より良い都市生活環境を —JICAの都市公共サービスの質の改善に向けての包括的な取り組み—

2009年6月26日

インドの都市開発は近年目覚しい勢いで進んでおり、中央政府もJNNURM等の補助金制度を活用して積極的に支援している。他方、こういったインフラ整備が進んでいる一方で、完成した施設を利用して市民へ提供される公共サービスの質には問題が多く指摘されている。例えば下水道のネットワークがカバーされているとされている地域においても、戸別接続が進まずに地域内の住民が下水道ネットワークに接続できていなかったり、上水道管に接続しても実際に供給される時間は一日数時間程度であったり、といった問題が多く見受けられる。また、実施機関の運営維持管理能力の欠如も深刻である。特に裨益者から徴収する料金が低く設定されていることや、料金の回収が不十分であるために、維持管理費のコストリカバリーが出来ず、結果関連施設が十分に維持管理されていなかったり、また多くの補助金が投入され事業全体が不健全な財務状況で運営されている場合が多い。

これらの問題解決のためには各実施機関が現在の経営状況、サービス提供状況を十分に把握し、分析した上で明確な目標値を設定し、その達成に向けての計画を作成・実施する必要がある。しかしながら、具体的にどのような項目についてどのような目標を設定すべきなのか不明確である場合が多く、経営やサービスの質の改善の方向性が必ずしも明確となっていない。

こういった背景を踏まえ、都市開発省(Ministry of Urban Development:MOUD)は全国の都市サービスに係る共通の指標を作成し、ベンチマークを設定した(ServiceLevel Benchmark:SLB)。具体的には、(1)上水道9項目、(2)下水道9項目、(3)廃棄物処理8項目、(4)洪水・排水制御2項目と、4分野において計28項目の指標を設定、各都市に対し、これら各指標の定義に基づくデータの収集及び最終的なSLB達成へ向けての取り組みの実施を促している。特にデータを継続的に収集し、分析し、パフォーマンス改善のためのプランを作成、実施するといった一連のサイクルを各実施機関に制度化させることを重視している。

MOUDのこの取り組みを受け、JICAは円借款事業の対象地を中心に8都市(下記参照)におけるパイロット事業支援の実施を決定、2009年5月にコンサルタントを雇用し、具体的な取り組みを実施中である。調査結果については8月に開催予定のワークショップを踏まえ、同9月にレポートが完成する予定となっている。このようなJICAの支援を通して、これら8都市における公共サービスの質が向上し、これら都市住民の生活環境の向上が期待されるとともに、成功例は他都市にも波及していくことが期待される。

JICAが担当しているSLB実施のパイロット8都市
【写真】
パンジャブ州:アムリトサル市、ジャランダール市
デリー準州:デリー市
カルナタカ州:バンガロール市
アンドラ・プラデシュ州:ハイデラバード市
ケララ州:トリバンドラム市、カリカット市

(文:インド事務所 浜中)