2008年度 トピックス&イベント情報

2009年3月31日 インド向け2008年度後期円借款
迅速ですべての人々が恩恵を受ける成長をサポート

1.国際協力機構(理事長:緒方貞子)は、3月31日、2008年度後期円借款(注1)として、インド政府との間で4件を対象に総額1,370億2,800万円を限度とする貸付契約を調印しました。

(注1)日本政府が2007年6月に発表した円借款検討時期の柔軟化を受け、インドはその初のケースとして、昨年度より、従来年一回を原則としていた検討手続きを年二回とする柔軟化を実施しています。

2.1991年以降経済改革に取り組んできたインドは、同年以降、概ね年間5−8%の経済成長を達成し、特に2005年以降は9%台の高い経済成長率を記録し、成長著しいBRICsの一員として注目を浴びてきました。インド政府は持続的な経済成長を通じて貧困削減を進める政策をとってきていますが、未だ北東部などの貧困州は、一人当たり所得が全国平均の4割にも満たない等、開発から取り残されている状況にあります。このような状況を踏まえ、インド政府は第11次5ヶ年計画(2007年4月〜2012年3月)において、「Fasterand Inclusive Growth」を主要命題に掲げ、迅速な成長(Faster Growth)による経済のパイ全体の拡大とともに、すべての人々が恩恵を受ける成長(InclusiveGrowth)を実現するため、地域間や民族間の経済・生活水準の格差是正も意図した政策・事業を実施することとしています。具体的には、大都市を中心とした経済インフラの整備を引き続き進めつつ、地方都市インフラへの投資を促進させるために中央政府が整備資金を供与する仕組み(注2)を実施するなど、地方インフラ整備を重点開発課題の一つと位置付けています。

(注2)Jawaharlal Nehru National Urban Renewal Mission(JNNURM)と呼ばれる試み。インフラ整備資金を供与する際に地方政府の組織能力開発に資する改革の実施を条件にするもので、2007年度から7年間の予定で実施中。

3.今次調印する円借款は、こうした背景の下、首都デリーにおける都市交通整備事業1件と、貧困州の一つである北東部アッサム州を含む地方都市等の上水道整備事業3件の合計4事業を支援するものです。各事業の特徴は以下のとおりです。

(1)首都デリーの都市交通網の整備と環境改善

首都デリーにおいて、地下鉄を含む都市鉄道の建設を通じ、一極集中の交通混雑の緩和とともに、世界の主要都市の中でも特に深刻な大気汚染の緩和を支援します。円借款を通じてデリー高速輸送システム建設事業の第1フェーズに対しても支援を行っており、本事業は第2フェーズとして新たに路線を追加するものです。既に2006年11月に完成している第1フェーズに加え、本事業を含む第2フェーズが開通すれば、都営地下鉄の乗客規模を超える合計約300万人の乗客の利用が見込まれます。また、本事業ではエレベーターや点字ブロックの設置、車椅子スペースの確保など高齢者・障害者にも配慮したユニバーサルデザインを取り入れた設計としています。

(2)上水道整備による地方都市/地域の生活環境の改善

安全な飲料水の入手は健康で衛生的な生活にとって必要不可欠であるため、インド政府による現在の第11次5ヵ年計画でも「インド全土での飲料水への持続的なアクセスの確立」という目標が特記され、フッ素や化学物質による水質汚染の影響を受けている地域には特別な配慮をしていくとしています。実際、人口増加や経済発展に伴う上水需要の増加に施設整備が追いついておらず、需要に対応した安全かつ安定的な上水道サービスの提供による住民の生活環境改善が重要な課題となっています。「ホゲナカル上水道整備・フッ素症対策事業(フェーズ2)」及び「ケララ州上水道整備事業(III)」では、水不足が深刻かつ地下水の水質が悪化している都市/地域において表流水を使った上水道施設を新設し、安全かつ安定的な上水道サービスの提供を図り住民の生活環境の改善を図っていきます。また、「グワハティ上水道整備事業」及び「ケララ州上水道整備事業(III)」では、上水道設備の整備及び水道事業体の組織能力開発を通じて、急増する水需要へ対応することで住民の生活環境の改善を図っていきます。

4.今次円借款で支援する事業においては、事業効果の持続性を高めるため、技術協力スキームを効果的に組合わせるなど様々な形での協力を推進する予定です。主要なものは以下の通りです。

