科学と開発をつなぐブリッジワークショップ:SATREPS研究成果の発表とSDGs達成への貢献に向けて

2018年7月30日

概要

会議名:2018年度科学と開発をつなぐブリッジワークショップ「会って・驚いて・役立てる」
開催日:2018年7月30日(月)
共催:国際協力機構(JICA)、科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)
後援:国際連合工業開発機関(UNIDO)東京事務所、国際協力NGOセンター(JANIC)、一般財団法人新エネルギー財団、一般財団法人 バイオインダストリー協会、一般社団法人日本防災プラットフォーム、SDGs Holistic Innovation Platform(Japan Innovation Network・国連開発計画(UNDP)共同運営)
場所:JICA市ヶ谷ビル国際会議場

主な参加者

発表研究者:
帯広畜産大学 原虫病研究センター 横山直明 教授
国立国際医療研究センター 研究所熱帯医学・マラリア研究部 狩野繁之 部長
長崎大学 熱帯医学研究所 皆川 昇 教授
東京大学 大学院医学系研究科 徳永勝士 教授
東京大学 大学院農学生命科学研究科 岡田謙介 教授
山梨大学 大学院総合研究部国際流域環境研究センター 風間ふたば 教授
京都大学 野生動物研究センター 幸島司郎 教授
京都大学 エネルギー理工学研究所 三浦孝一 特任教授
群馬大学 理工学部環境創生理工学科 野田玲治 准教授
京都大学 防災研究所 井口正人 教授
京都大学 防災研究所 川池健司 准教授(研究代表者代理)

研究者以外の発表者:
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金 平田美緒様
一般社団法人発明推進協会 諏訪頼正様
UNIDO東京事務所 廣瀬雄大様
JST 太田三晴様/JIN 小原 愛様(共同発表)
JICA国内事業部 斉藤幹也

聴講者:
企業・開発コンサルタント・NGO・財団法人・財団法人・国際機関・大学・研究機関などから116名

背景・目的

2015年9月、国連で世界共通の開発目標としてSDGs(持続可能な開発のための2030アジェンダ)が採択され、科学技術分野においても、革新的な技術によるイノベーションを通じてSDGsの達成に寄与することが一層求められるようになりました。

JICAとJST(2015年度よりJSTが担っていた感染症分野がAMEDへ移管)は、SDGsの採択に先立つ2008年、日本の科学技術とODA(政府開発援助)を連携させるプログラムとして「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS:サトレップス)」を共同で開始しました。この事業は、日本と開発途上国との国際共同研究を振興するとともに、研究成果の社会生活へ活用(社会実装)を目指すものであり、環境、低炭素社会、防災、生物資源、感染症の5領域を研究対象として、現在までに50ヶ国で133案件が実施されています。

この度、科学技術の成果を開発協力やビジネスなどでの社会実装につなげ、SDGsの達成を推進することを目的に、今年度に最終年を迎えた11件のSATREPS案件の研究代表者が、開発協力従事者や企業関係者に向けてその研究成果を紹介し、双方が意見交換するワークショップを開催しました。開発協力従事者や企業関係者が、開発途上国の課題解決に挑む研究者に会って、新しい技術や知識に驚いて、開発協力やビジネスの中で役立てる機会を提供しました。他方、研究者へは、開発協力従事者や企業関係者との交流を通じ、研究成果の更なる社会実装への着想を広げる場を提供しました。昨年8月に初めてのブリッジワークショップが開催され、今回は2回目の実施となりました。

内容

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ブリッジワークショップ会場

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研究者からの発表

本ワークショップでは、現在実施中のSATREPSプロジェクトの中で、最終年である5年目を迎える案件(東京大学徳永教授の案件は4年目)から開発途上国での共同研究の成果と社会実装の見込みを発表していただきました。SATREPSのテーマ別には、感染症領域から4案件、生物資源領域1件、環境領域3件、低炭素社会領域1件、防災領域2件、合計11案件の発表となりました(詳細は添付「ブリッジワークショップ・プログラム」を参照のこと)。加えて、研究成果の社会実装を促進する方策として、新薬開発のための官民ファンド(グローバル技術振興基金)、開発技術の市場マッチングをインターネット上で行うデータベース(WIPO GREEN及びUNIDO環境技術データベース)、JSTが終了後のSATREPS案件を対象に実施したビジネス化支援プログラム、JICA中小企業海外展開支援事業のイノベーション枠を紹介しました。

発表後の研究者と聴講者との意見交換や事後のアンケートを通じて、SATREPS案件における研究者と企業・開発協力従事者の連携から研究成果をSDGs達成に向けるために克服すべき課題までが活発に議論されました。その中で出されたいくつかの意見を以下に記します。

  • 研究プロジェクトが社会実装までを真剣に考えていることは評価される。
  • 社会実装までを想定するのであれば、特許(知財)戦略を考えるべき。
  • 開発コンサルタントがSATREPSの研究成果などを積極的に情報収集することで、無償資金協力事業やJICAの技術協力プロジェクトに活用できる。
  • 開発コンサルタントのSATREPSへの積極的な取り込みが望まれる。
  • ビジネスへつなげるのであれば、研究段階から民間を参入させるべき。
  • 企業側も社会実装に向けて研究者との連携を図ることを積極的に推進すべき。

今後に向けて

今回のワークショップは、昨年度に引き続き2回目の開催となりました。発表の研究は分野も内容も多岐に亘るものの、紹介された新しい技術と知識に聴講者は新鮮な驚きを示していました。研究成果の社会実装を通じてSDGsの達成に役立てるためには、今後も研究者と開発協力従事者や企業関係者との継続的な連携が重要です。これからもSATREPSの研究成果を広く一般に紹介する場としてブリッジワークショップを毎年開催する予定です。今回の聴講者が次回も参加することで、より深い議論が行われ、産学連携が一層促進されることが期待されます。

資料

(社会基盤・平和構築部 国際科学技術協力室)