建築デザインを行っている対象6施設の概要

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IIT-Hは約2平方キロメートルの敷地に学生、教員、事務スタッフ等約3万人のキャパシティを有する施設整備の将来計画(右図)を策定しています。このうち、インド側による一部の施設の建設工事が2012年後半から開始されています。本プロジェクトで日印の人材交流のシンボルとなりうる施設として建築デザインを実施しているのは、以下の6施設で(学内での配置は右図参照)、2013年後半から建設工事を開始、2015年前半から随時完成する予定です。

国際交流会館(International Guest House)

概要

新キャンパスはハイデラバード市の中心部から車で1時間強の距離に位置しており、新キャンパス周辺には宿泊施設がないことから、学外から訪れる教官や研究者が利用できる宿泊施設が必要とされています。国際交流会館は会議の参加などの短期滞在から訪問研究などの中長期滞在まで、多様な利用を想定した設計を行っています。

建築デザインの特色

地上6階建て鉄筋コンクリート造で、二つの中庭を囲んで、正倉院などの校倉造の様に住居棟を交互に積み重ねた造形になり、その一棟は北側に配された遊水池に躍り出る様に配置され、ダイナミックな外観と高い居住性を創り出しています。現地では強い日射を遮りつつ通風が得られる穴空きコンクリートブロックが広く普及しています。この建物でも、このパッシブな環境技術に学び、新たなブロックシステムを開発して随所に用いた計画としています。

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学生会館(Sports & Cultural Complex)

概要

学生や教職員の健康的なキャンパスライフには、サークル活動は欠かせません。学生会館には運動施設、文化部の活動スペースが設けられ、また最大4000人を収容できる野外劇場は卒業式や講演の会場として活用される予定です。

建築デザインの特色

大きな屋根を持った4棟から構成され、中央に中庭が二階レベルに設けられ施設の中心になっています。この中庭には屋外劇場の西側の大階段から上がることができ、反対側では屋外運動施設に繋がります。建物の最大の特徴は鋸の歯型のギザギザの断面をもった屋根にあります。アーチ状の二枚の板で三角形の断面を構成しています。この形はインド伝統建築の屋根の基本要素の一つであるバングラ屋根の形態からヒントを得たものです。それを連続させて大きな梁間を無柱で支持する折板構造と呼ばれる構造システムとなっています。また、この屋根の形状決定にあたっては、内外の空気の流れ、温度分布をコンピュータ解析し、エネルギー消費を抑制しつつ快適な環境が得られるように計画されています。

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ビジネス・インキュベーションセンター(Technology & Incubation Park)

概要

近年、大学の研究体系は、グローバル化や社会構造の変化などにより,その扱う対象や分析の方法、研究体制に日々変化を迫られています。実社会の動向把握や学術成果のリアルタイムでの社会への適応を果たすために、民間企業との産学連携プロジェクトや研究成果を活用した起業を行うための拠点が世界の大学で作られつつあります。ビジネス・インキュベーションセンターは、民間企業等の外部の研究活動を支援するためのResearch Parkと、研究成果による起業を支援するIncubatorの2種類の研究拠点をあわせもつ、世界でも特徴的な研究拠点となるでしょう。

建築デザインの特色

6層からなる建物は、一つ一つの小さなビルが立ち並んでいるようなデザインとなっており、新しい研究活動を展開するという思想を具現化しています。建物の平面形状は、大小さまざまな研究活動にも柔軟に対応するフレキシビリティを有しています。また、研究活動を円滑に進め、かつ高度化するための共用部(セミナー室、ラウンジ等)を有し、各研究ユニット感の交流を深め、新しい学際的な研究を生み出すきっかけを創出することを計画しています。

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ビジネス・インキュベーションセンターのエントランス内観パース

国際会議場(Convention Center)

概要

大学が研究教育を活性化させようとするとき、学術交流はその中心にあります.国際会議場は内外の専門家を呼び集め、研究成果を公表し、意見を交換するための大小様々な場を提供します。

建築デザインの特色

4層の鉄筋コンクリート造で、大ホール(500人収容)、小ホール(200人収容)の他、セミナー室11室、会議室5室の諸室と事務機構、カフェテラスなど会議支援機能を充実させています。この建築は、低緯度で日射が強く乾燥した気候にエコロジカルに対応すべく、伝統建築から学んだ空間構成原理が適用されています。具体的には、外部空間である中庭と各機能ユニット(ホール、セミナー室、カフェテラス、事務室など)は、一つ一つが矩形の壁に囲まれ四周に庇を廻す基本単位のなかに収められています。矩形の壁の内側は部屋に合った個性的な内装がなされ、壁には大小の開口が開けられています。ユニットとユニットの間は諸室を繋ぐ通路になり、大きく張り出た庇が強い日射を遮り濃い影を通路に落とし、細い隙間から必要最小限の採光がなされます。

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中央図書館(Knowledge Center)と総合研究センター(Research Center Complex)

中央図書館(Knowledge Center)と総合研究センター(Research Center Complex)の建築デザインは2013年度に実施する予定です。IIT-H側の抱いている中央図書館のコンセプトは、蔵書のような古い蓄積された情報だけでなく、未来の情報にもアクセスできるような空間であることから、本プロジェクトの提案により先進的な情報通信ネットワークを実装することで、このコンセプトを実現したいと考えています。また、総合研究センターは研究領域を問わずIIT-Hを代表するような研究室が集う研究棟というコンセプトであるため、実験機器の搬入ルートを十分確保した施設設計とし、日印の大学の類似施設を視察し、運営に関するヒアリング調査を実施する予定です。

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中央図書館(左)と総合研究センター(右)の模型図

プロジェクトリーダーの藤野教授から一言

知の生産と継承を永続的に担う大学において、現場となるキャンパスや建物の設計は極めて大きな意味をもちます。世界的にも著名なインド工科大学に新しく加わったハイデラバード校のキャンパスデザイン、具体的には大学を代表する6つの建物の設計を行う機会をいただいたことは大変な名誉と喜びであり、責任の大きさを感じています。相手側との入念な打ち合わせを行いつつ、また、東京大学の持つ学術的強みを生かしながら、設計を進めています。キャンパスデザインという創設期から深く関与したことをきっかけにして、IIT-Hと東京大学をはじめとする日本の大学との学術交流が大きく、そして長く展開されることを期待しています。

藤野陽三

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