「デリー高速輸送システム建設事業フェーズ2(IV)」では、本事業に従事する多数の単身移動労働者のHIV/エイズの感染リスクを抑えるため、労働者を対象とした啓発教育等のHIV/エイズ予防活動も実施します。また、将来の高密度運転に伴うデリー交通公社(DelhiMetro Rail Corporation Limited: DMRC)の運行・危機管理能力の更なる向上のために、2006年度に東京地下鉄株式会社による現地調査及び日本での視察研修を実施し日本における地下鉄の運行・危機管理の経験をフィードバックしており、さらに2008年2月からは、技術協力スキームにて、地下鉄車両の維持管理及び安全運行能力の向上のための専門家を同社からDMRCに派遣しています。

「ホゲナカル上水道整備・フッ素症対策事業(フェーズ2)」では、2007年度に承諾したフェーズ1から引続き、フッ素についての知見を有する現地の専門家や財団などと連携し、医師や教員を対象にフッ素症についての研修を行い、フッ素症患者の発見を推進するともに、患者に対しては、水源の変更や病気をこれ以上進めないための食事指導等を実施します。また、本事業では指定部族、指定カースト、女性を含めた社会的弱者・貧困層へ十分に配慮することとしています。これには、貧困層においても支払いが可能な水道料金体系や各コミュニティでの料金徴集体制への提言も含まれます。

5.今後新JICAにおいては、技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力という三つの援助手法の一体的運用をこれまで以上に積極的に努めていきます。さらにインドでは、「経済インフラ整備を通じた持続的成長」、「雇用を伴った経済成長」、「貧困削減」、「環境・気候変動対策」等の重点課題への支援を展開していきます。さらに、金融危機への対応についてもインド政府を政策対話を進め、より迅速且つ効果的な事業実施等、大国インドへのインパクトのある協力を実施していく方針です。

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2008.7.29 「製造業経営幹部育成プログラム」の第1回年次総会が開催されました

式の挨拶の言葉を熱心にメモに取る参加者

式の挨拶の言葉を熱心にメモに取る参加者

卒業生1人1人の署名「私たちはインドの製造業の変革のために全力を尽くします」

卒業生1人1人の署名「私たちはインドの製造業の変革のために全力を尽くします」

インド側から司馬教授に感謝状とショールが贈られました。(インドではこのような機会にショールを送る伝統があります。)

インド側から司馬教授に感謝状とショールが贈られました。(インドではこのような機会にショールを送る伝統があります。)

インドの経済はサービス業や商業など第三次産業主導で成長してきましたが、これからの発展には雇用吸収力・国際競争力のある製造業の強化が必須とされています。インドの製造業では、質の高い経営幹部クラスの人材不足が深刻であることから、インド製造業の変革を担うリーダーを育成することを目的として、インド国家製造業競争力委員会(NMCC)の主導により「製造業経営幹部プログラム」(VisionaryLeaders For Manufacturing (VLFM) Program)が立ち上げられました。このプログラムには、NMCC、人材開発省、インド工業連盟(CII)、インド工科大学カンプール校およびマドラス校、インド経営大学院大学カルカタ校の産学官が参画しています。

2006年12月の安倍総理(当時)とインドのマンモハン・シン首相との会談時の共同声明で、日本がVLFMプログラムを支援することが合意されたことを受け、JICAはブレークスルーマネージメントの世界的権威である筑波大学名誉教授、元マサチューセッツ工科大学併任教授の司馬正次教授をチーフアドバイザーとし、それ以外に著名な講師陣の派遣、日本での研修の実施、出版物の作成や視聴覚機材の供与などに協力を行っています。

VLFMプログラムの第1回年次総会が、7月26日にムンバイで開催されました。年次総会には、NMCCのクリシュナムルティ会長、Godrej& Boyce社 ゴドレジ会長、CIIバネジー局長、インド経営大学院大学カルカタ校校長などの要人が出席し、マンモハン・シン首相からからは「日印共同声明によって開始されたこのプログラムは、製造業成長の推進力となると同時に、製造業強化に不可欠な政府の能力向上をも一層促進するものとなるであろう」というメッセージが寄せられました。

年次総会では、2007年9月に開始されたシニア経営管理者育成コースの第一年次の卒業式と、第二年次の入学式が同時開催されました。日本の革新的なものづくりの経営スキルを深く学んだ46名は、自己のビジネスの革新とともに、ビジョナリリーダーとして、インドの製造業の変革に大きく寄与することが期待されています。

文:インド事務所・朝熊

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2008.7.28 「フセインサガール湖水環境修復管理能力強化プロジェクト」国際ワークショップの開催

