「世界一汚い川の水質改善に日本の技術を」本邦企業の排水処理技術紹介セミナーをインドネシアで開催

2018年3月27日

3月27日、河川の水質改善というテーマで、インドネシアの政府関係者や民間工場の関係者に対して、日本企業の持つ排水処理技術を紹介するセミナーを開催しました。インドネシアの西ジャワ州を流れるチタルム川という川は、水質汚染が深刻化しており、対策が急務となっています。この川の水質改善に係る協力が日本政府に要請されたこともあり、流域の工場や自治体関係者などを主な対象者としてセミナーを開催しました。

世界一汚い川と、対策に乗り出した政府

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汚染の深刻なチタルム川

インドネシアの西ジャワ州を流れるチタルム川は、約2,700万人の生活を支える貴重な水源であり、同州のみならず、首都ジャカルタの多くの人々にも水を供給しています。このチタルム川の水質汚染が現在深刻化してきており、一部では「世界一汚い川」という評価をされてしまうなど、大きな社会問題となっています。特に流域の工場からの排水が汚染の原因のひとつとされており、排水基準を守っている工場が少ないことが、長年問題視されていました。このような状況を受けて、ジョコ・ウィドド大統領はこの川の抜本的浄化に7年かけて取り組む構えであり、日本政府に対しても支援が要請されています。これに応えて日本政府としてもいくつかの取り組みを通じて支援をしていく方針であり、その中のひとつとして、インドネシアの海事調整大臣府と共催という形を取り、今回の技術紹介セミナーを開催するに至りました。

関係者の関心高い、チタルム川の水質問題

今回のセミナーに集まったのは、共催相手である海事調整大臣府をはじめ、環境林業省やチタルム川流域自治体の環境局、およびチタルム川流域の工場関係者など、合計約160名に上りました。プレゼンターとして登壇した日系企業6社の関係者や日本大使館、JICAの関係者を除くと殆どがインドネシア側の参加者であり、それだけチタルム川の汚染問題への関心が高いことが伺えました。本セミナーの主目的は、日本の経験や技術をインドネシア側に紹介し、チタルム川の水質改善に向けた取り組みに生かしてもらうことであり、さらにその中で日本企業の技術の採用を検討してもらうことであったため、排水処理に直接の責任を負う工場関係者、および排水規制の管理を担う行政関係者が多く参加してもらったことは、非常に有意義であったと言えます。また、日本での過去の事例として紹介された、富山県のイタイイタイ病の問題や、隅田川や多摩川の汚染問題に関しては、それらに対する日本での具体的な取り組みについて行政関係者からの質問が積極的に上がったほか、日本企業からの技術プレゼンに対する質問では、インドネシア側の工場関係者から、具体的な処理性能などに踏み込んだ質問が上がり、インドネシア側としてもこのチタルム川の問題を、立場が異なっても真剣に捉えて、アクションを取る必要性を感じていることが伺えました。

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満員になった会場

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フロアの積極的な参加

適正な技術と、適切な仕組みが必要

日系企業6社の技術プレゼンテーションの中で共通していたのは、自社の処理技術の強みについては積極的にアピールしていたものの、それぞれの技術で出来ること、出来ないことについて、きちんと説明をされていたということでした。とにかく自社の製品を活用してもらえれば良いという無責任な説明ではなく、フロアからの質問に対しても、「そのような水質であれば、わが社のシステムではなく、別の処理方法が必要です」といったように、排水の状況に応じて、適正な技術を、場合によっては他社技術とも組み合わせて、導入することが必要であるということを説いていました。特に工場排水は汚染の度合いが激しかったり、様々な汚染物質が複雑に混ざり合っていたりするため、個々の工場の状況に応じた、適正な技術の導入が必要だということが、共通するメッセージとして打ち出されました。また、実際に各工場が排水処理を適切に行うようになるためには、コストをかけてルールを遵守した処理を行う企業が、損をしないような仕組みも重要となります。本セミナーの中では、このような仕組みづくりの重要性についても、JICAとして言及しました。

今回のセミナーでは、インドネシア側の関心が高まっているタイミングをとらえて、排水処理技術を有する本邦企業と、それを必要とする現地企業を引き合わせることができたという点においても意義が高く、今後それら企業間でのビジネスにも発展する可能性が期待できます。様々なアクターが、政府間、民間ベースで協力しながら、チタルム川の水質改善という一つの大きなゴールに向かって進んでいくことを、JICAとしても支援していきます。

参考資料