ミャンマー全国とヤンゴン都市圏の交通マスタープランを発表

2014年8月13日

JICAは7月24日、「ミャンマー全国運輸交通」と「ヤンゴン都市圏交通」に関する二つのマスタープランの概要を発表するセミナーを、JICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で開催した。関連省庁をはじめ、金融機関や商社、メーカー、ゼネコン、コンサルタント会社などからミャンマーの開発に関係する170人以上の参加を得た。

持続的発展には交通ネットワークの整備が必須

ヤンゴンのショッピングセンター周辺。路上駐車がひどい

ミャンマーは人口約6,100万人の市場と豊富な天然資源を背景に、今後の経済発展が期待され、諸外国から高い関心が寄せられている。国家の均衡を保ちながら、持続的な発展を進めていく上で、今後10〜20年の間に、ミャンマー全国の交通ネットワークと、経済のけん引役であるヤンゴン都市圏の都市交通ネットワークを効果的に整備していくには、マスタープランという青写真は欠かせない。

JICAは2012年末から、「ミャンマー全国運輸交通マスタープラン」と「ヤンゴン都市圏交通マスタープラン」を作成するための調査を実施してきた。両マスタープラン案がまとまってきたことから、その概要を紹介するセミナーを開催した。

2030年までの「ミャンマー全国運輸交通マスタープラン」

列車はディーゼル式で電化の必要がある。車体の老朽化も進み、振動が激しい

「全国運輸交通マスタープラン」では、ミャンマー政府の意向を勘案し、年平均7.2パーセントの成長を開発目標として設定。交通量調査などを基に検討した結果、今後、国内の複数の回廊で交通容量(注1)が不足することが明らかになった。

年平均7.2パーセントの経済成長を続けると、2035年の経済規模は現在の5.4倍となる。この経済成長を実現するには、2014〜2030年の間に、航空、道路、鉄道、港湾、内陸水運のすべての分野の基幹交通インフラ(都市交通と地方交通を除く)に必要な投資額が約2兆6,700億円に上ると試算。2014〜2020年を基幹交通インフラの重点整備時期とし、6年間で1兆166億円程度の資金を投入する計画だ。この金額は同期間の全交通セクターへの投資の87パーセントであり、残りの13パーセント(1,534億円)は都市交通と地方交通への投資である。

これに対し、2020〜2030年には、よりバランスの取れた投資が求められる。3兆6,390億円の投資のうち、基幹交通インフラへの投資は45パーセント(1兆6,523億円)、都市交通と地方交通には55パーセント(2兆14億円)の配分を計画している。

さらにミャンマー全土の自然条件、災害発生条件に配慮し、開発すべき地域とすべきでない地域を区分した。そして、選択と集中の観点から、都市と地方のバランスを保ちつつ、国土の開発軸となる10の重要な回廊を定め、うち5回廊を優先回廊としている。

2035年に970万人の足となる「ヤンゴン都市圏都市交通マスタープラン」

都市内高速道路とBRTのイメージ図

「ヤンゴン都市圏交通マスタープラン」では、現在570万人のヤンゴン都市圏の人口は2035年には970万人となると予測。車両保有世帯率は12パーセントから32パーセントに上がり、交通需要(注2)は現在の1.8倍になると見込んでいる。近年の自動車輸入の規制緩和により、すでに部分的な混雑がしばしば発生している。

マスタープランは「人々と社会に必要な都市サービスへのモビリティーとアクセシビリティーを保証するため、安全性、快適性、公平性に優れる交通システムと持続可能で効率的な公共交通システムを構築する」という将来のビジョンを掲げた。この目標を達成するために、1)都市交通問題・課題についての社会的理解の促進、2)都市の成長と発展の効率的管理、3)魅力的な公共交通の開発と利用促進、4)効率的な交通コントロールと管理、5)効果的な交通需要管理(TDM: Transportation Demand Management)、6)交通空間と環境の総合開発、7)交通安全面の向上、8)交通セクター管理能力の強化、という八つの戦略を実施する必要がある。

170人以上が集まったセミナー会場

また、道路整備、公共交通整備、交通管理の強化という三本柱を設定し、短期(2018年まで)、中期(2018〜2025年)と長期(2025〜2035年)に分けて立案。短期計画では、少ない投入で既存道路ネットワークの利用効率を高めるため、交通管制システムの整備やバス高速輸送システム(BRT: Bus Rapid Transit)ネットワークの整備、駐車場の開発、既存鉄道の改良(2区間、計49.3キロメートル)などを提案した。

中期計画では幹線道路、内・外環状高速道路を含む都市高速道路の整備とともに、既存鉄道の改良(3区間、72.8キロメートル)と新規都市鉄道(南北線、21.8キロメートル)の建設を提案した。そして長期計画では、東西高速道路を含めた都市高速道路ネットワークの整備を拡張しながら、既存鉄道の電化や新規都市鉄道(東西線、32キロメートル)の建設を提案。合計244.9キロメートルのBRTネットワークの整備、高速道路を含めた755.5キロメートルの道路の拡幅または新設、175.9キロメートルの鉄道ネットワークの整備に対し、計1兆5,300億円の投入を提案した。

会場からは、プランの実現の見込み、ミャンマー側の管理能力、土地収得に関する課題、財源確保の見込みなどについての質問が挙がり、エネルギー開発、鉄道、港湾、物流分野などについてのセミナーの開催を期待する声も出た。

JICAは今後、ミャンマー政府や開発ドナー、民間セクターと協力し、マスタープランの実現に向けて活動を進めていく。


(注1)一定の時間に、ある一つの道路、鉄道路線、航空路、航海路が輸送できる最大の貨物量または旅客量。
(注2)都市交通の場合、都市全体の住民が1日に出掛ける回数の総数を指す。