デリー地下鉄フェーズ2も順調に進捗 インド初の標準軌路線が開通

2010年4月9日

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インド初の標準軌路線開通

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新車両のおひろめ

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車両の中には受注した日本企業(三菱商事・三菱電機)のプレートが設置

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車両内でのテロ対策

インドの首都デリーでは、2010年10月に開催が予定される大英連邦競技会(Common Wealth Game)前に市内の鉄道網を整備するため、JICAの支援のもと「デリー高速輸送システム建設事業フェーズ2(以下、「デリー地下鉄フェーズ2」)」の建設が進められています。既に、デリー地下鉄フェーズ2対象区間のうち、デリー中心部と近郊のノイダまでを結ぶ路線等が開通しており工事は順調に進捗していますが、4月2日にはインドで初めて標準軌(1435mm)を採用したInderlok-Mundlka区間の運転が開始しました。インドにおいて初めて標準軌を導入した本区間の開通はインド鉄道史では重要な意義があります。

線路のレールの間隔をあらわす「軌間(ゲージ)」は、列車のスピード、輸送力、施設や車両の規模等を決定つける基本的な基準で、軌間の選択は国家的な問題といわれています。日本においては、狭軌(1067mm)で鉄道が開業され主流となっていましたが、大きな議論の末、新幹線の導入により初めて標準軌が採用されました。

インドは鉄道延長距離が世界有数で150年以上の歴史を有している鉄道大国ですが、その軌間は広軌(1676mm)が主流となっており(注1)、インド国鉄は世界最大級の幅をもつ広軌により大量輸送を実現していることを誇りとしています。当初から、インドで主流となっている広軌をデリー地下鉄においても採用することが決定されていましたが、デリー地下鉄フェーズ2において世界標準である標準軌を導入すべきではないかという論争が沸き起こりました。これが、インド市民を巻き込みインド鉄道業界で大きな話題となったデリー地下鉄における「軌間論争」です。

鉄道省を中心とした「広軌派」は、広軌の大量輸送力、インド国鉄との連結輸送の可能性、車両の維持管理における統一規格のメリット等を訴え、インド国鉄と同じ広軌をデリー地下鉄フェーズ2でも活用すべきとの主張を展開しました。一方、デリー交通公社のスリダラン総裁を中心とした「標準軌派」は、世界の主要地下鉄が標準軌であり標準軌導入により世界の技術革新の恩恵を受けることができること、幅の狭い標準軌を導入することでトンネル建設等の費用を抑えられること等のメリットを主張しました。インドの主要新聞が連日この議論を大きく採り上げる等インド国民を巻き込んだ「軌間論争」が約18ヶ月続きましたが、最終的には、デリー交通公社のスリダラン総裁の主張が通り、フェーズ2のInderlok-Mundlka区間等で標準軌を採用することが2006年に決定されました。これにより、デリー地下鉄は、世界で初めて広軌と標準軌の2つの軌間を持つ地下鉄となりました。

本論争を契機に、デリー地下鉄フェーズ2以降、インド国内で進められている地下鉄事業(バンガロール地下鉄、コルカタ東西地下鉄、チェンナイ地下鉄)では標準軌が導入することとなりました。デリー地下鉄フェーズ2において標準軌を活用するという決断はインド鉄道史においては歴史的な決断となったのです。

4月2日には、こうした歴史的意義のあるInderlok-Mundlka路線が運転を開始しましたが、そこには日本企業が受注し電気機器を提供した車両が走ることになりました。この車両には、「電力回生ブレーキシステム」という効率的で環境に優しい日本の技術が活用されており、鉄道事業では世界で始めてクリーン開発メカニズム(CDM)事業として登録されました。JICA支援のもとインド鉄道史上初めて国際基準の標準軌が導入される路線でも、日本の技術力が活用されています。

(注1)インドでは、植民地時代に英国が主導し建設した広軌の幹線、藩王国が整備した狭軌等の路線などが混在しており、4つの軌間が併用されている状況にあります。インド国鉄は、軌間の統一を進めてきた結果、広軌がインドの主流となっています。

(注2)「世界初の鉄道事業のCDM事業登録」(2008年1月11日 旧国際協力銀行プレスリリース)