教授とIIIT-H研究者達

この経験と知見をもとに、今後プロジェクトではインド北部チャンディガル市の様々な構造の建物に建物振動計センサーを設置、同市における建物の地震時特性の類型化、ダメージ推定とリスク評価のための基礎データの提供を目的として建物の振動の観測を行う予定です。

強震動計、建物センサーともに、プロジェクトでは観測ネットワークをインド国内のみならず日本ともリンクさせ日印リアルタイムでのデータ検証、分析が可能になる研究環境を整備しようとしています。今般、鷹野教授と伊藤研究員を中心に、ハイデラバードの東部と西部で試行設置されたそれぞれのセンサーのデータを日本からも確認できるようにするためのネットワーク構築の実証実験も併せて執り行われました。

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強震動計のデータネットワーク構築に取り組む伊藤研究員(中央PC正面)と日印研究チーム(於NGRI)

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今般のテスト結果に基づく今後の研究計画に関して議論する日印研究チーム(於NGRI)

ヒマラヤ山脈周辺でのGPS共同観測調査

同じころ、ハイデラバードから約1,400Km北上したヒマラヤ山脈の麓ラムナガールでは奥村晃史広島大学教授と竹本仁美さん(同大学博士課程)がインド側カウンターパート機関であるIITカンプール工学部の研究者及び同学部博士課程大学院生4名とともに移動式GPSを活用し地盤変動や活断層の共同調査を実施していました。

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ラムナガールの地勢を観察する竹本さんとIITカンプール学生(撮影竹本仁美さん)

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発見した断層の詳細を精査する日印研究者チーム(撮影竹本仁美さん)

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GPS観測を指導する奥村教授とIITカンプール研究チーム(撮影竹本仁美さん)

プロジェクトでは、北西〜中央ヒマラヤの地域においてGPS観測を実施してインド大陸の中国大陸への衝突に関する地殻変動を精密に計測すると共に活断層地形と関連する地形のマッピングを行い、GPSデータと共に高分解能の衛星写真と地質資料を用いて地震の繰り返し周期を推定するためにすべり速度を算出しようとしています。奥村教授によりGPS観測の技術移転を受けてきたインド研究チームは今般新しい測量機器の使い方を覚えて実践を通じた指導を受け、より主体的に調査をできる知見を更に蓄えることとなりました。又、今般の調査では地質資料のサンプルも取得、今後IITカンプールで詳細分析が行われることとなります。

東北地方太平洋沖地震の気づきと経験を他国の研究者達へ

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インド研究者達に講演中の古村教授(於NGRI)

今般の訪印の機会にインド研究者の依頼を受け、古村教授はNGRIで2011年3月東北地方太平洋沖地震による強震動と津波のシュミレーションに関しインドの地震研究者達に発表を行いました。同講演にはメキシコを拠点する地震研究者も参加、出席者達は古村教授による未曾有の経験から導き出された率直な気づきをはじめとする様々な地震研究に触れる有意義な機会を得ることとなりました。

こうした日印共同研究活動を通じ本プロジェクトでは成果のひとつとしてインドの地震ハザードおよび地震リスクの把握を進め、その結果としてインドにおける将来の地震災害の軽減に寄与することを目指しています。