第13回ラムサール条約締約国会議(COP13)

2018年10月25日

概要

会議名:第13回ラムサール条約締約国会議(COP13)
開催日:2018年10月25日(木) 18:15~19:30
主催:JICA地球環境部森林・自然環境グループ
場所:Festival Arena、ドバイ、アラブ首長国連邦

主な参加者

登壇者

JICA地球環境部 国際協力専門員 長谷川 基裕
環境省 自然環境局 野生生物課 市川 智子
エルサルバドル国 環境・天然資源省 Ms. Georgina Mariona
日本工営 コンサルタント海外事業本部 環境事業部 青木 智男
日本工営 コンサルタント海外事業本部 環境事業部 浅野 剛史

パネリスト

ラムサール条約事務局 マリア・リベラ

背景・目的

2018年10月21日~29日にアラブ首長国連邦・ドバイにて第13回ラムサール条約締約国会議(COP13)が開催されました。同条約は、国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全促進を目指しており、現在170か国が加盟、日本では新たに登録された2か所を含む計52か所が登録されています。

ラムサールCOP13のメインテーマは「都市部の湿地保全」であり、本サイドイベントではJICAのイラン、エルサルバドル、パプアニューギニアにおける湿地保全の技術支援の取り組み及び、日本の谷津干潟におけるグッドプラクティスを紹介し、それがどのように議決実施に貢献しているかという点を中心に情報発信を行いました。

また、本イベントでは、ラムサール条約事務局の方を迎え、多様なステークホルダーを巻き込んだ保全計画策定や地域住民への啓発において何が重要かといった今後の展望と課題をテーマにパネルディスカッションを行いました。

内容

事例紹介

イラン アンザリ湿原環境管理プロジェクトフェーズ2

  • 危機に瀕する湿地としてリスト化(モントルーレコード)されているアンザリ湿地の回復を目的として、これまでJICAは15年間イラン政府を支援してきました。支援の総括として、採用してきた戦略ならびに総合的アプローチ(流域管理)、得られた結果の発表がありました。

エルサルバドル オロメガ湖・ホコタル湖統合的湿地管理プロジェクト

  • 防災の観点を取り入れ、湿地の遊水機能を考慮した湿地周辺の土地利用計画を提案することにより(Eco-DRR:生態系を活用した防災・減災)、広域的貢献に繋がっている事例の紹介がありました。また、現地砂糖キビ会社などとの民間連携も進めており、マルチセクターの取組となっています。

パプアニューギニア 生物多様性保全のためのPNG保護区政策強化プロジェクト

  • 海洋保全を進めるためにはステークホルダー間の連携が重要であることから、開発業者を含むイニシアチブを立ち上げた事例の紹介がありました。首都ポートモレスビーに近い湿地であることから、都市部の人々の教育面においても重要な活動になるとの説明がありました。

本邦環境省 谷津干潟における保全の取り組み

  • 千葉県の谷津干潟を中心として、都市近郊の湿地が提供する各種の環境教育プログラムの紹介がありました。特に若い学生がボランティアとして活動に参加しており、JICAを介して海外からの研修生も訪れることから、このプログラムは国際協力の重要な一翼を担っています。

パネルディスカッション

多様なステークホルダーを巻き込んだ保全計画策定や地域住民への啓発において何が重要か

  • 負のインパクトの発生源は湿地の外である場合が多いことから、湿地保全には組織間連携が重要となる。
  • 自然環境分野においては、次世代の育成が必須であり、都市部の湿地保全は、絶好の教育環境と位置付けられる。
  • 人に身近に位置する都市の湿地は、多くの価値を有するものの、失うまでその価値は認識されることがないという傾向がある。したがって、負の影響が出る前に事前の対策を講じておく点が重要である(precautionary approach)。

その他、今後の展望について

COP13では、都市部での持続的な湿地管理や湿地の賢明な利用(ワイズユース)について活発な議論があり、グリーンカーボンに続き有望とみられているブルーカーボン(注1)及び泥炭湿地(注2)保全促進に関する決議がなされました。
ブルーカーボン生態系保全については、現在、JICAはイラン沿岸域保全マスタープラン作成及びフィリピン・インドネシアSATREPS案件でブルーカーボン戦略策定支援を実施しており、今後も積極的に情報発信及び事業成果の活用をしていきます。
泥炭湿地保全については、JICAはインドネシアにおけるSATREPS、技術協力、及び中小企業海外展開支援事業を通して当該分野の知見と経験を蓄積しており、引き続き本分野において国際的にリードをとっていきます。

(注1)海の生き物によって吸収・固定される炭素。これに対して森林に吸収される炭素は“グリーンカーボン”と呼ばれる。
(注2)泥炭地において吸収・固定される炭素は“ゴールドカーボン”と呼ばれることもある。

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会場の様子

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サイドイベントでプレゼンをする長谷川専門員(中央)とラムサール条約事務局Rivera氏(右)

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パネルディスカッション