BOPビジネスの普及、事業化推進と開発効果発現のために

−JICAのBOPビジネス支援事業のレビュー、開発効果評価手法などに関する調査結果を報告−

2013年10月15日

JICAは9月27日、JICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で、BOPビジネス(注1)に関心のある日本企業やNGOなどの関係者を対象に、「BOPビジネスの開発効果向上のための評価及びファイナンス手法に係るセミナー」を開催した。

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テレビ会議でつないだJICA国内機関のスタッフも含め、約200人が出席した

JICAは2010年から、BOPビジネスの実施を検討している日本企業を対象に、ビジネスモデルの開発や事業計画策定などを支援する「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」を行っている。過去5回の応募件数は計405件、採択件数は76件に上る。この調査制度を活用したのち、事業立上げに結びついた事例も増えてきている。

こうした中、JICAでは、調査制度の実施状況のレビューを通じ、日本企業によるBOPビジネスを成功に導く上での課題や、その解決策・支援策を検討するとともに、普及・実現を通じた開発課題解決への貢献度(開発効果)を高める枠組みを検討するために、「BOPビジネスの開発効果向上のための評価及びファイナンス手法に係る基礎調査」を実施した。

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JICA民間連携事業部の若林課長

この調査では、(1)これまで実施した協力準備調査のレビュー、(2)BOPビジネスが与える開発効果(社会性)を客観的に評価する手法や指標の検討・提案、(3)BOPビジネスの資金調達の課題に応えるためのファイナンス手法やJICA支援の在り方の検討・提案を実施。セミナーでは、その結果を報告し、参加者との質疑応答を行った。

開会のあいさつに立ったJICA民間連携事業部連携推進課の若林仁課長は、「BOPビジネス支援を通じ、企業が考えるBOPビジネスとJICAが期待するBOPビジネスの間にはまだギャップが存在することや、開発効果を発現させるためのシナリオやビジネスモデルのつくり方、採択案件から得られた教訓をどのように共有するかなど、いくつかの課題が認識された。今後も調査・分析を継続することで、BOPビジネスが、持続可能な形で社会的リターンと経済的リターンの双方を実現していく状態をつくっていきたい」と述べた。

事業化案件と見送り案件の分析

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あらた監査法人の磯貝マネージャー

セミナーの第1部では、調査委託先のあらた監査法人の磯貝友紀マネージャーが、協力準備調査が終了した18件について、事業の採算性、開発効果発現可能性の観点から、事業化に成功するためのポイント、事業化の障害となる要因などについて、先行事例との比較も踏まえた検証結果を説明した。

事業化の障害となる要因として、(1)技術が現地の環境や状況に対応していない、(2)BOP層でも購入可能な価格設定となっていない、(3)許認可等の取得規制などの要因が挙げられたほか、公益性が高く政府機関を相手にするビジネスはリードタイムが一層長くなるため、事業化に際しリスク要因となり得るとの分析結果が報告された。さらに、事業化には、マーケティング戦略、経営層のコミットメント、現地ネットワークやパートナーシップの構築が重要であることも指摘された。その中で、中小企業は、当てはまるリスク要因が多い場合、事業化が難しい傾向があることが指摘され、それを克服するための支援の在り方などが議論された。また、BOPビジネスの事業化を実現させると同時に開発効果の発現を確保する上で、これまで協力準備調査を利用した企業が行っている工夫なども紹介された。

開発効果評価手法の検討

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ARUN合同会社の功能代表

続く第2部では、開発途上国での社会的投資を行うARUN合同会社の功能(こうの)聡子代表が、BOPビジネスがもたらす開発効果の評価や測定手法について素案を発表した。

BOPビジネスによる開発効果を測定するための指標の素案作成に当たっては、世界の潮流に加え、これまで協力準備調査を行った企業へのインタビュー結果を踏まえ基本方針を策定したこと、開発効果測定手法の中で世界での普及度が高いIRIS(Impact Reporting and Investment Standards)(注2)を参考にした上で、BOPビジネスを行う際に着目すべき点、ビジネスがもたらす可能性がある開発効果を測る指標を設定する際の手引きや活用方法が報告された。

BOPビジネスに関するファイナンスアプローチ

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PwC UKのグラハム・ディレクター(左)と、あらた監査法人の山?アシニアアソシエイト

第3部では、BOPビジネスの事業化の際のファイナンス手法について調査結果が報告された。BOPビジネスは短期的な収益性が低く、資金調達が難しい。調査を担当したPwC UKのマーク・グラハム・ディレクターとあらた監査法人の山?ア英幸シニアアソシエイトは、BOPビジネスなど社会的課題解決型の事業に対するファイナンス手法について、既存の資金調達方法やインパクト・インベストメント(注3)などに関する世界の動向を解説した上で、欧米に比べると、日本におけるインパクト・インベストメントや社会的投資の動きはまだまだ規模が小さいが、大きな潜在性があると強調した。

また、BOPビジネスの資金調達に公的機関が果たすべき役割を、ファイナンス、側面支援、プラットフォーム整備の三つに分類し、JICAの役割として、協力準備調査終了案件に対する直接的なファイナンス支援、案件の実現性向上を図るための側面支援、関連情報の集約・発信のプラットフォーム形成という観点から提言を行った。

最後に、JICA民間連携事業部の池田則宏次長が閉会のあいさつに立ち、「JICAのBOPビジネス支援制度は一定の成果は出ているが、改善しなければならないこともたくさんあることがわかった。今回の調査結果については、最終報告書として取りまとめ公開したい」と述べ、セミナーを締めくくった。

(注1)約40億人いるといわれる年間所得3,000ドル以下の貧困層(BOP:Base of the Pyramid)が抱える課題を改善し得るビジネス。
(注2)2008年にロックフェラー財団などによって社会的パフォーマンス、環境的パフォーマンスを報告するための共通言語として開発され、現在マイクロファイナンス機関などによって幅広く利用されている指標。
(注3)社会的インパクトを生み出す事業に対する投資。