住民の自立を促すコミュニティ開発とマイクロクレジット

2010年7月6日

ソムニードとJICAはアンドラプラデシュ州で2つの草の根技術協力事業(以下JPP)を実施しています。ひとつは「地域住民主導による小規模流域管理(マイクロウォーターシェッド・マネジメント)と森林再生を通した共有資源の管理とコミュニティ開発」(パートナー型:2007年8月〜2010年7月)、もうひとつは「都市近郊の低所得者を対象としたマイクロクレジット強化プロジェクト」(緊急経済危機対応・包括型:2010年3月〜2011年7月)です。

ソムニードは岐阜県高山市に拠点を置く国際協力NGOです。自分たちの力で地域を守り、満足して暮らしていけるように、そこに暮らす人々とともに地域の課題を考えます。海外事業と国内事業のバランスがとても良いNGOとして知られています。主な活動地域は日本、インド、ネパールですが、JPPとしてはソムニード本部とインド現地法人がパートナーシップを組み、スリカクラム県では小規模流域管理を通した森づくりと人づくりを、ヴィサカパトナム市郊外ではマイクロクレジットを通した都市スラム女性の人材育成を実施しています。

【小規模流域管理プロジェクト】

「流域」とは降雨が集まり、地表を流れ、小川から川、湖、海へと流れ出す地域全体を指します。最も大きい単位は「地域(region)」、最小の単位は「小規模流域(micro watershed)」です。この小規模流域を管理する第一義的な目的は水問題への対応ですが、水と土と森と人の問題には必然的に包括的な取り組みが求められます。すなわち、土砂災害・水資源管理・森林管理など多くの環境問題に、流域全体で総合的に取り組むことが必要です。ですから、小規模流域管理は「水資源保全」「分権アプローチ」「エコロジカルバランス」「住民参加」「コミュニティエンパワメント」「持続的開発」「共有資源管理」の概念と密接に結びつき、村落コミュニティ開発の呈をとります。

1993年の設立以来、ソムニードはアンドラプラデシュ州スリカクラム県最北部で活動してきました。ここは東ガーツ山脈の一部で山岳少数民族の人口が最も集中しており、多くの典型的な小規模流域の地形を有しています。どうしたら自然資源を持続的に利用できるのか、自然環境を守りながら村を発展させることができるのかを、「水」を中心にして村人と一緒に考え、実践します。

JPP(パートナー型)では、3流域の地域住民(山岳少数民族)183世帯を対象としています。2007年8月から開始されたこのプロジェクトは、本年7月の終了に向け、残すところ2ヵ月です。ため池などの建造物を予定通り完成させ、現在は、今後3年間の中期活動計画の住民自身による策定に向け、アクセス可能な資金源(援助機関のファンド、政府スキーム、村の共同資金等)を組み合わせて活用することができるよう、ソムニードによるファシリテーションの段階に入っています。流域管理を自分たちで続けていくために組織およびその規定を策定し、それに則った意思決定や活動を実行できるよう、研修を続けています。また、7月には各流域でデザインした植林計画に基づく植林作業を行うため、種や苗木の収集作業を行っています。

JICAインド事務所が現地訪問した際、早朝、村内の小学校を会場として集会を開き、訪問者に対する歓迎式、村役員によるこれまでの活動報告、既存の活動と今後の活動に関する質疑応答を行いました。日中は熱風が吹き気温が40度近くになるため、畑仕事や賃労働に出る前の朝に集会を開いたとのことでした。印象深かったのは、集会の開催時刻と場所を選定したのも住民で、集会の開始から終了まで、司会進行を務めたのも住民、質疑応答で受け答えしたのも、住民だったことです。しかも、特定の役員しか発言しないというのではなく、それを担当したり関わったりした住民が、男女を問わず発言しました。

本件事業が目指してきた住民を主体とするコミュニティ開発が成果を出していることは、こういった議事進行や質疑応答時における応対姿勢からも明らかだと感じました。

【写真】

村人総出で建設した貯水池

【写真】

越流堤(surplus weir)貯水量を調整するための堤防の一部

【写真】

キャッチピット(堆積土を確保し、植林の際に苗木を植える)

【マイクロクレジット強化プロジェクト】

都市近郊の女性たちにもマイクロクレジットの活用機会が向上し、SHG(Self-Help Group)内で資金運営ができるように、SHG連合体VVK(Visakha Vanita Kranthi=ヴィサカ女性“泉”の会)のリソースを活用して、スラムの女性からスラムの女性への技術移転を図るのが「都市近郊の低所得者を対象としたマイクロクレジット強化プロジェクト」です。SHG(Self‐Help Group)は、一般に自助活動を行うグループですが、インドの文脈では、最大20人の女性が1グループとなり、貯蓄と小規模融資を行うのが特徴です。

VVKは、2004年のJPP(パートナー型)「都市近郊農村部の女性自助グループと都市スラムの女性自助グループの連携による新たな産直運動構築と自立のための共有財産創出」(2004年7月〜2007年6月)を先行プロジェクトして創設されたSHG連合体です。現在750名の会員がおり、今回JPP(包括型)では、VVKメンバーが先行プロジェクトで培った技能を駆使して、Vambayコロニー(正式名称はVisakhapatnam Ambedkar Awasa Yojana Colony)の居住者を対象に支店を設置してマイクロクレジットの機会を増やし、資金運用の仕組みなどの研修を行っていきます。

アンドラプラデシュ州ヴィサカパトナム市郊外では、2001年以降、インド政府主導により、低所得者を対象にした集合住宅が建設され、市内のスラムに暮らしていた人々が移住し、一大低所得集落が出現しています。彼らにとって、マイクロクレジットへのアクセスは、日々のキャッシュ・フローを楽にし、収入向上の機会を増大するために欠かせないものですが、市内から遠い新居住地では、まだマイクロクレジットの機会がありません。Vambayコロニーはそういった集落の中では最も遠い距離(市から15km)にあります。そこで集合住宅の住民に新たにマイクロクレジットの機会を生み出し、生活を向上させるのが本事業の骨子です。同事業では先行プロジェクトで培われた女性自助グループの連合体(VVK)のリソースを活用して、都市近郊に居住する1,000世帯の生活向上を図ります。

2010年3月15日から始まった今期JPP(包括型)では、現在の組織運営能力の認識を共有し、今後の目標を立てることから研修が始まりました。JICAインド事務所の訪問に際して、VVKの現行役員や前任の役員が参集してくれ、先行プロジェクトの成果発表、現状把握、今後の目標に関して、自分たちの言葉で、自分たちで作成したアクション・プランを報告してくれました。はじけるような笑顔で話す女性たちの姿が、これまで成し遂げてきたことへの自信を物語っていました。

【写真】

メンバーによるVVK紹介

【写真】

先行プロジェクト終了以降も自分たちで管理してきた帳面

【写真】

メンバー集会の様子

ソムニードは組織づくりをするために人づくりに重点を置くファシリテーションで定評のある団体です。スタッフは常にオブザーバーのような立ち位置を貫き、あくまでも住民が主体的に報告や意見の取り纏めをします。住民の「オーナーシップ」を重視するため、発言するときはソムニード・スタッフも手を挙げて司会に許可を求めます。こういったやり取りも今では定着してきました。オーナーシップ意識を獲得した女性たちは自信を持って発言し、堂々と行動していました。住民の持つ潜在性を引き出すことの必要性と、それを信じて発現するまで待つことの重要性をソムニードの活動は示していました。

(インド事務所 榎木)