メイン会場でのプレゼンテーションの様子

メイン会場でのプレゼンテーションの様子

宣言文を検討するワークショップ関係者

宣言文を検討するワークショップ関係者

2008年7月22日から25日まで、アンドラプラデシュ州ハイデラバード市内のホテルにて、JICAとハイデラバード都市開発公社(Hyderabad UrbanDevelopment Authority: HUDA)の共催による国際ワークショップ『Sustainability of Lake Remediationand Interventions(持続的な湖沼環境の修復と汚染対策に向けて)』が開催されました。

国際ワークショップは、JICAの技術協力プロジェクト「フセインサガール湖水環境修復管理能力強化プロジェクト」の活動の一環として開催されたもので、プロジェクトの終了を間近に控えて協力の成果を発表すると同時に、開催に向けた準備を進めるなかでカウンターパートであるHUDAのワークショップ運営能力を強化することを目的としました。

初日の開会式では、200名ほどの参加者と地元メディアが見守るなか、JICAインド事務所から藤井知之所長が出席し開会の辞を述べるとともに、現地で技術協力に携わる荒井俊博専門家が協力概要と成果を発表しました。インド側からは、A.K.Goel官房長(Special Chief Secretary)とHUDAのK.S. Jawahar Reddy代表(Vice Chairperson)がスピーチを行い、日本からの協力に対する謝意を表するとともに、引き続き自ら湖沼保全に向けた努力を継続していく旨の決意を述べました。

ワークショップには、インド国内外の湖沼保全に関わる実務者や研究者が多数参加し、湖沼保全に向けた技術的・社会的な取り組みについて、活発な情報交換を行いました。海外からは、ジンバブエ、フィリピン、メキシコ、オーストリア、ネパール、エジプトといった国々から発表者が招待され、またインド国内からは、事前の応募者の中から選出された発表者が全国各地から集い、それぞれ自国の湖沼保全を事例として、具体的な取り組みや研究成果を披露しました。

JICAブースでパンフレットを手にするワークショップ参加者

JICAブースでパンフレットを手にするワークショップ参加者

会場では、中央・州の政府関係者、研究者、企業関係者、NGO、学生などの多彩な顔ぶれが、活発な質疑応答・意見交換を行いました。また、地元フセインサガール湖の視察や有識者によるパネルディスカッションといったプログラムも組まれ、参加型でのワークショップとなるような配慮がなされました。最終日には、今後の湖沼管理に向けた提言を取りまとめた宣言文が採択・発表されました。

JICAは会場脇にブースを設け、環境保全分野の協力に関するパネル展示やビデオ放映を行うとともに、インドでの事業概要を説明したパンフレットやニュースレターを配布し、広報活動を展開しました。なお、国際ワークショップの様子は、地元の新聞数紙にも取り上げられ、JICAのインドにおける事業紹介に大きく貢献しました。

文:インド事務所・小早川

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2008.7.17 協力隊員第1回日本語教師分科会が開催されました

国際交流基金柴原専門家(右)による口頭表現能力の測定を題材としたワークショップ

国際交流基金柴原専門家(右)による口頭表現能力の測定を題材としたワークショップ

ワークショップでプレゼンテーションを元に議論する日本語教師隊員たち

ワークショップでプレゼンテーションを元に議論する日本語教師隊員たち

デリー大学ラマラクシュミ助教授(右)によるセミナーの様子

デリー大学ラマラクシュミ助教授(右)によるセミナーの様子

インドにおける青年協力隊事業の主力である日本語教師隊員(現在6名)が、隊員活動を有意義なものとするため、互いの情報交換や自身の日本語教授能力の向上を目指した各種プログラム等の実施を目的として組織した日本語教師分科会の第1回協議会が7月14日〜16日の3日間、デリーにおいて開催されました。

この協議会は、国際交流基金ニューデリー日本文化センターの日本語教育アドバイザーである柴原専門家による口頭表現能力の測定を題材にしたワークショップ、同長谷川専門家によるインドにおける日本語教育のこれまでと今後を題材にしたセミナー、デリー大学東アジア研究科のラマラクシュミ助教授によるインドにおける教育制度と日本語教育事情のセミナー、各隊員の現場での活動紹介に基づく情報の共有と活動上の問題点の協議等盛りだくさんの内容で構成され、第1回にふさわしい大変充実した分科会となりました。

