2018年タイ・マヒドン王子記念賞国際会議(PMAC2018)

2018年2月3日

会議概要

2018年1月28日~2月3日、タイ・バンコクでタイ・マヒドン王子記念賞国際会議(PMAC2018)が開催されました。マヒドン王子(1891-1929)は、「タイの医療の父」と呼ばれ、タイに近代医療的医療を導入し、医療・保健の分野で大きな功績を残した人物であり、その生誕100周年にあたる1992年から、医学、国際保健の分野で貢献した個人・組織を顕彰するマヒドン王子記念賞の授与が行われています。2007年からは保健医療分野のリーダーと関係者との間で国際保健の重要な課題を議論するための国際会議を、マヒドン王子記念賞授賞式に合わせて毎年1月に開催しています。

本会議は2007年の開始以来、グローバルヘルスの潮流を形成する重要な会議として認知されており、例年、タイ政府・マヒドン王子記念財団、世界保健機関、世界銀行、JICA、米国国際開発庁、ロックフェラー財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、英王立国際問題研究所等が共催しています。JICAは人間の安全保障やUHC等の推進、パートナーシップの強化、事業成果の発信と日本の経験共有を図るため、2011年に共催者に加わり、会議の企画、登壇、成果文書の策定に参画しています。2018年の本会議には、シリントーン王女、WHOテドロス・アダノム事務局長、グローバル・ファンド次期事務局長ピーター・サンズ氏ら要人をはじめ、各国の政府関係者、学識者をはじめ、研究機関、民間財団、国際機関、ドナー機関、NGOs、市民団体の代表者等、85ヵ国から1,263人が参加(うち日本は47名)しました。

新興感染症に立ち向かうための"One Health"アプローチの推進

1億人の死者を出したスペイン風邪の流行からちょうど100年後となる本年の会合のテーマは「世界を新興感染症の脅威から守る(Making the World Safe from the Threats of Emerging Infectious Diseases)」。20世紀以後の新興感染症の多くが動物由来或いは薬剤耐性病原体を原因とすることから、"One Health"(注1)アプローチのもと分野横断的に人、動物、環境衛生、気候変動に関する専門的な議論、経験及び知見の共有等を促進、グローバルな人獣共通感染症への戦略的な取組を推進することが本会議の目的。新興感染症の脅威から世界を守るための"グローバルヘルス・セキュリティー"を国家レベル、コミュニティーレベルから実現するため、それぞれの専門性を持つ多様なセクターの関係者との責任あるパートナーシップの必要性が再確認されました。

(注1)動物から人へ、人から動物へ伝播可能な感染症(人獣共通感染症)は、全ての感染症のうち約半数を占めており、また、薬剤耐性菌による感染症がヒト、動物において拡大していることは世界的な脅威となっています。こうした分野横断的な課題に対し、医療、獣医療、環境衛生に関わる者が連携して取り組むアプローチ。

JICAの活動と経験の共有

リーダーシップに関する全体会合"Leadership Needed for Managing Emerging Infectious Diseases of the 21st Century"に、JICA戸田上級審議役が登壇し、「人間の安全保障(注2)」とユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)(注3)、日本の経験紹介を紹介しつつ、新興感染症対策における脆弱層への焦点化、保健セクターを超えた対策、信頼関係に基づいた平時の対応の重要性を提起しました。JICAからの積極的な提案により、本件会合の成果文書(注4)において、今回初めて、「人間の安全保障」の理念とこれに対する取り組みの成果の重要性が明記されました。

JICAは、また28の公開イベントのうち7つのイベントに参画しました。新興感染症に関する国際研究のサイドイベントでは、5カ国(ベトナム、インドネシア、ラオス、タイ、ザンビア)で展開中の研究事業について、日本とカウンターパート国の研究者等の発表があり、共有の課題について議論したほか、タイ国政府機関等とUHCに関するサイドイベントを開催し、実施中のタイとの技術協力プロジェクト「グローバルヘルスとユニバーサルヘルスカバレッジのためのパートナーシッププロジェクト」と日本の経験、知見を参加者と共有しました。

本会議の成果文書にも盛り込まれ新興感染症対策に関する新たな考え方として、従来の人間(Human Health)と動物(Animal Health)に加え、環境・気候(Environment/Climate)等を取り込んだ「Planetary Health」の概念が興りつつあり、JICAも今後の感染症対策活動に際し、この考え方に注視していく方針です。

(注2)「ひとりひとりの人間を中心に据えて、脅威にさらされ得る、あるいは現に脅威に下にある個人及び地域社会の保護と能力強化を通じ、各人が尊厳ある生命を全うできるような社会づくりを目指す」考え方。
(注3)すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指す。
(注4)成果文書「Bangkok Statement」には新興感染症は人間の安全保障上の脅威であり、かつアクションが必要との考えが盛り込まれ、11の行動のためのグローバルビジョンが確認された。

関連リンク