第49回アジア開発銀行年次総会のセミナー登壇

2016年5月2日

概要

会議名:第49回アジア開発銀行年次総会セミナー「Quality Employment and a Better Workplace(質の高い雇用とより良い労働環境)」
開催日:2016年5月2日(月)16:00〜17:30(現地時間)
主催:アジア開発銀行(ADB)
場所:ドイツ(フランクフルトメッセ)

主な参加者

  • ドイツ経済協力・開発省 大臣 ゲルト・ミュラー
  • 国際労働組合総連合 書記長 シャラン・バロウ
  • シーメンス リーダシップ&エクセレンス局グローバルヘッド ナンダーニ・リントン
  • チームリースサービス有限会社 代表 マニッシュ・サブハワール
  • JICA 理事 神崎康史
  • ADB 副総裁 デボラ・ストークス

背景・目的

5月2日、神崎理事はADB年次総会に参加するためドイツフランクフルトを訪問し、同総会公式セミナー「質の高い雇用とより良い労働環境」に登壇。同セミナーでは、技術革新、世界的なサプライチェーン展開による生産工程の細分化、貿易構造を含め、質の高い雇用に関係する要素について議論した。また経済の急速な変化や技術革新に対応する雇用者のニーズと、被雇用者の厚生のバランスを保つために、労働関連法や社会保障制度等の機能について議論し、アジア・太平洋地域において能力開発と社会保障システムが質の高い雇用の創出にいかに寄与するかを議論した。

内容

同セミナーにおいては、冒頭、ミュラー経済協力・開発大臣からの基調講演があった。ミュラー大臣は、グローバルバリューチェーンの全プロセスにおいて公正な雇用を保障することが重要であると言及。そのためには、社会基準・環境配慮基準を設定する必要があり、また政府や企業のみならず消費者も商品選択を通して責任を持つべきであると指摘した。

続くパネルディスカッションでは、質の高い雇用に関する現状と課題、民間企業や政府、労働組合の役割、技術革新が雇用環境に及ぼす影響とその対応、規制や法の支配の必要性と課題等について、議論を展開。特に、質の高い雇用や技術革新への対応のための教育や職業訓練について様々な意見が示された。

バロウ氏は、特にインフォーマルセクターにおいて雇用の質が大きく損なわれている点を問題提起。質の高い雇用のためには法の支配と透明性、そして各国のコミットメントが必要と主張。昨今の技術革新を踏まえ、雇用と教育の統合を通じ人材需給のミスマッチを解消すべきであるとし、政府による教育・訓練のみならず企業主導の継続的な教育が重要であるとの見解が示された。

サブハワール氏は、質の高い雇用の概念が国の発展段階等によって変わる可能性を指摘。フォーマル雇用を定義づける規制が、インフォーマル雇用からフォーマル雇用へ移行するための障壁であることに懸念を示すも、インドでのインフォーマル雇用の規模を例示しつつインフォーマルセクター自体を問題視することの非現実性を示唆した。また、投資リスクの観点から雇用主である企業が労働者の教育・訓練への投資に消極的である中、誰が教育・訓練の資金を提供するかが課題とした。

リントン氏は、質の高い雇用における課題は専門教育を受けた人材の不足であるとし、ドイツのデュアルシステム(注)を紹介。技術革新は、労働者数ではなくいくつかの業務を削減すると主張。技術革新が目覚ましい中、必要な対応は特に規制やニーズ等の変化の管理であり、そのためには政府、企業、労働組合のパートナーシップを強化すべきとした。

神崎理事は、質の高い雇用を達成するには、雇用における多様性と包摂性を重視することが必要であると指摘。特に、アジアにおいて非熟練技能者と女性や障害者等の社会的弱者が質の高い雇用にアクセスできていない現状を説明した。このような課題への対応として、多様性と包摂性に配慮した雇用・労働政策の策定・実施、産学連携により産業ニーズを反映させた職業訓練の機会拡充を提言した。

(注)企業での職場実習と職業訓練校における理論教育を並行して実施する教育システム。

関連リンク

【画像】

基調講演を行うミュラー経済協力・開発大臣

【画像】

質の高い雇用について見解を述べる神崎理事(左)。左から神崎理事、バロウ書記長、ストークス副総裁、サブハワール代表、リントングローバルヘッド。