「変容」を促す教育へ「グローバルエデュケーションモニタリングレポートシンポジウム2016−共生と学び合い−」開催

2017年3月31日

2017年3月22日に「グローバルエデュケーションモニタリングレポートシンポジウム2016−共生と学び合い−」を開催しました。
※JICA、教育協力NGOネットワーク(JNNE)、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)共催

2015年の国連サミットにて、「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs:Sustainable Development Goals)」が採択され、「すべての人にインクルーシブかつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」ことが教育における持続可能な開発目標(SDG4)として掲げられました。

SDG4達成に向けた進展は、ユネスコがこれまで発行してきた「Global Monitoring Report(GMR)」を「Global Education Monitoring Report(GEMR)」と改め報告されることとなり、その2016年版概要の日本語版がこの度完成しました。今回のシンポジウムはこの機会を捉え報告書の内容を共有するために開催し、当日は教育分野の研究者、学生をはじめ、民間企業・団体、コンサルタント会社、NGO/NPOなどの教育開発従事者や開発教育に携わる学校教員など、約120名が参加しました。

第1部 基調講演:SDG達成における教育の役割−SDG4概要と理論・実践事例−

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浜野隆 お茶の水女子大学教授

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永田佳之 聖心女子大学教授

基調講演では浜野隆・お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系 教授、永田佳之・聖心女子大学文学部教育学科 教授のお二方からお話を頂きました。
浜野教授からはGEMR 2016の概要の説明があり、全部で17あるSDGsの目標の中でも教育(SDG4)は他の目標の達成も下支えするものであること、SDGsは発展途上国のみならず先進国も取り組むべき課題であることが紹介されました。特に、SDG4では「学校へ行ったか」のみならず「何を学んだか」が問われ、「持続可能性」や「グローバル・シチズンシップ」等、学ぶ内容にも踏み込んだ目標が記載されている旨、紹介がありました。また、日本の教育課題として、学習意欲、自己肯定感、自己効力感や社会への参加意欲などが他国と比べて低いことに言及され、日本の教育のあり方にも再考を迫っているものであるとの指摘がなされました。

永田教授からはラオスおよびスリランカにおける「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」の取り組みが紹介されました。子どもたちが地域社会と共にゴミ問題などについて考え、教室内外で行動を起こしていくことで、子どものみならず大人、家庭、地域を巻き込んだ「変容」の好循環が生まれ、また現地の方々のみならず活動に携わる日本の学生にも「自分が生きていることを強く実感し、感謝の気持ちを持つようになった」といった「変容」が見られたようです。現在の「不確実性の時代」に求められているのは社会を維持するための教育よりも社会を変えるための教育であり、学習者を「変化を起こす主体」として捉えることの重要性が指摘されました。

第2部 パネルディスカッション:SDG4達成に向けた日本の貢献−共生と学び合いの観点より

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江崎千絵 JICA人間開発部基礎教育グループ課長

パネルディスカッションでは、以下の方々をパネリストに迎え、JICA人間開発部基礎教育グループ・江崎課長の進行で「途上国との関わりの中から日本の教育が学べることは?」というテーマで、各団体の活動紹介および議論が行われました。

・ACCU教育協力部 篠田真穂 プログラムオフィサー
・フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ) 中高生メンバー代表
(久保島結希さん(高校3年生)、坂井結香さん、伊藤澪里さん(中学3年生))
・埼玉県教育局県立学校部高校教育指導課 羽田邦弘 課長
・聖心女子大学文学部教育学科 永田佳之 教授

FTCJ中高生メンバーの発表では、それぞれがFTCJに参加した経緯や活動を始めてからの自分自身の変化についても紹介がなされました。活動を通じて「意見を相手に伝えるためにも考えを掘り下げるようになった」(坂井さん)、「様々な課題は相互に関連しているので幅広い分野の視点が必要だと知った」(久保島さん)、そして今後は「自分が支持すること、妥協できないことを主体的に考え、伝える力を身に付けたい」(坂井さん)、「せっかくの素晴らしい活動をより広く知ってもらう方法を考えたい」(伊藤さん)といった発表に、参加者からも「中高生の前向きなエネルギーを頼もしく思った」「中高生の意見が素晴らしく、『主体的な学び』のためには、社会課題を知って心が動いたときに行動に移す、少しでも周りに共有することがキーだと感じた」といった声が多く聞かれました。

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パネリストの方々

また、FTCJ中高生メンバーから同世代に対しては「身の周りの社会課題を知る機会を大切に、少しでも疑問に思ったことは掘り下げて自分の考えを持って、小さなことからでも恐れずにアクションに移してほしい」、大人に対しては「子どもが遠い国で起きていることに対し親近感を持つきっかけ作りと、子どものアクションへの応援・協力を」(伊藤さん)というメッセージも伝えられました。

議論の中で、埼玉県教育局・羽田課長、ACCU・篠田プログラムオフィサーからは、これからの教育関係者に求められる役割について、「AIでは出来ない、例えば答えのない問いへの立ち向かい方を考える場を作ることなどを通じ、生徒一人ひとりを伸ばしていく教育を実践すること」(羽田課長)、「教育関係者も学習者であり変容の担い手であることを意識し、まず自分自身が変容を恐れず変わっていくこと」(篠田プログラムオフィサー)というコメントがありました。議論の最後には、永田教授から「不確実なグローバル社会を生きるうえで、子どもたちに『自分は微力かもしれないけど無力ではない』というような、自己変容力や社会変容力といった力・態度を育む教育が必要」との総括がありました。

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参加者からも多様な質問・コメントが寄せられました

その後の質疑応答ではパネリストに対し参加者から様々な質問・コメントが寄せられ、パネリストからはそれまでの議論も踏まえ、「ガンジーも昔『自分が見たい、変えたい世界があればその世界に自分自身がなりなさい』と言っていたが、そうした変容をまず大人が実践し、また変わろうとしている若者を大人が守っていくことが大切」(永田教授)といったコメントが返されました。

パネルディスカッションの最後は江崎課長より「『変容』が今後の教育におけるキーワードとなると感じた。ラーナー(学習者)をアクター(変革者)に変えていくという役割を果たしていけるよう、JICAが行う教育協力においても意識していきたい。」という言葉で締めくくられました。

GEMRの2016年版概要の日本語版はこちらからダウンロード可能です。ぜひご一読、ご活用ください。