2018年6月22日
西アフリカ・コートジボワール。域内の経済成長のハブ、そして過去の内戦の傷跡が残る国でもあります。
JICAは、同国の紛争が終結して間もないころから支援を再開。分断された住民の統合を図り、行政と住民の関係再構築を目指した「大アビジャン圏社会的統合促進のためのコミュニティ強化プロジェクト(略称:COSAY)」を進めてきました。そしてその成果をしっかり定着させ、持続的なものとしていくため、このほどCOSAYフェーズ2を開始。2018年6月22日(金)には、プロジェクトの紹介とともに、社会統合について多様な関係者の間で意見交換をすることを目的としたフォーラムが開催されました。
豪雨の中、100人を超える参集者がありました。
10余年にわたる内戦の末に発生した、2010年のいわゆる「大統領選挙後危機」。二人の大統領が当選を宣言すると、政治危機がやがて内戦に発展。とりわけ同国最大都市のアビジャン市内の2つのコミューン、アボボとヨプゴンでは、兵士間での交戦、破壊・略奪とあわせ、住民も引き裂かれて紛争に巻き込まれることとなりました。
内戦終了後7年を経た今なお、住民間の猜疑心、行政への不信感、社会参画への低い意識などが色濃く残り、住民間、住民と行政との間の社会的再統合が、いまだに大きな課題として残っています。
JICAの社会統合プロジェクトは、この2つのコミューンを対象に実施しています。フェーズ1では、紛争直後の緊急プロジェクトとして、基礎的社会インフラの修復・整備に、異なる社会グループの住民が参画、行政と住民が協力しながらコミュニティ復興を進めることで、地域の社会統合を促進しようというアプローチが試みられました。
「いくつかのパイロットプロジェクトの実践で状況を変えられるほど、事態は簡単ではない。しかしよい実践を積み重ねて、信頼関係を構築し、社会の再統合を目指していかなければならない。」とプロジェクトに深くかかわってきたコネ・シアケ アボボ第四副市長。社会統合のために、それぞれの関係者ができることは?そしてJICAなどの外部からの支援者に期待される役割は?セミナーでは、プロジェクトのカウンターパートである内務省や2つのコミューンの行政関係者のみならず、国際機関や支援機関、住民組織や市民社会など、大雨の中、108人の参加者を得て、白熱の議論が展開されました。
フェーズ1では、異なる民族グループが一丸となって作業を実施。
1時間の割当では不足するほど議論が白熱しました。
前半は、これまでのプロジェクトの取り組みとフェーズ2での取り組みを紹介しました。案件担当の内務・治安省のプロジェクト・ダイレクター、バラ氏からは「行政と住民が社会統合に向けて手を取り合って協力していきたい」とのメッセージ。おカタい役所からの思わぬ姿勢に、会場から拍手が送られました。
後半は、COSAYフェーズ1にかかわった両コミューンの行政関係者と住民代表によるパネルディスカッションをきっかけに、場内参加者との意見交換セッションを行いました。パネリストとして、同プロジェクトのフェーズ1にて住民との共同を行った両市役所職員と、同フェーズのパイロットプロジェクトを実施した住民委員会の代表者の計4名が登壇。それぞれの立場から「社会統合」のために行政や住民が果たす役割について意見が述べられました。
住民委員会代表者からは、パイロットプロジェクトによって、異なる民族グループが協働することや、見返りを求めない社会貢献の精神を学んだこと、市役所からはパイロットプロジェクト選定過程において、住民と市役所がともに公正な基準に沿ってプロジェクト選定作業にあったったことが有意義であった旨語られました。
その後、来場者も交えての意見交換は、割り当ての1時間を大きく超えて白熱しました。社会統合の問題がいかに多様で、根深い問題であるかが多く語られました。またCOSAYの試みの妥当性や、持続性などについても、必ずしも肯定的ではないものも含め率直な意見が飛び交い、プロジェクトのアプローチを相対化する視点を得ることができました。そして今後、関係者間での意見交換や活動の調整の必要性、社会統合に関するフランクでオープンな議論の継続の必要性などが提起されました。
今回のセミナーの様子は、テレビ、ラジオ、新聞など現地7社のメディアに紹介、改めて社会統合に対する現地の関心の高さが伺えました。時間の制約上、議論しつくせない部分が残りましたが、本プロジェクトの進捗に合わせ、今後も同様のセミナーを継続的に開催し、「社会統合」について広く議論する機会を設けていければと思います。