アルジェリアで防災教育セミナーを開催——震災の経験と教訓が結ぶ神戸との絆

2014年11月28日

阪神・淡路大震災から約20年。教育現場では震災を知らない児童・生徒、教員が増えている。JICAは、2015年3月に宮城県仙台市で開かれる「第3回国連防災世界会議」を前に、2014年10月28日と29日に神戸市職員の松崎太亮氏を防災教育・危機管理の専門家としてアルジェリアに派遣し、首都アルジェの中学校や高校で児童・生徒を対象としたモデル授業を行い、教員や消防士など次世代を指導する立場の人たちを対象にしたセミナーを開催した。

大地震の体験を経て生まれた日本とアルジェリアのつながり

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日本の支援で再建され、今回の防災教育セミナーの会場となったドクター・アブデルマジッド・メジアンヌ−レ・バナニエ中学校

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もう一つの会場となったアイン・ベニアン・1600・ロジュモン高校。こちらも日本の支援で再建された

2003年5月、アルジェリアで大地震(ブーメルデス大地震)が発生した際、日本は国際緊急援助隊を派遣し、続いて2005年6月に復興支援のための円借款「教育セクター震災復興事業」によって、被災した小学校26校、中学校4校、高校6校の再建に協力した。

JICAは建物の再建だけではなく、アルジェリアに将来の地震災害に備える「防災」「減災」の取り組みを根づかせ、災害に強い学校を生み出すことが重要と考えた。そこで、円借款供与後も阪神・淡路大震災の際に神戸市の復興を担当した専門家による技術的助言、学校防災訓練、神戸の小学校とのビデオによる交流などブーメルデス県の小学校完成記念行事への参加、国民教育大臣(当時)の要請に基づく神戸市防災教育教材『幸せ運ぼう』のアルジェリア版(アラビア語・フランス語)の作成、神戸市の松崎氏を講師としたアルジェ県の中学校での防災教育モデル授業の実施などを通じて協力し、アルジェリアから高い評価を得ている。

1995年の阪神・淡路大震災の際には、アルジェリアから被災者の救援活動のための大型テント90張が贈られ、それらは「アルジェリア・テント」と呼ばれた。アルジェリア地震後の復興支援事業を通じて、JICAが神戸市役所や教育委員会のほか、小学校間の交流も橋渡ししたことにより、両国の市民レベルの友好関係が一層深まった。

今回のセミナーの開催には、2014年8月にアルジェリアで再び比較的大規模な地震が発生し、日本が持つ経験と教訓をさらに生かしていきたいとする機運がアルジェリアで高まったことが背景にある。このセミナーを通じて、日本の協力で再建された学校で、あらためて防災教育の重要性についての理解を共有できたことは、同じ地震被災国の協力として、非常に意義深いことであった。

アルジェリアとのさらなる友好関係強化に期待

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国民教育省のアイディ次官(左)、ベルジラリ・ホジャ同省インフラ・機材局長(右)と懇談する藤原駐アルジェリア日本大使(中央)

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藤原駐アルジェリア日本大使

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アルジェ西部教育局アブデルワハブ・ゲリル局長

アルジェリアで防災教育セミナーを開催するに当たって、初日の10月28日のモデル授業には、実施校であるドクター・アブデルマジッド・メジアンヌ−レ・バナニエ中学校に、アルジェリアの国民教育省ジャミラ・アイディ次官と、着任したばかりの藤原聖也駐アルジェリア日本大使が出席した。藤原大使は、アルジェリアとの外交関係樹立50周年を迎える年に、日本のODAによって再建された学校で今回の協力が実現したことについて、国民教育省の協力に対する謝意を述べるとともに、「今後も、アルジェリアと日本の絆がより深まることを心から願う」とあいさつした。

翌29日には、アイン・ベニアン・1600・ロジュモン高校でのモデル授業の冒頭、アルジェ西部教育局アブデルワハブ・ゲリル局長が、国民教育省では地震に備え防災意識の一層の向上を図る取り組みを行っており、その実現のためには学校での防災教育が非常に重要であること、阪神・淡路大震災からの復興過程で多くの経験と教訓を得た神戸からアルジェリアはもっと学ぶべきであることなど、セミナーの趣旨について述べた。

また、アルジェリアでは毎年、内務省の市民警護団(Protection Civil)が全国48県で防災啓発活動を行っており、今回のセミナーに併せて市民警護団が地震体験車(起震車)を使った防災教育を両校で実施。震災発生時の対応についてデモンストレーションを行った。

知識や技術だけでなくマインドの重要性を伝えたい

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講師の話を熱心に聴く子どもたち

モデル授業では、子どもたちにもわかりやすいように、1995年の阪神・淡路大震災と2003年のアルジェリア大地震の被害状況、復旧状況などを映像や写真を比較しながら説明し、「経験と教訓をいかに次世代に伝えていくか」「忘れないことがどれほど大切か」ということに焦点を絞って伝えた。生徒たちは真剣なまなざしで講師の松崎氏の言葉に聞き入り、「今、地震が起きたら、私たちはどうすればいいの?」など、熱心に質問を投げ掛けた。

モデル授業の後には、阪神・淡路大震災の復興のシンボル曲として日本で歌い継がれている「しあわせ運べるように」を日本語で練習し、最後には参加者全員で合唱した。アルジェリアの中学生たちが、ローマ字で書かれた日本語の歌詞の楽譜を見ながら熱心に練習する姿から、日本への親しみの心がうかがわれた。また高校生たちも事前に幾度か歌を練習していたようで、日本の生徒が歌う映像をバックに見事なコーラスを披露した。

ゲームを通して学校での危機管理を疑似体験

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セミナーの講師を務めた神戸市の松崎氏

両校では午後のプログラムとして、神戸市教育委員会が考案した教員向け学校危機管理ロール・プレイ「Risk Management Role Play for Teachers(震災後の二日間を30分間で体験するシミュレーションゲーム)」を行うワークショップ形式のセミナーを実施した。このワークショップでは、教員、消防士が、学校を想定したグループ内での情報共有の重要性や、錯綜する情報に対し協力して漏れなく冷静に対処することの難しさなどを体験。参加者からは、「日ごろは同僚の教員たちと協力し、議論することがあまりないので、貴重な経験になった」といった感想が聞かれた。

今回のセミナーの成果は、阪神・淡路大震災復興20年を迎える2015年1月に、JICA関西国際センターが兵庫県などと協力して開催するシンポジウムで、日本の経験と教訓が海外で活用されている事例として紹介するとともに、日本とアルジェリアの学校間交流の促進や学校現場に焦点を絞った新たな研修員受け入れ事業の検討を行うなど、今後の防災教育支援の強化につなげていく予定だ。