モザンビーク国プロサバンナ事業に関する一部報道等について

2019年9月20日
国際協力機構

弊機構がモザンビークにおいて協力している「熱帯サバンナ農業開発プログラム」(以下、「プロサバンナ事業」)に関して、一部報道等において事実誤認が見られますため、プロサバンナ事業の事実関係及びJICAの見解等について以下のとおり説明いたします。

一部報道内容についての事実関係

1「プロサバンナ事業に賛成している農民は1人もいない」との発言について

JICAは、2012年からモザンビーク政府農業・食糧安全保障省(MASA)による地域住民・農民への説明や対話を促進する支援を行ってきています。これまで約100回実施された対話・公聴会にはのべ約5,500名の地域住民・農民が参加し、モザンビーク政府からの説明・対話が行われ、多数の農民がプロサバンナ事業に対し、賛成を表明しました。

また、これまでのべ約4,800名を対象に行われたパイロット事業において、農家の所得向上につながった等の成果が報告されており、参加農家から、事業の継続や拡大を望むといった好意的な反応を得ています。

「プロサバンナ事業に賛成している農民は1人もいない」というコスタ・エステバン氏(2019年9月に来日、モザンビーク全国農民連合ナンプラ支部代表)の発言は事実に反しています。

他方、コスタ氏を含め、事業に対する理解を得られず、反対する農民がたとえ少数だとしても存在するとの現状については真摯に受けとめ、引き続きモザンビーク政府による、そうした方々への説明、意見聴取、聴取した意見の事業計画への反映等を支援してまいります。

2「プロサバンナ事業を直ちに中止すべき」という発言について

JICAの事業は相手国政府の要請に基づいています。したがって、JICAが、モザンビーク政府が望まない事業を強行することはありません。また、モザンビーク政府との間では、賛成派・反対派を問わず、可能な限り多くの地域住民・農民の方々の意見を計画に反映させることについて合意しています。

本事業では、下記の「参考:プロサバンナ事業概要」のとおり、(1)農業試験場の研究体制の強化及び適切な農業技術の開発、(2)農業開発マスタープランの策定、(3)改善された営農モデルに関する普及員や農民のための技術指導等を行っており、これらの活動そのものによって不利益を被る農民は存在しません。また、(3)に関連し、これまで実施してきた、栽培技術の指導や組織運営・販売支援の結果、農作物の収量の増加や農家の所得向上が確認されており、こうした取り組みをもっと進めてほしいという多くの農民の声が聞かれます。

前出のコスタ・エステバン氏は、プロサバンナ事業への反対があることを理由として、「プロサバンナ事業を直ちに中止すべき」と発言されていますが、本事業で計画しようとしているものは、小農の所得向上に資するものであり、上記のとおり、その成果を評価し継続を希望する農民は確実に存在することから、その期待には応えてまいります。その一方で、反対する農民のみなさまの理解を得ていくことは重要であり、今後ともJICAとしては、モザンビーク政府による、地域住民や農民との丁寧な対話を支援しつつ、事業を継続していく方針です。

3「土地の収奪を招いているのではないか」との指摘について

前述のとおり、プロサバンナ事業で行っているのは、(1)農業試験場の研究体制の強化及び適切な農業技術の開発、(2)農業開発マスタープランの策定、(3)改善された営農モデルに関する普及員や農民のための技術指導等であり、本事業において土地収奪が行われた事実はありません。

技術協力「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト」で策定中のマスタープラン案では、土地収奪の防止と土地の権利保護制度の整備を目的とし、モザンビークの法律や現地事情を踏まえた「責任ある農業投資(注1)ガイドライン」案や、農業投資の管理・モニタリングを行う仕組みの構築に関して提案しています。それらは、土地の収奪を防ぐのに役立つものです。

(注1)「責任ある農業投資」(Responsible Agricultural Investment:RAI)とは、農業およびフードシステムへの民間投資が現地の人びとの食料安全保障や様々な権利を脅かしてはならないとする考え方。国際規範として「農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則」が2014年の第41回世界食料安全保障委員会(CFS)で採択され、政策、ルールの制定など途上国各国の文脈に応じた取り組みが推奨されている。

4「事業の詳細は地域住民に知らされず、話し合いへの参画もできない」との指摘について

JICAは2012年からモザンビーク政府による地域住民・農民への事業の概要及びマスタープラン案の説明や対話を促進する支援を行ってきており、「事業の詳細は地域住民に知らされず、話し合いへの参画もできない」との指摘は事実に反しています。

地域住民・農民への主な説明・対話の機会としては以下が挙げられます。

  • 2012年から2013年にかけて、地域住民・農民を対象として、対象3州や首都マプトで50回以上の対話を実施。約2,500人が参加。
  • 2015年、「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト」で作成したマスタープラン・ドラフト初稿についての公聴会を、対象3州と首都マプトの41会場で開催。約3,000人が参加。
  • 2016年5月~6月、農民団体・市民団体が主体となり、約1,800人の農民を対象とした聞き取りを実施。
  • 2018年4月以降、計5回に亘り、農民団体・市民団体との対話を実施。

マスタープラン案は、モザンビーク政府のウェブサイトにおいても公開されています。

JICAは今後とも地域住民への情報提供と対話の促進に一層努めてまいります。

5「プロサバンナ事業はブラジルのセラード開発をモザンビークで再現するもので、モザンビークの実態に即していないために様々な問題を引き起こしている」との指摘について

プロサバンナ事業は、ブラジルでの事業経験の再現を意図するものではありません。JICAは、「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト」をはじめ、プロサバンナ事業に関する各種調査で、社会・経済状況、土地の使用実態、農業形態などを確認し、モザンビークの現地の実情に合致した適切な農業開発モデル構築に取り組んでいます。

