概要

背景と目的

急速な経済発展を続けるインドでは、研究開発を先導して技術革新を進展し、かつ産業界のニーズをとらえて必要な知識と技能をもった人材の訓練・育成を行う役割を担う理工学系高等教育機関の拡充が重要かつ喫緊な課題です。このような理工学系高等教育機関のなかでも、インド工科大学(IndianInstitute of Technology、IIT)は国内最高峰の位置づけにあります。IITでは数十倍に上る倍率を経て入学した学生が国内一流の教授陣の指導及び教育環境のもと学んでおり、優秀な人材の育成に大きく貢献してきました。

更に高まる人材育成のニーズに対応すべく、インド政府は第11次5ヵ年計画において理工系の人材育成を強化するために計画期間(2007年〜2012年)中に8校のIITを新設することを決定し、そのうちの1校について日本からの支援を要請しました。日印双方で検討を進めた結果、IITハイデラバード校(IIT-H)を協力対象とし、5分野(環境・エネルギー、デジタル・コミュニケーション、デザイン&マニュファクチャリング、ナノテク・ナノサイエンス、都市工学)を協力重点分野として互恵的、相互補完的な協力を展開していくことに合意しました。

本プログラムは、日本の産学関係者とIIT-Hによる共同研究の促進、研究者の交流、研修員の受入れやキャンパス施設の整備といった重層的な支援を通じ、IIT-Hの能力向上と環境整備を行い、ひいてはわが国の大学・産業界とIIT-Hとの間で産学の研究ネットワークを形成し、将来にわたる日印連携体制を構築することを目的としています。

プログラムの概要

IITハイデラバード校に対し、以下の概念図に示すようにソフトからハードまで多様な形態で支援を展開していきます。研究活動については日印双方で合意した5分野(上述)にかかわる共同研究の立ち上げ等を側面支援しているほか、具体的なプロジェクトとしてSATREPS(注1)により「自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究プロジェクト」(注2)が実施中です。また、人的資源開発の側面からは博士課程への研修員受入や学術人材交流を中心とした技術協力「インド工科大学ハイデラバード校 日印産学研究ネットワーク構築支援プロジェクト」(注3)が実施されます。さらに、IIT-Hが今後移転する新キャンパス内に日印協力のシンボルとなる施設整備を円借款で支援していく予定となっています。これら施設の建築デザインについても学術交流の一環として東京大学のチームによる技術協力「学際的研究交流を通じたインド工科大学ハイデラバード校キャンパスデザイン支援プロジェクト」を実施中です。

また、IIT-H協力の推進のため、外務省の調整のもと大学、民間企業、関係省庁等の関係者からなるIIT-H支援コンソーシアムが設置されています。JICAはODA実施機関としてコンソーシアムに参加しており、他の機関による支援と適宜調整を図りつつオール・ジャパンとしての支援を展開していくことになっています。

IIT-Hに対するJICAからの支援の概念図
【画像】IIT-Hに対するJICAからの支援の概念図

(注1)SATREPS(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)は地球規模課題対応国際科学技術協力事業の略称です。外務省、文部科学省とJICA、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が連携し、ODAの枠組みを活用した国際共同研究事業を実施しています。

(注2)通称「DISANET」プロジェクト(英文名称:The Project for Information Network for NaturalDisaster Mitigation and Recovery in India)

(注3)通称「FRIENDSHIP」プロジェクト(英文名称:“the Project for Future Researchers atIIT-H to Enhance Network Development with Scholarship of Japan”)

プログラムの特色

円借款による学内のキャンパス施設整備、同施設を日本側協力の象徴的な建造物とするための建築デザイン立案支援(技術協力)、留学生受け入れを含む産学ネットワークの構築支援(技術協力)や学際的な共同研究(SATREPS)といったJICAの有する多様なスキームを活用し、かつ同時並行的に実施しています。このようなハード、ソフト双方にかかわる複層的なアプローチを通じて相乗効果を生み出しつつ、日印協力の象徴となる一流の教育研究機関の設立を支援していきます。また、外務省の調整のもと設置されているIIT-H支援コンソーシアムが有する日本側の産官学のネットワークを活用した学術交流や人的交流を促進し、日印間の関係強化にも貢献していくことが期待されます。

IITハイデラバード校の概要

IIT-Hは第11次5ヵ年計画で設置することが決定された8つの新設IITのひとつで、アンドラプラデシュ州ハイデラバード郊外に2008年に開校しました。2011年現在で機械工学、コンピューター・サイエンス、電気工学、材料工学、都市工学等の学科が設置されており、約800名の学生が学んでいます(いずれも、今後拡大予定です)。現在は新キャンパス建設予定地近郊の仮キャンパスで講義や研究活動が実施されており、2013年以降近郊の新キャンパスへの移転を予定しています。

インド国内IIT位置図 (緑点:新設IIT)
【画像】インド国内IIT位置図 (緑点:新設IIT)

【写真】

現在使用している仮校舎

【写真】

新キャンパス建設予定地。約2平方キロメートルの広大な敷地が確保されています。

【写真】

新キャンパスの構想図。IIT-Hは長期的なマスタープランを描いており、将来的には3万人規模のキャンパスが整備されていく予定です。

関連サイト