日頃は、広大なインド全土に散らばり、隊員活動に追われ、互いに顔を合わせてじっくりと話をしたり、日本語教育について新たな視点で勉強したりという機会も無い隊員たちですので、このような機会に日本語教育に関する技術論や協力隊員としての活動のあり方についての議論は尽きず、最終日の各隊員の活動紹介に基づく協議は時間を大幅に超過し朝9時半から夜8時までの長時間に及びました。

インドでの協力隊事業も28年ぶりの再開後丸2年が経過し、再開後の延べ隊員派遣数も10名を超えました。隊員間のネットワークがようやく出来上がり、隊員活動を効果的に進める基盤が隊員の自発的な意思によって築かれてきています。

文・インド事務所・矢野

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2008.7.4 大島副理事長がインドを訪問しました

ミシュラ農業次官と会談する大島副理事長

ミシュラ農業次官と会談する大島副理事長

円借款で建設されたデリー地下鉄に試乗した副理事長一行

円借款で建設されたデリー地下鉄に試乗した副理事長一行

7月1日から3日までの日程で、JICAの大島賢三副理事長がニューデリーを訪問しました。3日間の日程の中、大島副理事長は、インド外務省、財務省、農業省、農業研究評議会(ICAR)を訪問し、今年5月に東京で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で日本政府が提唱した「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)構想についてインド政府関係者に説明を行いました。

インドにおいて、JICAは30年以上前には稲作分野での技術協力も行っており、8つのモデル農場を国内各地に設置して稲作技術の強化普及を図っていました。その成果はコメの生産高の増加にも繋がり、インドにおける「緑の革命」にも貢献するものとして評価を受けています。今回の大島副理事長の説明に対して、インド側関係者からは、基本的には印・アフリカ間の二国間協力を重視しつつも、日印両国が連携できる余地は大きく、関係機関間で協議しつつ対応を考えていきたいとの発言を得ました。

また、財務省クッラー次官補との面談の際には、アフリカ支援における日印連携の他に、今年10月に予定されているJICAと国際協力銀行(JBIC)の統合も大きなアジェンダの1つとなりました。クッラー次官補からは、対印ODAでは技術協力、円借款のいずれも重要であり、今後も拡充してほしいとの強い期待感が表明されました。

大島副理事長は1977年から80年にかけて在ニューデリー日本大使館に勤務した経験があり、今回のインド訪問は30年前の記憶を辿りながらその後のニューデリーの発展振りを確認するものとなりました。その間のニューデリーの街の拡大や道路交通インフラの発達振りには驚いた様子でした。また、滞在期間中、副理事長は日本の円借款で整備されているデリー地下鉄にも試乗し、その円滑な運行振りやデリー市民の頻繁な利用状況も実際に確認しました。

(文:インド事務所・山田)

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2008.7.3 リプロダクティブ・ヘルス支援プロジェクト関係者がヨルダンのワークショップに参加しました

グループワークをファシリテートするアボリ医師(中央)

グループワークをファシリテートするアボリ医師(中央)

参加者集合写真。インドチームは前列

参加者集合写真。インドチームは前列

JICAがリプロダクティブ・ヘルス事業を実施しているヨルダン、パレスチナ、シリア、アフガニスタン、スーダン、インド、計6カ国から31名の関係者を集め、6月14日から20日まで約1週間、ヨルダンのアカバでワークショップが開催されました。目的は「経験の共有と成功例からの学び」。マディア・プラデーシュ州で実施中のリプロダクティブ・ヘルス支援プロジェクトからは、サーガル県医務官、ダモー県テンドゥケダ郡医務官、そしてプロジェクトメンバーで医療人材育成コンサルタント、アボリ医師の3名が参加しました。

各プロジェクトチームは、活動報告に続き、実際それぞれの直面する課題をケーススタディとして取り上げ、グループワークを通じて意見交換を行うなど、活発な交流を図りました。インドからの参加者にもっとも印象に残ったのは、それぞれのプロジェクトチームが独自の「売り」を持っていること。ヨルダンは「ジェンダー問題」、パレスチナは「母子保健手帳」、シリアは「コミュニティケア」、スーダンは「村レベルでの助産婦育成」といった風に、それぞれ地域の状況に応じ焦点を絞った取り組みをしています。

ではインドの売りは何か。プロジェクトチームが強調したのは「現場の保健スタッフの管理能力強化」です。インドチームが企画したグループワークでは、それぞれのグループが県レベルのコンサルタント、郡の保健師、村の助産師など各レベルでのファシリテーション成功例などを参考に、どうしたらこれを1人の成功ではなく、制度として定着させることができるか話し合い、プロジェクト終了後の自立発展性への可能性を探りました。

