災害医療情報のWHO国際標準化−JDR医療チーム登録者が貢献−

2017年2月9日

MDSを反映した報告様式

WHO EMT戦略諮問委員会でMDSの説明を行う久保医師(JDR)

JICAが主導するワーキンググループが策定した災害医療情報の標準化手法(Minimum Data Set:MDS)が、2月7日、国際標準として世界保健機関(WHO)により採択されました。

MDSは、被災地で活動する緊急医療チーム(Emergency Medical Team:EMT)が患者のカルテから抽出し、日報として被災国保健省へ報告すべき46の必須項目です。項目は、年齢層、性別、妊娠の有無、外傷・疾病の種類、処置、衛生状態などから構成されています。これらの項目と定義を国際標準化することにより、被災国保健省は全ての活動中EMTの日報データを合算して被災地全体の最新状況を把握・分析し、医療資源の配分や感染症流行の早期対応などの意思決定に迅速に反映させることが可能となります。

被災地では国内外の様々なEMTが医療活動を行いますが、これまでは各チームが収集する医療情報の項目が統一化されておらず、被災国保健省が全体状況を正確に把握することができませんでした。

JICAは2016年2月、MDSワーキンググループの設置をWHO(EMT事務局)へ提案しました。その結果、WHOの同意および要請に基づき、イスラエル外務省と共同でワーキンググループ(WG)を主導することとなりました。2016年5月に東京でWG第一回会合を、9月にイスラエルで第二回会合を開催し、MDSの項目選定に向けて討議を重ねてきました。会合には、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、WHO、国境なき医師団(MSF)を含め15ヵ国・機関から専門家延べ28名が参加しました。日本側メンバーとして国際緊急援助隊(JDR)医療チーム登録医師5名が参加し、技術的検討や各種原案の作成・報告書の取り纏めに中心的な役割を果たしました。

また本年1月には、JICAが実施しているASEAN災害医療連携強化プロジェクトがバンコクで開催した地域演習において、MDSを模擬診療に導入して試行運用し、ASEAN各国の参加者からフィードバックを得ました。

これらの結果は、2月7日にWHOのEMT戦略諮問委員会で報告され、討議の結果、MDSは満場一致で国際標準として正式に採択されました。

これにより、WHOに登録する全てのEMTは、今後の災害派遣においてMDSを日報様式として活用することになります。また、WHOが各国保健省に対して実施するEMT調整所研修や国際演習において普及が図られることになります。JDR事務局は、MDSの今後の普及・運用においてもWHOを通じて貢献していく予定です。

なお、MDSを概念化する契機となったのは、2013年のフィリピンにおける台風ヨランダ被害に対するJDR医療チームの派遣です。JDRはフィリピン保健省が開発していた報告様式の活用を提案・支援し、以後の災害医療データの集計が容易となりました。この経験を基に、JDRは自らの標準様式を開発するとともに、国内災害用の標準開発にも参画しました。後者は2016年4月の熊本地震でも活用され有効性が確認されています。