「SDGsは社会的公正や環境を守る支え」コロンビア大学ジェフリー・サックス教授、大学生と白熱教室で議論

2017年12月27日

11月29日、JICAは上智大学と共催で「ジェフリー・サックス教授と語るSDGs白熱教室」を開催しました。会場となった上智大学の教室に集まったのは、大学生・大学院生(留学生含む)など約300名に加え、民間企業、研究機関、メディアなど計400名。上智大学曄道学長の冒頭挨拶、JICA北岡理事長の国際情勢に関する講義に続き、「持続可能な社会の実現に向けて若者ができること」のテーマで、サックス教授の特別講義及び参加者との議論:SDGs白熱教室が行われました。

講義の中でサックス教授は、明治維新時の日本の岩倉具視使節団を例に挙げ、他者から謙虚に学ぶことの大切さを繰り返し強調。「持続可能な開発目標についてぜひ勉強して学んでほしい」と参加者に強く語りかけました。第一線で活躍される教授ならではの世界に対する危機感も伝わり、白熱した授業となりました。

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会場に集まった学生等とサックス教授

サックス教授が伝えたかった、SDGsに込めた意義

サックス教授は世界的な経済学者。ベストセラー「貧困の終焉」の著者で、国連事務総長のSDGs分野での特別顧問などを務められています。講義ではまず、「アメリカでは、年々、企業の発言力が強くなりすぎており、政府や政治家もそれを抑えられないでいる。富裕層の中では自身がより裕福になることが一番大事と考える人が増え、例えば、ハリケーンや気候変動の影響を受け、家を追われ環境悪化に苦しんでいる地域・人々に対して『たまたまそうだったのでは?自分たちには関係ないよ』と発言する人もいる。これは非常に残念で危険な考え。」と述べました。注)括弧内はサックス教授の発言を要約。以下同様。

続けて、SDGsの意義や狙いについて「我々の社会で何が大切か、包括的な見方を示してくれるもの(politics of common good)である。」、「社会に目標がなければ、未来に大きな不安を感じたり、権力のみ追い続ける社会になったりしてしまう。しかし、社会的な公正や自然環境を壊さないなどの共通の目標をもつことで、世の中を安全で公平な社会に導くことができる、そうしていかなければならない。」とお話されました。

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SDGsについて特別講義を行う米コロンビア大学、ジェフリー・サックス教授。

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会場に集まったのは大学生・大学院生を始め400人程度。応募開始2週間以内で満席となった。

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熱心に耳を傾ける参加した大学生たち。日本人だけでなく海外からの留学生の参加も目立った。

「援助は必要か?」学生とサックス教授による議論

今回のセミナーの目玉は会場に集まった参加者とサックス教授との白熱教室です。モデレータを務めた上智大学春原剛特任教授の進行で、サックス教授の講義を踏まえて、次のような質問が会場に投げかけられました。

第1問「アメリカ・ファーストのような国益や個人の利益を追求する自国第一主義は今後も広がると思うか?」これについて、参加者の6割が同意。4割は協調主義が残ると主張。サックス教授は「皆さん大変現実的ですね。ただ、自分たちのことだけを考えればいいという姿勢は非常に危険な考え。例えば、貿易に有利になるような食物の栽培を優先しすぎると、水資源や生物多様性を破壊する行動をとりかねない。」とコメントしました。

第2問「日本は政府開発援助(ODA)を減らすべきか?」については、ほとんどの参加者が「減らすべきでない」と回答。これについて、貧困国にとってODAは極めて重要とサックス教授は主張し、成功例として感染症のためのグローバルファンドやマラリア防止に効果のある蚊帳「オリセットネット」(ゴール3)、今後力を入れたい分野として教育(ゴール4)を挙げました。最貧国では少しのお金で、水をきれいにし、育児が十分にでき、子どもは学校で教育を受けられると紹介しました。第3問「グローバリゼーションは、今の日本に生きる自分にとってメリットがあるか?」に対しては、会場の大半が「グローバリゼーションは基本的に良い事。自分の人生は豊かになった」と回答。サックス教授は「私自身もコーヒーが大好き。これも輸入されたもの。グローバリゼーションや貿易によって私たち消費者は、より豊かな人生、生活を手にすることができた」と紹介しました。一方で、グローバリゼーションは低コスト商品の製造拠点が途上国に移るなど貿易を複雑にし、結果的に勝ち組・負け組といった格差も生んだと指摘し、「対応策として、所得の再分配、豊かな人から貧しい人にお金が流れる仕組み作り、そのための行政や税務に携わる人たちのスキルアップやトレーニングが必要」と提案しました。

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参加者はスマートフォンを使って質問に答える。会場のスクリーンには即座に投票結果が表示される仕組み。

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参加した東京大学博士課程の留学生。自由市場経済の在り方についてサックス教授へ質問。

参加者からの声

事後アンケートでは、80%以上の参加者がセミナーに満足と回答し、「教授の国際協力に対する情熱、研究者としての立場から語る姿に衝撃を受けた」や「教授とオーディエンスの距離が近く、講演というより授業という形式が新鮮だった」などが理由でした。

他にも、「持続可能な社会の実現に向けて、自分に何ができると感じたかを教えてください」という質問には半数以上が回答し、「就職活動で企業研究するにあたり、それぞれの企業がどのような環境問題に取り組んでいるのか、調べながら企業選びをしてみようと思った」と答えた学生や、「自分は環境経済学者だが、学生に、乗り越えるべき持続可能な社会の実現の障壁について、辛抱強く伝えていきたい」という感想もありました。

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事前アンケートで、SDG 17ゴールのうち特に関心があるゴールを参加者に選択してもらった。多かったのは、ゴール1(貧困撲滅)、ゴール4(質の高い教育)など。

(JICA担当部署より)今回の白熱教室は、若者に世界に目を向けて欲しい、世界の未来や自身のできることについて議論をして欲しいという狙いで開催しました。サックス教授はSDGsの策定を含む世界の開発課題に造詣が深い方で、まさにうってつけの方でした。SDGs白熱教室ではいくつか議論が分かれそうな質問を設定しましたが、その他にも私たちの未来にかかわる論点は数多くあるのだと、改めて実感しています。今回の講義・議論は下記リンク先JICA研究所HPで動画にて掲載しています。今回参加できなかった方々もこれをご覧頂き、高校生や大学生、若い世代にとっての明るい未来を創りだすために、みなさん自身が議論し、世界を変えていくアクションを起こしていくきっかけになることを期待しています。