このワークショップに参加したことで、自分たちのプロジェクトを客観的に見る視点ができたというインドチーム。マディア・プラデーシュ州農村部での経験が、同じリプロダクティブ・ヘルスという分野で活躍する海外の仲間と共有されたことをきっかけとして、今後のプロジェクトにも新たな広がりが期待されます。

(文:インド事務所 佐々木)

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2008.6.30 下痢症対策プロジェクトが終了しました

新たに導入された機材の操作を学ぶNICEDの研究員

新たに導入された機材の操作を学ぶNICEDの研究員

インドにおけるJICAの事業の中でも取り分け長期間にわたって実施されてきた下痢症対策プロジェクトが6月30日に終了しました。

インドのヘルスケアシステムにおける最大の課題の1つはコレラや下痢といった感染症疾患で、乳幼児の高い死亡率の大きな原因になっています。下痢症疾患はさまざまなウィルス・バクテリアや寄生虫によってもたらされますが、これまで行われてきた下痢症対策は、新種のコレラ菌や耐性の強い赤痢菌などが発生してきたために難しい対応が迫られていました。

このため、JICAでは1998年にインド政府との間で5年間の技術協力を行うことに合意し、コルカタにある国立コレラ・チフス研究所(通称NICED)をカウンターパートとして協力を開始しました。最初の5年間の協力期間では、日印の研究者による研究交流を通じて、下痢症疾患の研究ノウハウが蓄積され、加えてNICEDの基礎研究機能を充実させるための資機材の整備が進められました。2003年から始まった第2次協力は、下痢症疾患の予防と撲滅に向けたNICEDの機能強化を目的に実施されました。

このプロジェクトは、日印の医療研究機関間でのハイレベルの交流を進めた始めてのJICA技術協力で、この10年間で、JICAは述べ76名の専門家を派遣し、さらに31名のインド人医療研究者が研修プログラムを通じて日本を訪問しました。こうした協力を通じて培われたNICEDの高い技能と専門性は、コルカタ市内の病院だけではなく、インド全国の医療施設、さらには他の国々の医療関係者にまで影響を及ぼしています。1998年から2005年にかけて、インドの乳幼児死亡率(1000人当たり死亡数)は、72から58に減少しました。

この動向をさらに加速させるため、NICEDでは現在、国内25の医療施設と協力して、下痢症発症を監視するネットワークの構築を目指しています。新型ウィルス・バクテリアを早期発見し早期に抑圧するためには、このようなネットワークを通じて早期連絡がなされることが必要不可欠です。

(文:インド事務所・山田)

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《レポート》 2年目を迎えたマディアプラデシュ州リプロダクティブヘルス支援事業

研修を受ける助産師たち。まなざしは真剣です。

研修を受ける助産師たち。まなざしは真剣です。

2年目を迎えたリプロダクティブヘルス事業の事務所がある、マディアプラデシュ州ボパールに行って来ました。マディア・プラデシュ州は、インド主要州のなかでもっとも後進とされる北部4州に含まれ、妊産婦死亡率など社会開発指標の低い州です。

この厳しい環境のもと、母親と赤ちゃんを守るために何ができるのか。プロジェクトがまず注目したのは、既存の行政システム上、豊かな財源・人材があるにもかかわらず、それが有効に活用されていない、という点です。私たちが通常想像する「開発」的現場とはかけ離れているように思われるかもしれませんが、都市と農村との物理的・心理的距離が想像以上に大きいインドにおいては、現場でよく聞かれる問題点です。

農村になかなか行きたがらない医療スタッフ、行政官の代わりに、実際に農村で母と子のケアを一手に引き受ける重責を担うのは助産師など現場スタッフ。しかし、彼女たちには充分な実地研修の機会が与えられないばかりか、州政府への膨大な報告事務に追われ、村々を訪問し、本来の妊産婦ケアをする時間も技術もない状況でした。そこでプロジェクトチームはまず、彼女たちの能力を信じ、その技術を磨き、職場環境を整えてあげることから始めました。この草の根での活動からスタートした1年目が終わり、今では現場の助産師たちは徐々に自信をつけ、従来手を付けられなかった産後ケアなどの活動にも積極的に取り組むようになりました。こうしたプロジェクトの成果を州政府も充分に認め、他地域でもJICA方式が導入され始めています。

