「ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進事業」開始

2011年8月29日

8月14日、今年2月に調印された円借款事業、「ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進事業 」の開始式典が同州ハミルプールにて開催されました。式典には州首相が出席し、実施機関であるヒマーチャル・プラデシュ農業開発協会 (Himachal Pradesh Agriculture Development Society) や同州農業局関係者をはじめ、地方からも多くの農民が参加しました。

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事業開始式典にて表彰される篤農家。(壇上左から5人目がプレム・クマール・ドゥマル州首相、壇上左から3人目が山中インド事務所長)

実施機関の議長を務めるドゥマル州首相は、篤農家の表彰を通じて農民を激励し、関連の政府開発事業とも連携しながら、本円借款事業を最大限に活用していくよう、農民への積極的な参加を呼びかけました。

インド北部に位置するヒマーチャル・プラデシュ州は、標高350mから7000mの起伏に富む山岳州です。冷涼な気候は、端境期の野菜や果実などの高付加価値作物の生産に適しており、デリーなど近隣大都市で中間層の所得が急激に増加していることから、生鮮果実や高級野菜等の急速な需要増が見込まれ、これに応えることで農村の生計向上につながることが期待されます。

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種蒔きの様子

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移植後の苗

しかし、農民の8割以上が零細・小規模農家であり、急峻な地形のため灌漑整備は限られ、作物は天水に依存する小麦やトウモロコシ等の穀物が大半で、冬季に灌漑が必要な野菜栽培は、灌漑施設を持っている農家に限られます。道路についても、車両によるアクセスが通年可能なのは州内の集落のうち約6割のみで、残りは籠を背負って徒歩で出荷を行っています。これは農民にとって重労働であり、輸送中に生鮮野菜が損傷することにより売上価格が下がるなど、収入向上に向けての制約要因として指摘されています。

この様な状況を改善するため、作物多様化に主眼をおいた農村開発戦略の明確化を目的として、わが国の開発調査「ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化総合開発調査」を2009年3月まで実施しました。同調査により、農業生態ゾーン毎に類型化し、消費地のニーズ及び地域のニーズも十分に考慮した精度の高い地域毎の農業開発計画が策定されました。

同開発調査では、零細・小規模農家の食糧自給を確保した上での穀物からの多様化、特に野菜への転作による生計向上を目標とし、そのために小規模灌漑の開発、道路の整備、野菜栽培の指導、農産物加工・販売等の農民支援体制の強化が提案されました。本事業はそれらを円借款で支援するものであり、同時に農業局の組織強化と作物多様化のモデル形成を目的とした技術協力プロジェクト「ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進プロジェクト」が今年3月に開始し、この2案件を「ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進プログラム」として実施しています。

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市場で販売されているトマト

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ボカシ肥作りの様子

円借款事業は同州の5県(ハミルプール、ビラスプール、マンディ、ウナ、カングラ)において、約3,700haに裨益する小規模灌漑整備、延べ約100kmのアクセス道路整備、約23箇所の農作物集積所建設といった基盤整備を含む、生産から加工・販売までの一連の農民支援活動を今後7年間で約200箇所の事業地に展開する計画です。

モデル事業地であるハミルプールのラルリ地区では、技術協力プロジェクト専門家の指導により、農民組織が形成され、灌漑整備の準備を行いながら、農民と試験圃場にて野菜栽培(トマト・ナス・パプリカ・キュウリ等)を進めています。

多様な地域や気候を考慮した野菜作りの試みは試行錯誤でもありますが、肥料や農薬を最小限にして作物本来の味を引き立てる、安全でおいしい野菜づくりを目指しています。