気候変動対策で島嶼国とのパートナーシップを強化

−「島嶼国向け気候変動政策対話」を実施−

2014年7月15日

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島嶼国21ヵ国と2機関の気候変動交渉担当者が集まった

日本政府とJICAは、7月2〜4日の3日間、「島嶼(しょ)国向け気候変動政策対話」を東京都内で開催した。太平洋地域、カリブ海地域、その他地域の21ヵ国と2地域機関から招へいした気候変動交渉担当者と、日本の政府、研究機関、NGO、国際機関、企業などの関係者70人以上が参加。島嶼国における気候変動対策の進ちょく状況や課題、日本による支援活動などについて意見を交わした。

「気候変動政策対話」は、2011年にアフリカ、2012年に島嶼国、2013年にアジアを対象として開催し、今回で4回目となる。

温室効果ガス排出削減に積極的に取り組む意向を示した島嶼国

初日は三つのセッションを開催。外務省、環境省、経済産業省、JICAが参加し、二国間クレジット制度(JCM)(注1)や、気候変動適応策(注2)に関する日本の途上国支援などの説明、招へい21ヵ国と2地域機関の気候変動対策への取り組みや、国際交渉における主要な課題などについて情報を共有し、意見を交換した。

セッション1では、各国が2015年12月に行われる「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」に先立って示すことになっている約束草案(Intended Nationally Determined Contributions)、COP21で合意されることになっている2020年以降の新たな国際枠組みにおける「適応」の位置付け、ロス・アンド・ダメージ(損失・被害)など、気候変動国際交渉における主要課題について、活発な意見交換が行われた。

島嶼国は国の規模が小さいため、世界全体では島嶼国が排出する温室効果ガスが占める割合は小さいが、多くの国が排出削減に積極的に取り組む意向を示した。この背景には、再生可能エネルギーの活用や省エネルギー対策などにより、温室効果ガス排出の主要因となっている輸入燃料を削減し、節約できる輸入資金を開発や適応策に回せるということがある。また、各国とも自然災害が頻繁に発生しているという現状認識から、適応策や低価格の災害保険の重要性について、賛同する声が多く寄せられた。

セッション2では、外務省、経済産業省、環境省が、日本政府が提唱する二国間クレジット制度(JCM)の概要を紹介した後、すでに日本政府とJCMに関する二国間合意を行っているモルディブとパラオが、JCMプロジェクトの実施状況について報告した。JCM二国間合意を締結していない国からも、JCMへの参加に対する高い関心が示された。

セッション3では、外務省が「攻めの地球温暖化外交戦略(ACE)」(注3)や2015年の国連防災世界会議の開催について説明した後、JICAが島嶼国への気候変動適応策の支援活動を紹介した。日本の適応策支援は会場から高い評価を受け、各国の気候変動適応策を推進する組織や制度の強化、地域間協力の推進などに対する、さらなるJICAの取り組みに期待の声が上がった。

気候変動対策に貢献する日本の技術を紹介

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スカイツリー地下の施設が担う地域冷暖房について聞く

翌日、JICAが招へいした各国・地域の気候変動交渉担当者は、気候変動対策に貢献する日本企業の先端的な技術やサービスに触れた。

午前中は企業のプレゼンテーションに耳を傾けた。日本原料株式会社(神奈川県川崎市)が移動式浄水装置、株式会社ブレスト(神奈川県平塚市)がプラスチック油化装置、株式会社駒井ハルテック(東京都台東区)が風力発電機、株式会社日立製作所(東京都千代田区)が海洋深層水利用システムや海水淡水化システムなどについて、技術や製品の概要と島嶼国を含む途上国での適用事例を紹介した。

午後は財団法人電力中央研究所(東京都千代田区)で津波の実験施設を視察するとともに、気候変動による影響の研究に関する講義を受け、株式会社前川製作所守谷工場(茨城県守谷市)では、省エネ型の冷凍機や食品加工機械の生産ラインを見学した。

最後に東京スカイツリー(東京都墨田区)に向かい、東京ソラマチなどの複合施設や周辺地域への熱供給を行う地域冷暖房設備を視察した。招へい者は企業のプレゼンテーションや視察現場に高い関心を示し、自国での導入を見据えて積極的に質問した。

日本と島嶼国の国際交渉における協力の方向性を討議

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JICAの支援方針を紹介する地球環境部気候変動対策室森尚樹室長(右)。左は佐藤一朗副室長

最終日は二つのセッションを開催。セッション4では、島嶼国の地域機関であるカリブ共同体気候変動センターと太平洋地域環境計画による気候変動対策分野の活動紹介に続き、気候変動枠組条約下の国際交渉における日本と島嶼国の協力の方向性について討議した。

討議には、招へい者と日本政府に加えて、日本のNGO、研究機関、民間企業や国際機関が参加。島嶼国で気候変動対策を進めていくに当たっては、地域単位での協力と、各国のニーズに合わせた二国間協力の両方が必要であること、現地の実情に合った適切な技術の採用が重要であることなどが挙がった。

最後にセッション5として、「国内における適切な緩和行動(NAMA)(注4)」を作成するワークショップを行った。招へい者は四つのグループに分かれて議論し、省エネルギーや再生可能エネルギーなどに関するNAMAを作成した後、グループごとに発表した。

今回の政策対話を通じ、各国が抱える課題や、気候変動対策に有効な技術や取り組み、島嶼国が日本に期待する支援などについて情報を共有し、意見を交換することができた。これを機に、島嶼国と日本のさらなる協力が進み、島嶼国の気候変動対策が一層進むことが期待される。

(注1)Joint Crediting Mechanism。気候変動対策に関する2020年以降のアプローチの一つとして日本政府が提唱する制度。2014年7月上旬現在で日本政府と11ヵ国がその実施について署名済み。
(注2)気候変動に対応するには、温室効果ガスの排出を抑える「緩和策」と、気候変動の影響を軽減するための「適応策」の二つの対策が必要とされている。
(注3)政府が2013年のCOP19に合わせて発表した、温室効果ガスの排出量を2050年までに世界全体で半減、先進国全体で80パーセント削減を目指すという目標を掲げ、その実現に向け日本が世界に貢献する攻めの地球温暖化外交を推進する政策。
(注4)Nationally Appropriate Mitigation Actions。開発途上国が、各国の個別事情を考慮した上で行う、適切な気候変動緩和行動。