アジア13か国の水道事業幹部が持続可能な水道事業経営について討議−「第4回アジア地域上水道事業幹部フォーラム」開催−

2017年8月4日

JICAは、8月1〜4日、日本の近代水道発祥の地である神奈川県横浜市と共催で“Take action toward the next step”のテーマのもと、「第4回アジア地域上水道事業幹部フォーラム」(以下、本フォーラム)を開催した。本フォーラムにはアジア13ヵ国(バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、ミャンマー、ネパール、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、東ティモール、ベトナム)から招いた水道事業体や水道行政機関の幹部32名のほか、国内の自治体、関連機関、大学や民間企業等総勢約280名が参加した。

成功事例・教訓を学び合うプラットフォーム

近年アジア各国では急速な発展に伴う人口増加と都市化が進んでおり、併せて持続可能な開発目標(SDGs)の達成を踏まえ、給水人口を増やし、水質や給水時間などのサービス水準を引き続き向上させていく必要がある。しかしながら、政策や資金確保、組織体制、人材育成、経営管理等の面において、未だ課題を抱えている水道事業体は少なくない。水道事業の改善には水道事業体や監督官庁の幹部のリーダーシップや意識改革が重要であり、そのためには国を超えた域内の成功事例や教訓の共有、日本国内の関係者と参加国の水道事業体間のネットワーク強化を通じた共働が必要であることから、アジア各国で持続性のある水道事業経営のできる事業体を増やすことを目的に、JICAは2010年以来「アジア地域上水道事業幹部フォーラム」を開催してきた。

第1回は「悪循環から好循環へ」をテーマに2010年1月に横浜で、第2回は「対話と連携」をテーマに2011年10月に東京都内で開催。第3回は「水道事業の持続可能な経営」をテーマに2014年7月に横浜で開催され、「収入の確保」「メンテナンスと機材調達」「人材育成」「連携協力」「災害対策と水道事業の持続性」の5つのセッションを通じて、日本とアジア各国からの参加者がそれぞれの組織が行っている取組みを発表し、知見を学び合った。
またフォーラムを通じて構築されたネットワークは、終了後も活用されており、実際にフォーラムに参加した他国の組織を訪問し、より詳細に取り組みを学ぶといった水道事業体の活動も報告されている。本フォーラム開催に際しては、2017年1月にカンボジアで準備会合を開催し、フォーラム参加予定者との意見交換を通じて、プログラム内容を策定した。

アジア13か国と日本の水道関係者が一堂に会し、フォーラムが開幕

持続可能な事業経営を実現するために、取り組むべきこと

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グループディスカッションで議論を深める参加者

本フォーラム開会にあたり主催機関を代表して、柏崎誠 横浜市副市長と鈴木規子 JICA理事があいさつを行った。その後、横浜市水道局 山隈隆弘局長の「横浜市の近代水道130年の歴史と教訓」、カンボジア工業・手工芸省 エクソンチャン長官の「プノンペン水道公社(PPWSA)の成功から全国的な改善への取組みへ」、東京大学大学院工学系研究科 滝沢智教授の「日本とアジア水道事業の展望」をテーマにした基調講演の後、「水道サービスの普及と質の向上」「財源確保」「経営環境の能動的改善(ガバナンス)」の3つのセッションで事例発表、グループディスカッション、全体討論が行われた。グループディスカッションでは、事例発表で共有された各国の取り組みを踏まえて、それぞれのグループにおいてより深い議論が行われた。「経営環境の能動的改善(ガバナンス)」のグループディスカッションの参加者からは、「組織ガナバンスの強化のためには、リーダーシップが重要であるだけでなく、組織を構成する職員一人ひとりに組織を動かすという自覚が生まれることが重要。そのためには、組織や個人のパフォーマンスを、定量的な指標等を用いて視覚化し、適切に評価することが必要」との意見が挙がった。

未来に向けた連携と協力の重要性

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カンボジア工業・手工芸省のエクソンチャン長官が横浜フォーラム宣言2017を読み上げ採択

総括セッションでは、1)SDGsゴール6を達成するためには、長期的で具体的な政策や計画が必要であるとともに、人権の観点から全ての低所得世帯に対して水道サービスを提供するための努力が求められること、2)持続的で安定した水道の供給には、「水安全計画」の策定、実施が重要であること、3)持続可能な経営を目指すためには適切な水道料金を徴収することが重要であること、4)財源を確保するためには、組織の現状を分析し、必要な投資計画を示して外部から資金調達をするだけでなく、エネルギー消費削減、無収水削減、維持管理の効率化等を通じたコスト削減が必要であること、5)グッドガバナンスは透明性や説明責任を確保する上で重要であり、業務指標(PI)の活用が効果的であること、等が提言された。

その後、参加者は本フォーラムで得た知見・気づきを通じて共に事業を改善し、連携・協力を強化していくことの重要性を確認し、「横浜フォーラム宣言2017」を採択した。最後に山内邦裕 JICA地球環境部長が閉会の挨拶を行い、フォーラムは閉幕した。

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山梨県道志水源林にて、横浜市水道局職員の説明に耳を傾けるアジアからの参加者

本フォーラム期間中には、横浜水ビジネス協議会の会員企業による展示も行われ、参加者に対して会社案内や製品紹介などが行われた他、アジアからの参加者は横浜市が管理する道志水源林や青山水源事務所を視察し、日本の技術や経験についての認識を深めた。
今後もJICAはアジアの水道事業の経営改善に向けた継続的な支援を行っていく。