難民グローバル・コンパクトへの日本からの提言 -TICAD 7に向けて-

2018年10月27日

概要

会議名:難民に関するグローバル・コンパクト:社会全体としての取り組み-日本からの提言 -TICAD 7に向けて-
開催日:2018年10月27日
主催:UNHCR/JICA共催
場所:国連大学 ウ・タント国際会議場(東京)

主な参加者

  • 石川 幸子(JICA国際協力専門員)
  • ダーク・ヘベカー(国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日代表)
  • フィリッポ・グランディ(国連難民高等弁務官)
  • 二村 伸(日本放送協会(NHK)解説委員)
  • 紀谷 昌彦(外務省国際協力局参事官兼アフリカ開発会議(TICAD)担当大使)
  • 小向 絵理(国際協力機構(JICA)国際協力専門員(平和構築))
  • ブライアン・バーバー(ニューヨーク州弁護士/Act for Peaceアジア太平洋地域難民保護アドバイザー)
  • 新田 幸弘(株式会社ファーストリテイリング グループ執行役員/サステナビリティ部)
  • 新垣 修(国際基督教大学教授)
  • 本清 耕造(国際協力機構(JICA)理事)

背景・目的

2018年10月27日、JICAとUNHCRはグランディ国連難民高等弁務官の来日に合わせて公開シンポジウム「難民に関するグローバル・コンパクト:社会全体としての取り組み-日本からの提言 -TICAD 7に向けて-」を共催し、約270名が参加しました。

2018年に「強制的に住むところを追われた人々(forced displacement)」の数は過去最高を記録しました。国連の「難民に関するグローバル・コンパクト(GCR)」は、難民の大規模な移動と長引く避難生活への国際的な対応の強化を目的とするもので、2018年末までに採択予定です。
本シンポジウムではGCRの採択と2019年の「第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)」の開催を見据え、難民と受け入れコミュニティに対する支援に社会全体としてどう取り組むかを、日本政府、UNHCR、JICA、NGO、民間企業、学術機関、メディアからの参加者が議論しました。JICAからは本清耕造理事(総括)、小向絵理専門員(パネリスト)、石川幸子専門員(総合司会)が登壇しました。

内容

グランディ高等弁務官は基調講演で、「強制的に住むところを追われた人々は6,800万人に達した。武力紛争が長期化・再発の傾向を強める中、日本政府とJICAがコミットしている人道と開発のネクサスは非常に重要。難民の約3分の1がアフリカで受け入れられており、TICADが重要な役割を果たす」と世界の現状を紹介しつつ日本、JICA、TICADへの期待を示しました。
続いて、高等弁務官を含めた6名によるパネルディスカッションが3部に分けて行われ、NHKの二村解説委員がモデレーターを務めました。第1のテーマ「ホストコミュニティ支援と人道と開発のネクサス」に関し、外務省の紀谷TICAD担当大使が、難民グローバル・コンパクトへの日本の貢献を紹介し、TICADは経済開発を議論するだけの場ではなく、人道と開発のネクサスや人間の安全保障、平和構築も重要な課題との認識を示しました。JICAの小向国際協力専門員は、紛争の長期化に伴い中長期的な視点での支援の重要性が増していると指摘し、北部ウガンダを例に開発機関の強みを生かしたホストコミュニティ支援を紹介しました。
次に、「高等教育と自立支援」について、国際基督教大学(ICU)新垣教授、小向専門員、NGO Act for Peaceのバーバー氏より、シリア平和への架け橋・人材育成プログラム(JISR)やICUのシリア人学生イニシアティブ(SSI)等、難民の留学生としての受け入れと人材育成事例を紹介。ファーストリテイリングの新田執行役員からは、ユニクロでの難民の雇用や、アジアでの難民の自立支援プロジェクトの紹介がありました。
パネルの最終セッションでは「責任分担、多国間主義、社会全体としての取組み」に関する議論と質疑応答を行い、難民の受け入れによるポジティブな効果の周知、国民の意識変容、多様なアクターの参加と連携が重要との認識で一致。高等弁務官は、「日本が持つポジティブなイメージは世界の中でも出色で、難民や紛争問題における重要なプレーヤー」と述べ、小向専門員は、「JICAが最も重視しているのは難民受入国政府と地域住民との協働」と強調しました。二村解説委員は、「メディアは難民のネガティブな側面に焦点を当てがちだが、ポジティブな面も取り上げるべき」と意欲を示しました。
最後にJICA本清理事が、以下のようにシンポジウムを総括しました。「人道と開発のネクサスは現場での実現が重要。難民の85%が途上国で受け入れられる中、国際社会は受入国のオーナーシップを尊重し支えるべき。また、難民を生み出す根本原因への対応が不可避で、JICAは紛争が繰り返されない「強靭な国づくり」に取り組んでおり、TICAD7に向けアフリカの紛争解決への議論が深まると期待している。」

関連リンク

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(基調講演)グランディ高等弁務官 @UNHCR

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(総括)本清理事 @UNHCR

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石川専門員(左)二村解説委員(中央)@UNHCR

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紀谷大使(左)、小向専門員(右) @JICA

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会場全景 @UNHCR