第51回アジア開発銀行年次総会セミナー登壇

2018年5月3日

概要

会議名:第51回アジア開発銀行年次総会Financing Partnersフォーラム「Megatrends in Asia - Where Collective Development Impact Will be Vital(アジアのメガトレンド:集合的な開発効果が不可欠な地域)」
開催日:2018年5月3日 13:30-15:30(現地時間)
主催:アジア開発銀行(ADB)
場所:フィリピン(マニラ)

主な参加者

主な登壇者

【開催挨拶】
ヂワーカー グプタ:ADB副総裁(民間セクターと協調融資事業担当)

【基調講演】
江島 真也:JICA理事

【パネル討論会】
アンドレアス クラーセン:オッフェンベルグ大学貿易・革新研究所所長
ラスキンハ デイビッド:インド輸出入銀行取締役
ドゥンカン オーバーフィールド:英国国際開発省アジア担当副部長

【閉会挨拶】
プレウグスチャット カイ:ADB協調融資事業室長

背景・目的

5月3日、江島理事はADB年次総会に参加するため、フィリピン・マニラを訪問し、Financing Partnersフォーラムで「Megatrends in Asia- Where Collective Development Impact Will be Vital」と題した基調講演を行った。
引き続いてパネリストらが、1)企業の投資に関して変化するプライオリティ、2)地域の貿易や連結性の重要性、3)島嶼国に代表される見過ごされがちな脆弱性の問題につき議論を行った。

内容

冒頭の江島理事の基調講演では、日本の推進する質の高いインフラに関連し、アジア域内の質の高い成長と普遍的価値の共有にODAが果たす役割について、包摂性・持続可能性・強靭性の3要素とともに、その具体的取組事例も含めて紹介した。また、日本が資金だけでなく技術移転や人材育成を支援していることや、ASEAN経済共同体(AEC)の支援、アジアの都市問題への支援について触れた他、普遍的価値の共有のために若手行政官の育成等の人材育成を支援していることに言及した。

その後のパネルディスカッションにおいては、1)企業の投資に関して変化するプライオリティ、2)地域の貿易や連結性の重要性、3)島嶼国に代表される見過ごされがちな脆弱性の問題、の各テーマについて議論された。

「企業の投資に関して変化するプライオリティ」に関しては、企業にとって、アジア地域は経済・社会の成長や都市化の進行が継続していることから引き続き投資先として魅力的であることが議論された。特にインフラ投資が持続的なバランスのとれた成長のために重要であり、長期資産を預かる年金の運用先としても期間の長いインフラ投資が魅力的であり民間資金の活用のチャンネルとして有効であると指摘された。
他方、民間企業側からは、完工リスクのあるグリーンフィールド案件には手を出しにくいことなどから、バランスのとれた包括的な成長の観点からは、公的開発金融機関との連携による補完が重要との指摘がなされた。

「地域の貿易や連結性の重要性」については、まず一部の保護主義的な動きを踏まえ、自由貿易に対する信認やコンセンサスが消滅しつつあることへの指摘があった上で、長期的で経済を生態系全体として見る視点から戦略の重要性を強調する声が相次いだ。
また、地域貿易や連結性の強化がもたらす、(特に貧困層における)雇用拡大、女性の起業促進の側面の重要性も強調された。技術の進歩により物理的な連結性の壁が解消され、貿易・雇用促進がもたらされる例として、ネパールにおけるディズニーのアニメーション製作の例などが紹介された。

「島嶼国に代表される見過ごされがちな脆弱性の問題」の観点からは、島嶼部の脆弱性の克服におけるADBのようなマルチの公的金融機関が果たす役割は依然大きいこと、特に災害発生時にすぐに活用できるスタンドバイ・クレジットの有効性が指摘された。

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基調講演を行う江島理事

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パネルディスカッションの様子

関連リンク