ビジネス機会のフロンティア、アフリカで成功するために

−「日本-アフリカビジネスフォーラム2014」開催−

2014年7月10日

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民間の貿易投資拡大によるアフリカ成長を目指して

日本企業のアフリカ誘致促進を目的とした「日本アフリカビジネスフォーラム2014」が、6月10、11日の2日間、都内のホテルで開催された。在京アフリカ外交団(ADC)とアフリカ開発銀行(AfDB)が主催したフォーラムには、日本とアフリカの財界人、政府や国際機関関係者ら延べ1,200人が参加。変貌を遂げて成長するアフリカビジネスの現状、課題、対応策などについて話し合った。

2013年6月に開催された「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」で、日本は「民間の貿易投資拡大によるアフリカの成長達成」を掲げたことから、今年1月、安倍晋三首相が日本の財界人を伴いアフリカ3ヵ国を歴訪。それを受けて開催された今回のフォーラムは、アフリカ全域、主要な分野・課題を網羅し、関係者が一堂に会した日本では初めてのアフリカ関連ビジネスイベントとなった。

JICAはフォーラムを共催し、加藤宏理事が、全体会議のパネリストとして登壇するとともに、関連する二つのサイドイベントを開催した。

成長し続けるアフリカ

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500人収容の会場は両日とも満席

フォーラムの期間中、アフリカのビジネス機会のポテンシャルの高さを表す複数の指標が、特にアフリカの参加者から、繰り返し提示された。1)今後5年間の経済成長率は、上位20ヵ国のうち12ヵ国がアフリカの国々であること、2)生産年齢層や中所得層の拡大など、人口ボーナスによる経済効果が2060年まで継続すること(ちなみにインドは2030年がピーク)、3)天然資源の賦(ふ)存が次々確認されて、既に始まっている資源開発への投資が引き続き期待できること、などである。

一方、この状況を楽観視しすぎてはいけないという意見も、アフリカの参加者から発信された。これは1960〜70年代のアフリカで、一次産品の価格高騰によって経済成長したものの、発展を持続できなかった苦い経験があるからだ。

しかし今回の成長は当時とは異なっている。1)外資が導入されていること、2)資源依存ではなく、政策による改革が進み、小売りや農業などの成長も原動力となっていること、3)同じ過ちを繰り返さないというアフリカ側の強い意志を裏付けるビジネス環境整備面での法制度整備が進んでいることなどから、楽観視はできないものの、大きなビジネスチャンスとしてとらえるべきだという強いメッセージが投げかけられた。

電力、資源、運輸・社会インフラなど多分野にビジネス機会

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加藤JICA理事

現在のアフリカの成長は、資源部門は4分の1にすぎず、消費部門や農業部門など多様な分野が原動力となっていることから、フォーラムではさまざまな分野のビジネス機会について討議された。

10日の全体会議「エネルギーとインフラ」の中での「道路・交通、都市・社会インフラ等」のパネルディスカッションにJICAの加藤理事が登壇した。加藤理事は「過去に日本のODAがアジアの発展に果たした役割と同様、アフリカでもJICAは民間企業による貿易投資を促進する触媒としての役割があり、促進を阻害する要因に対して包括的な対応を行っている」と説明した。

具体的には、アフリカ連合(AU)が標榜する地域統合による成長促進に応えるため、アフリカ大陸内で10件の開発マスタープランを作成する予定だ。国境を越える回廊を建設し、その回廊に付加価値をつけて流通の合理化を実現するOSBP(注1)の機能化推進を14ヵ所で実施することを紹介。また「今後の日本企業進出の水先案内人となる産業人材の育成(ABEイニシアティブ)(注2)や、アフリカ政府機関の中枢に日本人専門家を派遣して、ビジネス関連の法制度面での整備を促進するとともに、日本企業に対して現地のビジネス情報を提供するといった一連のメニューを用意している」と述べた。

アフリカ進出はパートナー探しが鍵

アフリカ側からは、1)アフリカに対するステレオタイプのリスク認識は改めるべきで、諸指標は確実に改善してきており、アフリカは多様で国ごとにも異なるため、実際のリスクを分析するべき、2)出遅れることも機会を失うという一つのリスク。リスク対応はビジネスの一部であり、コンサルタントなどのサービスを活用し、客観的なリスク評価を行った上で事業をモニタリングし、必要なリスク対応を講じていくことが肝要、3)アフリカ進出には現地事情に精通したビジネスパートナーとの連携が鍵となる、との指摘があった。また、持続的ビジネスに不可欠な人材育成の概念が組み込まれている日本企業の経営手法はアフリカにとって重要だ、など、日本企業に期待する意見も聞かれた。

