2018年9月7日
真備町の浸水被災地視察の様子
2018年8月27日から9月7日にかけて、7カ国9名を対象に課題別研修「防災主流化の促進」コース(JICA関西所管)を実施しました。今年度に内容を更新した本コースは、仙台防災枠組グローバルターゲット(e)「2020年までに国家・地方防災戦略を持つ国を増やす」を踏まえたものであり、東京での第1週目は中央政府の役割やライン省庁における防災政策・施策を中心とした講義・視察、神戸での第2週目には県や市町村レベルの役割、地方防災計画を主体とした講義に加え、7月に岡山県倉敷市真備町で発生した豪雨による浸水被災地の視察と、地方防災計画の策定演習を組み込みました。
演習にあたっては、事前に各研修員が対象の自治体を指定し、基礎データや災害履歴、既存の各種地域計画、重要インフラ所在地等の資料を来日前にデータで送付して貰いました。演習時は研修員とJICA地球環境部 防災グループ職員がチームを組み、「地方防災計画策定の実践的ガイド(8ステップ)」に沿って協力して確認・議論を行い、地形図上や付箋に整理したものを、ステップごとに全体発表するという手順で進めました。演習の最後に成果物である自作の地方防災計画(ゼロドラフト)を発表するとともに、帰国後に知見共有のため実施するセミナーの計画、今後の知見の活用、次年度のプログラムへのフィードバックについて説明を行いました。
演習(8ステップに沿った地方防災計画作成)の様子
従来の防災分野の研修では、発災前の対策と発災後対応の両方を扱うことが通例で、発災後の緊急対応に興味が行きがちな研修員も少なくありません。本研修では発災後の緊急対応を極力排した結果、研修員からは「リスク削減のための防災への事前投資の重要性を初めて理解した」という声が上がり、今後もグローバル·プラットフォーム等への参画を通じたグローバルターゲット(e)推進への貢献とネットワーキングの継続に意欲を持っている様子でした。
今回の演習について所要時間や進め方の更なる改善を行いつつ、仙台防災枠組の重点事項に絞った研修モジュールを検討し、「総合防災行政」等のコースにも反映させる準備を進めていきます。
本研修は、仙台防災枠組グローバルターゲットのうち最初のフェーズであるターゲット(e)「2020年までに国家・地方防災戦略を持つ国の増加」を踏まえ、それぞれの地方のリスク特性に応じた事前防災投資計画等を策定するための実践的な演習を含んだ研修として、防災グループでも初めて実施するものである。
2018年5月にUNISDRの新代表である水鳥防災担当国連事務次長補兼事務総長特別代表がJICA北岡理事長と対談された際にも、ターゲット(e)の達成について危機感が共有され、JICAが世界を先導してターゲット(e)の達成方法を具体化してほしいという要望も受けていた。その延長で2018年7月には、日本政府ジュネーブ代表部の要請でUNISDRサポートグループ会合において、地方防災計画(投資計画)策定の8ステップについてプレゼンを行い関係各国にインプットしたところである。
このような背景もあり、ターゲット(e)の達成に向けて研修内容を集中させた初めての実践的な研修でもあり、今後あらゆる場面で本研修のサブスタンスを防災グループ職員が当該国のプロジェクトで実践し、JICAの他部門へも主流化する影響力を保持し、円借款他の資金ファシリティをモビライズできるだけの具体性を持った計画を立てる能力を持ち、さらには世界にスタンダードとして広めていく必要があるため、防災グループ職員を担当国の研修員に張り付け、共同作業として実践的演習を行うこととした。
今後他の防災関連の全研修を、本研修で得られたターゲット(e)の実践、予算の確保、具体の防災事業の推進、というプロセスに沿って研修内容の改善を図る予定である。
閉会式の様子