砒素対策の実現に向けた挑戦(ウッタルプラデシュ州バライチ県) —宮崎大学—

2011年4月7日

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ポンプに塗られた黄色い色は砒素濃度「中程度」を示す

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ポンプに塗られた赤い色は砒素濃度が「高い」ので飲料用に使用してはいけない

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砒素や鉄分を除去する代替水源をチェックする矢野サブプロジェクトマネージャー(向かって左)

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代替水源の使用方法・メンテナンスに関する説明会の様子

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砒素が入っている水をなぜ飲んではいけないのか、どうやって砒素を除去するのかなどを説明する啓発活動の様子

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村人に説明をする宮崎大学学長の菅沼先生(向かって左)

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代替水源の管理人(無償ボランティア・向かって右)に説明をするBAMPスタッフのパンカジさん(左)

本年3月、インドで新たな草の根技術協力事業がスタートしました。実施団体は宮崎大学です。

事業名称は「行政主導化をめざしたインド ウッタルプラデシュ州における総合的砒素汚染対策実施事業」(2011年3月1日〜2013年2月28日)で、2008年から2年間実施した「インドウッタルプラデシュ州における地下水砒素汚染の総合的対策」のフェーズ IIともいえる位置づけです。

バライチ県内の事業地ではBAMP(Bahraich Arsenic Mitigation Project)の名称で親しまれ、ガンジス川本流および支流流域の人々への安全な飲料水の確保、および現地医療機関と住民の共同による健康管理システムの構築に寄与してきました。

ネパールの国境に近いバライチは、冬は凍てつくほど寒く、夏はうだるほど暑い土地です。電気の来ていない時間の方が長いのではないかというほど停電はしょっちゅうあります。ちょっとした工業用品も手に入らないような地方の町です。

新規事業では、裨益範囲が前回のバライチ県内の2村の7集落から27集落に拡大することに加え、行政主導化を目指してウッタル・プラデシュ州政府との連携を強化します。前回事業より対象地域は4倍になります。

BAMPが最終的に目指すのは、人々が安全な水を飲めるようにすることです。事業地を含め、ガンジス川流域では、地下水に溶け出した砒素が、井戸やポンプでくみ上げられて農業や飲料水に使用され、体内に蓄積された砒素が及ぼす様々な健康被害が問題になっています。そこで前回の事業では、BAMPは砒素濃度が高く、将来の健康被害が特に懸念される村に入り、井戸やポンプの砒素濃度を調べ色分けしました。水源が基準を超えた砒素を含んでいれば、利用停止を促すと同時に代替水源を造りました。代替水源は集落に1基が目安です。

代替水源を造る技術はBAMPが支援しますが、代替水源のメンテナンスは、村人が自分たちでしなくてはなりません。代替水源は定期的なメンテナンスが必要なのですが、井戸やポンプで汲み上げる水の方が、夏は冷たく冬は温かいので、人々はそちらの水を好みます。また、代替水源は水に含まれる鉄も除去するのですが、人によっては、鉄の味のする赤っぽい色をした水の方を美味しいと思う人もいます。子どもがいたずらして水を全部抜いてしまったり、定期清掃を怠って目詰まりして水が出なくなったりもします。インドの村落構造に配慮しつつ、砒素汚染分布とカースト別集落の分布の双方を見ながら代替水源をどこへ設置するかを決定するのも悩ましい問題でした。

こういったことをひとつひとつクリアしながらBAMPは活動していました。ですから、代替水源の利用とメンテナンスの指導は思っていた以上に難しい活動でしたが、インド側カウンターパートのエコフレンズのスタッフとBAMPのスタッフは、試行錯誤しながら住民の啓発活動に努めました。また、BAMPのこうした地道な活動を、バライチ県の県知事が評価し、活動の後押しもしてくれました。

これから始まる新規事業ではこういった教訓や支援を活かして、州の行政を巻き込んだスケールアップを構想しています。宮崎大学とエコフレンズによる活動が、将来的にはインドの人たちだけで運営していけるように、住民に対する啓発活動も含め、インド行政への技術移転を図るのが、本件事業の骨子です。行政主導による砒素対策の実現に向けた宮崎大学の挑戦が始まります。