対して日本政府関係者は、さまざまな段階でのリスクや資金需要が存在しているが、これらに対応する公的サービスもあることを説明。公的金融制度としては、途上国の資金需要の量的補完だけでなく、多様化する民間の活動を質的に補完し、民間資金の動員を促進する観点から、今後もあらゆる手段を開発していくとした。一例として、民間金融機関による日本企業へのリスクマネーや成長マネーの供給を促すため、国際協力銀行(JBIC)は7月から「劣後ローン」をメニューに加えることを発表した。

アフリカの社会課題解決にも貢献するビジネスモデル

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市川JICA理事

JICAは12日、サイドイベントとして国連開発計画(UNDP)、AfDBとともに「アフリカBOP・インクルーシブビジネスに関する特別セミナー」を国連大学(東京都渋谷区)で開催。民間企業からの参加者を中心に300人以上が来場した。

JICAの市川雅一理事が冒頭、主催者としてあいさつ。「BOP・インクルーシブビジネスは、途上国が抱えるさまざまな社会課題を、正確な分析に基づいて、ビジネスチャンスにするプロセスが重要で、かつ難しいところでもある」とした上で、「JICAは市場調査、ビジネスモデル作成、パイロット事業実施、そして事業計画作成支援の費用を提供し、事業化に向けた支援を通じて実績を上げている。今後とも日本政府、国際機関、ジェトロとも連携し、起業の各ステージにおける支援体制の強化に向けて努力したい」と述べた。

セミナーは、すでにアフリカで、自社の経済的利益を求めるだけでなく、社会便益面でも貢献する「BOP・インクルーシブビジネス」を展開している日本企業9社からの事例紹介と取り組みをインタビュー形式で進行。現地での起業に当たり、ニーズ把握のための分析や、自社製品・技術の現地事情に即した生かし方など示唆に富んだ発言があり、参加した企業が今後、具体的な指針を検討する上で有益なものとなった。

投資資金調達メニューを紹介

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資金調達方法の説明に熱心に耳を傾ける参加者

13日、JICAは「アフリカ向け官民連携投資セミナー」と題し、日本がAfDBと共同で提供する「アフリカの民間セクター開発のためのアフリカ開発銀行との共同イニシアチブ(EPSA)」資金調達メニューの活用促進のための説明会をJICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で開催。民間企業からの参加者を中心に約100人が来場した。

このセミナーは、TICAD Vで「民間主導の経済成長の促進」が日本とアフリカの共通の優先課題として確認されたこと、安倍首相が今年1月にアフリカを訪問した際、EPSAに提供する円借款を20億ドル(2012〜2017年)に倍増することを発表したことから開催された。

セミナーでは日本企業にプロジェクトの形成や実施に積極的に参加してもらうため、EPSAなどのスキームの仕組みを解説。具体的には、AfDBのインフラ投融資活動とプロジェクトファイナンスの審査プロセス、調達情報とビジネス機会の概観について説明。またJICAの海外投融資事業と民間開発向け技術協力についても話した。

行動するなら今

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会場のアフリカからの参加者

フォーラムの閉会に当たり、主催者のAfDBのザテ・ズグボ総合調整局長は「関連アクターが一堂に会したフォーラムを通じて、アフリカに関心を持つ日本企業がビジネスを展開していく上で、実務上の障壁となる課題の克服に必要なパートナーシップ構築のための具体的な道筋が見えてきたはず。今すぐ行動に移すべき」と呼びかけ、同様のフォーラムの定期的な開催を提案した。

日本とアフリカのビジネスを促進することを目的とした一連のビジネスフォーラムは、どの会場も満席となる盛況ぶりを見せた。アフリカが最後のフロンティアとして関心を集めている今、情報が必要とされていることは間違いない。

(注1)One Stop Border Post。税関の手続き共有化・業務効率化の流れの中で注目されている通関業務運営方式の一つ。
(注2)African Business Education for the Youth、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ)。TICAD Vの際に安倍首相が発表した人材育成プログラムで、日本の大学や大学院での教育に加えて、日本企業でのインターンシップの機会を提供するもの。