6「輸出用大豆の栽培を目的とした事業であり、現地の小規模農家に裨益するものではない」との指摘について

プロサバンナ事業は、持続可能な農業・地域開発を通じ、小規模農家を中心とする地域住民の生計向上を目的とするものです。

モザンビーク政府が策定した「農業開発戦略計画(PEDSA)2011-2020」では、「食糧安全保障および農家収入の向上への貢献」を目的として、農業生産性向上を柱の一つに掲げています。「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト」では、需要、供給、栄養、小規模農家による栽培適性等の観点からナカラ回廊地域において農業生産性向上に取り組む優先作物を提案しており、大豆のみでなく、トウモロコシ、キャッサバ、インゲンマメ、ササゲ、ラッカセイ、ジャガイモ、野菜、カシューナッツ、ワタ、タバコなどが、優先作物とされています。大豆は鶏の飼料や植物性油脂抽出の原材料としてモザンビーク国内で高い需要があり、国内の消費量の50%以上に相当する量を輸入しています。マスタープラン案における大豆生産は輸出用としてではなく、むしろ輸入代替及び小規模農家による換金作物としての生産を振興し、生計向上に資するものと位置付けられています。

7「JICAは環境社会配慮ガイドラインに違反した」との指摘について

プロサバンナ事業において、JICAによる環境社会配慮ガイドライン(以下、「ガイドライン」といいます。)違反はありません。

2017年4月、ガイドライン違反を主張するモザンビーク住民による異議申立がなされ、異議申立審査役(注2)が調査を行いましたが、同年11月、ガイドライン違反は認められないとの結論が出されています。一方、異議申立審査役により、JICAに対して、(1)情報不足・透明性の欠如を埋める努力の推進、(2)参加型意思決定の手続ルールに基づく議論の促進、(3)モザンビーク政府による適切な取り組みに係る協力が提言されており、JICAはこれに沿った対応を行っています。

参考:プロサバンナ事業概要

1.プロサバンナ事業の目的

アフリカ大陸南部に位置するモザンビークは、日本のおよそ2倍の国土をもつ人口約2,900万人の国ですが、1人あたりの国民総所得(GNI)は420米ドルで最貧国に分類され、人間開発指数(HDI)が最も低い国のひとつです(注3)。日本政府は、モザンビークの貧困削減のため、農業分野を含む地域経済活性化支援を重点の一つに掲げています。労働人口の約75%が農業に従事し、その殆どが小規模な農業を営んでいるモザンビークにおいて、農業・農村の振興は不可欠です。

このような状況の下、モザンビーク政府からの要請を受け、2009年に合意されたのがプロサバンナ事業です。本事業では、北部ナカラ回廊(注4)に位置する3州21郡において、持続可能な農業・地域開発を通じ、小規模農家を中心とする地域住民の生計向上を目指しています。

(注3)1人当たりGNIは420米ドル(2017:World Bank)、HDIは180/189位(2017:UNDP)
(注4)日本政府が2016年8月の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)で支援を表明した、モザンビーク・ナカラ港から北部地域を通り、マラウイ、ザンビアへと繋がる回廊

2.プロサバンナ事業の内容

プロサバンナ事業の枠組みにおいて、これまでに以下の三つのプロジェクトを実施しています。

(1)「ナカラ回廊農業開発研究・技術移転能力向上プロジェクト」(2011年5月~2017年11月:実施済)

ナカラ回廊地域にある二つの農業試験場を拠点に、地域に適した品種の選定や栽培技術・土壌保全技術の検証、これらに関連する研究能力の向上を支援しました。この結果、2017年11月の終了時点までに、作物の収量や利益の増加につながる技術の開発等の成果が確認されました。

プロジェクトで得られた主要な成果
  • 農業試験場が、現場のニーズを意識・反映した研究計画の立案を行えるようになりました。
  • 研究員による農家の裨益を意識したテーマ型提案研究が行われました。
  • 農作物の収量増、土壌侵食の防止、生産コスト・労力の削減等の具体的な効果を生み出す農業技術が開発されました。(たとえば、土壌改良によりトウモロコシの収量が1.8倍前後となる実験結果が出ています)

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現場で指導に当たる日本人専門家

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プロジェクトで作成したマニュアル

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現場で指導に当たる日本人専門家

(2)「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト」(2012年3月~実施中)

持続的な農業生産システムの推進、小規模農家の貧困削減に向けた、地域の社会経済開発に資する長期計画(農業開発マスタープラン)の策定を支援しています。

(3)「ナカラ回廊農業開発におけるコミュニティレベル開発モデル策定プロジェクト」(2013年5月~実施中)

灌漑農業や作物加工などにおいて、農家や農家組織の規模(農家グループ、女性グループ、農家組織、農協組織)に応じた農業開発モデルの確立に向け、様々な実証活動を実施中です。2018年11月に実施された評価調査で、作物の収穫量の増加や、農家の収入の増加等の成果が確認されました。

プロジェクトで得られた主な成果
  • 農作物の収量が増えました。
  • 農家の収入が増えました。
  • 農家世帯のジェンダー平等が促進されました。
  • 農家世帯の栄養が改善されました。

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パイロット事業に参加する農家の活動の様子

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以上