【Featuring Africa】TICAD Vサイドイベント「サヘル・サハラ地域専門家会合」を開催

−治安、民生の安定を議論−

2013年5月17日

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国際社会の関心の高いマリ北部の治安や支援の方向性について多くの議論が交わされた

「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」が6月、横浜市で開催される。そのサイドイベントとして、JICAは「サヘル・サハラ地域専門家会合」を5月9日、10日の2日間、JICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で開催。現在、注目が集まっているサヘル・サハラ地域(注1)各国から専門家を招へいし、関係者とともに「治安」と「民生の安定」について議論した。

会合には、来日した6ヵ国(セネガル、チャド、ニジェール、ブルキナファソ、マリ、モーリタニア)からの12人(「治安」「民生の安定」分野の専門家一人ずつ)に加え、サブサハラと北アフリカ諸国の在京大使館11ヵ国(アルジェリア、エジプト、セネガル、チャド、チュニジア、ニジェール、ブルキナファソ、マリ、モーリタニア、モロッコ、リビア)と、米国、フランス、欧州連合(EU)、国連開発計画(UNDP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など開発パートナーの在京大使館・代表部、そして外務省、警察庁、税関を所管する財務省をはじめとする日本政府関係者、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)の代表が参加した。

サヘル・サハラ地域の支援・対応策を検討

アフリカの開発には平和と安定が極めて重要である。マリの開発支援国会合が5月3日(パリ)、15日(ブリュッセル)で開かれ、6月に横浜で開催されるTICAD Vではサヘル・サハラ地域に対する具体的な支援策の検討が予定されている。マリを中心としたサヘル・サハラ地域に対する国際社会の支援がダイナミックに動く中、タイムリーに実施された今回の専門家会合には、内外から多くの関係者が集まった。

会合の目的は、安全保障上の脅威と人道・開発上の課題に直面するサヘル・サハラ地域の情報を収集し、日本とJICAが短期的(治安対策)、中長期的(民生の安定)な支援戦略、対応策を具体的に検討すること。1日目の午前中には導入部としての全体会合が、午後には「治安」と「民生の安定」の2グループに分かれて議論が行われた。2日目は前日のグループでの議論を持ち寄って、全体で討議し、最後に会合の議長を務めたJICAの黒川恒男理事が結果を議長サマリーとして取りまとめた。

治安と民生は表裏一体の関係

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JICAが主催した初のフランス語を主言語とした国際会議となった。議長の黒川理事(中央左)と全体進行の加藤隆一セネガル事務所長(その右)

黒川理事は、「会合の大きな成果である議長サマリーを今後のJICAの支援戦略作成に活用するとともに、TICAD V関係者にも参考にすべき重要な文書として活用するよう提言していく」と述べた。議長サマリーの要旨は次の通り。

「治安」と「民生の安定」は表裏一体の関係にある。二つの課題の関連に留意しつつ支援していくことが必要であり、サヘル・サハラ地域の復興・開発を進めていくには、地域的・大陸的なアプローチの採用、多様な開発パートナーとの連携が重要である。

「治安」分野の具体的な支援ニーズは、1)人材の能力強化、2)組織の制度的強化、3)施設・資機材の整備、4)国境管理能力の強化にある。また、「民生の安定」分野の具体的な支援ニーズは、1)経済成長による収入の増加と雇用改善、2)基礎的社会サービスへのアクセス改善と社会経済インフラの整備、3)開発のための公平な資源管理にある、と確認した。

参加者からは、「今後もサヘル・サハラ地域各国が直面する諸課題に関する協力関係を、今回のような意見交換を通じて強化していく必要性がある」という意見が出たほか、「治安なくして開発は進まず」「開発があってこそ治安が保たれる」という治安と開発の両輪の関係が強調された。

メディア・一般向け「公開イベント」は満席に

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聴衆からの質問に丁寧に答える講演者。左からJICAアフリカ部の宍戸健一参事役、飯村課長、ジャロ局長、ダンギワ氏

専門家会合への参加は関係者に限定されていたが、5月10日夜、メディアや一般向けの公開イベントが行われた。サヘル・サハラ地域の現地当局者から、現地情勢など最新の情報が聞ける貴重な機会とあって、会合に引き続き会場となったJICA市ヶ谷ビルの国際会議場は満席となるほど多数の参加者が集まった。

イベントではまず、JICAアフリカ部の飯村学アフリカ第四課長が、サヘル・サハラ地域でのJICAの取り組みをわかりやすく説明した。続いて、マリの外務・国際協力省のサンバラ・ジャロ局長がサヘル地域の治安情勢について、ニジェールの首相府で安全保障と持続的な農業開発のための3N(注2)イニシアティブを推進するアダム・ダンギワ氏が、同地域で市民が直面している課題について具体的に発表した。さらにアルジェリア、モロッコの両在京大使が、同地域の治安と民生の安定に関する北アフリカからの視点を紹介した。

参加者からマリ、ニジェールの講演者に対し、「大変な状況の中で苦労されていると思うが、日本も一緒に困難に立ち向かっていきたい。応援している」といったコメントが寄せられる場面もあった。

JICAは今回の専門家会合を起点として、サヘル・サハラ地域各国とのネットワーク構築、対話を継続し、多様な開発パートナーと協調しつつ、同地域への支援により積極的に取り組んでいく。

(注1)サハラ砂漠周縁部の地域。北アフリカの国々に加え、セネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャドなどが含まれる。気候変動の影響や食料安全保障上の問題を抱え、近年では政変やテロが国際社会の懸念となっている。
(注2)ニジェール人によるニジェール人のための食料生産。

【TICAD Vに向けて、アフリカの開発課題、事業の最新動向、援助の在り方についての分析など、アフリカをシリーズで特集しています】