2018年4月17日
セミナー名:「人道と開発のNEXUS(連携)」強化に向けて -ウガンダ難民受入コミュニティのニーズ調査を踏まえて-
開催日:2018年4月17日(火)
主催:JICA社会基盤・平和構築部平和構築・復興支援室
場所:JICA本部
主な登壇者:
一宮尚美 株式会社 片平エンジニアリング・インターナショナル 開発業務本部環境社会開発室 部長
安西尚子 株式会社 パデコ 経済/社会開発部 プリンシパル・コンサルタント
坂根宏治 JICA社会基盤・平和構築部平和構築・復興支援室長
小向絵理 JICA国際協力専門員
参加者:
外務省、国際機関、NGO、大学、マスコミ、JICA関係者等
住むところを追われた難民や国内避難民は第2次世界大戦以降全世界で最多の6560万人(2016年時点)にのぼり、滞在期間の長期化や受入コミュニティに深刻な影響を及ぼしています。この問題に対処すべく、2016年に「世界人道サミット」や「難民と移民に関する国連サミット」が開催され、「人道と開発のNEXUS(連携)」の強化が提唱されました。
2016年7月の南スーダン国内での武力衝突を受け、多くの難民がウガンダへ流入しています。ウガンダでは、2018年2月時点で、100万人近くの南スーダン難民を筆頭に、世界最大規模の(現時点で140万人)の難民を周辺国から受け入れています。難民に移動の自由や土地提供を認め、また水や教育等の基本サービスを提供するなどの寛容な政策を行ったため、大規模かつ長期化した難民の存在が、ホストコミュニティに大きな負担を強いる結果となっています。JICAはこの問題に対処すべく、2017年7月より「難民受入コミュニティの現状及びニーズに係る情報収集・確認調査」を実施。本調査を通じて、難民受入地域の現場では「人道と開発の連携」が容易でないことが判明しました。
セミナーでは、この点に注目し、今後の対応策につき出席者と共に意見交換を行うことを目的に、4月17日、JICA本部にて、セミナー「『人道と開発のNEXUS(連携)』強化に向けて-ウガンダ難民受入コミュニティのニーズ調査を踏まえて-」を開催しました。
セミナーでは、まず小向国際協力専門員より、調査の狙いと意義、そして同調査がウガンダで行われた難民連帯サミットの翌月に開始したことなど、タイムリーかつ包括的にアプローチしたことを説明しました。続いて、調査を実施した一宮総括(片平エンジニアリング・インターナショナル)と安西副総括(パデコ)が調査結果について発表しました。人道機関等が事前に作成すると考えられていた基礎データが存在せず、調査に苦労したことや、GPSを使用して難民居住区をウガンダの行政区分と重ねた地図を作成したことが現地政府や国際機関、他ドナーに非常に高く評価されたこと等を説明しました。
坂根平和構築・復興支援室長より、「人道」と「開発」の双方の関係者がそれぞれ置かれている状況や立場を理解することが重要、また受入国政府との対話や、ホストコミュニティとの共存が重要との旨を説明するとともに、「人道」と「開発」は、システム、プライオリティ、マインドセットなどの点で違いが大きく、双方の立ち位置を理解することが重要、また受入国政府との対話や、ホストコミュニティとの共存が重要などの問題提起を行いました。JICAでは係る観点から難民や紛争を発生しない国づくりをサポートする平和構築事業を行っていることを紹介し、今後の課題として、ウガンダを成功モデルにするべく事業を推進するとともに、ウガンダの成功事例を他国へ横展開することが必要、国際会議等でも発信し、現場レベルで実行力のある改革を進める必要があることを説明しました。
ディスカッションでは、外務省や国際機関、NGO等からの出席者から「人道と開発の連携」に関して「本成果を国際社会に発信していくべき」、「人道と開発の異文化理解が重要で、今後もJICAと連携を強化していきたい」等のコメントがありました。一方で、現場での調整の難しさに言及があった他、適切な支援のためのデータ分析の重要性、またTICAD等の場を活かしたアフリカでの日本のリーダーシップへの期待が述べられました。さらには、難民支援に対しては、受入国は自国への開発支援を減らさず難民支援のための追加的な資金を望む傾向がある、また国内の状況によっては、データの開示に後ろ向きになる可能性がある等の活発な意見交換がなされました。
クロージングでは、安達社会基盤・平和構築部長より、人道と開発のNEXUSは、緒方貞子氏の理事長就任以来、JICA内部でも取り組んできた課題だが、現場での具体的な取り組みを積み重ねることが重要で、まだ十分ではない、今後も皆さんと取り組んでいきたい、との総括を行いました。
セミナーへの登壇者。写真左から、一宮総括(株式会社 片平エンジニアリング・インターナショナル)、小向JICA国際協力専門員、中川JICA平和構築・復興支援室 副室長、坂根JICA平和構築・復興支援室長
ディスカッションの様子
セミナーの様子
安達JICA社会基盤・平和構築部長によるクロージング