JICAリプロダクティブヘルス事業のスタッフは日本人2人を含む11名。インド人らしくみな活発な議論をたたかわせつつ、モティベーションとチームワークは抜群です。ボパールの街はずれ、丘の上から人口湖を見下ろすように立つ事務所で、2年目を迎えたスタッフの奮闘が日夜続いています。

(文:インド事務所・佐々木)

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2008.4.22 財務省経済関係局長がJICAプロジェクトを訪問

NICED施設を視察するクリシュナ局長

NICED施設を視察するクリシュナ局長

スタッフも交えた意見交換

スタッフも交えた意見交換

4月10日、インド財務省経済関係局(DEA)のK. S.クリシュナ局長が、JICAインド事務所藤井所長とともに「下痢症対策プロジェクト・フェーズ2」の活動現場であるコルカタ・国立下痢症研究所(NICED)を訪問し、プロジェクトの視察を行いました。

これは、現在実施中の技術協力プロジェクトが今年6月に5年間の協力期間を終了するため、その成果をインド政府高官にもご理解いただくことを目的としています。NICEDの活動の説明時には、前所長のインド医学研究評議会(ICMR)のS.K.バッタチャリア博士やNICEDのG. B.ナイール現所長、国立植物ゲノム研究センター(NCPGR)のA.ダッタ教授、NICED内に設置されている岡山大学インド感染症共同研究センターの竹田美文博士も同席し、NICED次長のM.N.チャクラボーティ博士とナイール所長がJICAプロジェクトの成果についてクリシュナ局長に説明を行いました。

その後、日本の無償資金協力で設立整備された建物施設の見学も行われました。クリシュナ局長は、すばらしい施設設備であることと、JICAの協力(専門家の派遣、機材の供与、研修員の日本での受入、現地国内研修・第三国研修の実施など)の成果として、人材が養成され、活発な国際的水準の研究活動が展開されているとの印象を持たれました。

ビュッフェ形式の昼食会にはNICEDの研究員全員が参加し、意見の交換も行われました。たとえ、中断があっても、このベンガルの地に、将来にわたってJICAのプロジェクトが、何らかの形で継続していくことが大切であるという認識で一致していました。

クリシュナ局長がJICAの技術協力プロジェクトの現場を視察するのは、2007年8月の「養蚕普及計画」プロジェクト終了時に続いて二度目の試みとなります。JICAインド事務所では、インド政府高官に技術協力の効果を実感していただくために、今後も同様の視察の機会を設けていきたいと考えています。

(文:下痢症対策プロジェクト・能代裕調整員、インド事務所・山田)

NICED(National Institute of Cholera and Enteric Diseases)

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2008.4.15 母乳育児の短期専門家が活動終了しました

赤ちゃんとお母さんに声をかける三浦さん

赤ちゃんとお母さんに声をかける三浦さん

保健・衛生研修の風景

保健・衛生研修の風景

平成19年度のNGO技術者派遣制度を利用して、1月末から約2ヶ月間、インド北部での活動を終えた「たんぽぽ母乳育児相談室」の三浦孝子さんが、3月20日、インド事務所を訪問し、活動の成果について報告されました。

三浦さんはネパールで青年海外協力隊員、JICA専門家として活躍された経験もある、保健衛生分野の専門家です。今回は、かねてから交流のあったNGO団体、アーシァ=アジアの農民と歩む会(本部・栃木県宇都宮市)とアラハバード農業大学継続教育学部(CCNFE)の要請を受け、その共同事業地であるウッタル・プラデーシュ州アラハバード県の農村へ派遣されました。主な目的は農村保健・衛生改善を推進する農村女性ヘルスボランティアの育成です。

滞在中は各村から選ばれたボランティアに対して、母乳育児を含む母子保健を中心とした保健・衛生研修を行いました。設備が十分でないにもかかわらず施設分娩を制度として推進する政府の方針を尊重しつつも、三浦さんは基本に立ち返り、生まれたての赤ちゃんと母親とのスキンシップの大切さを伝えます。その熱意が伝わったのか、州政府の保健行政の末端を担う女性職員を対象とした研修に講師として招かれるなど、地元保健機関との協働も実現しました。

三浦さんは今後も現地をたびたび訪問し、研修のフォローアップをしていく予定です。インドでももっとも貧しい地域の一つとされるウッタル・プラデーシュ州東部において、女性ボランティアたちの今後の活躍が期待されます。

(文:インド事務所・佐々木)

(特活)アーシャ=アジアの農民と歩む会
CCNFEボランティア日記