2018年10月31日
竹谷上席国際協力専門員のプレゼンテーション
2018年10月30日、31日の二日間、兵庫県淡路市においてアジア防災会議(Asian Conference on the Disaster Reduction(ACDR)2018)が開催されました。この会議は、アジア防災センターの20周年を記念して実施されたもので、25ヶ国以上のメンバー国やパートナー国からの代表団100名以上が参加しました。4つのセッションと2つのサイドイベントが実施され、その中のサイドイベントの1つをJICAが主催しました。
JICAの主催イベントはターゲット(e)達成の目標年度である2020年に向けた中央および地方防災計画策定の促進をテーマに、各国における取り組み事例や課題、今後の方針などを議論しました。本イベントは5名の登壇者を迎え、竹谷上席国際協力専門員をモデレーターとして進められました。
最初の登壇者である株式会社パシフィックコンサルタンツの森山氏は、防災への適切な事前投資をテーマに、自社で開発しているDRAD2(Disaster Risk Reduction Investment Accounts for Development)モデルの紹介を行いました。初期モデルの開発にはJICAや京都大学も関わっており、各国の状況により適切な事前投資レベルも変わってくるという前提を基に、DRAD2を使用したシミュレーションにより最適な事前投資レベルを評価する事ができます。今後さらに事例を増やし、展開していきたいと述べられました。
モンゴル国非常事態庁(NEMA)のGanzorig氏、ベトナム国農業農村開発省(MARD)のTuan氏、フィリピン国国防省市民防衛局(OCD)のMarluo氏には各国における災害の状況や地方防災計画に関する取り組みについてご紹介いただきました。
モンゴルでは仙台防災枠組の実施に重点を置いて取り組んでいることや、防災に関するコミュニティ参加型の国家プログラムが策定された事などが挙げられた一方で、予算や人材不足、政治情勢の不安定さなどの課題があるとし、引き続き課題解決に取り組んでいきたいと報告されました。
ベトナムでは防災分野におけるロードマップを作成し、その中で設定した6つの優先プログラムを実施していくとともに、現在は地方防災計画の策定に注力している事の他に、リーダーシップやキャパシティ、予算の確保などに多くの課題があることを主張されていました。
フィリピンのMarlou氏は最初にルソン島の事例を基に地方防災計画に関する取り組みや課題を報告され、加えて防災分野において早期警報システムの導入や地方防災機関の体制強化、予算の割り当てなど多くの活動を実施している事を報告されました。課題をまとめ、今後の方針として地方防災計画策定においてDRRMを主流化していくこと、コミュニティレベルの認識・主体性を促進する事などを主張されました。
最後に、株式会社地球システム科学の加藤氏より防災計画の策定に関するプロジェクトの事例をご紹介いただきました。ベトナム、エクアドル、スリランカの例をもとに、JICAのプロジェクトとして地方防災計画の改訂に関する支援の実施や事前投資コンセプトを含む防災計画の作成など各国で実施した成果を伝えていただきました。会場の参加者からは、地方防災計画の策定の難しさに対するコメントが挙がり、同様にJICAにサポートをお願いしたいという意見もありました。
パネルディスカッションの様子
各登壇者の発表後、パネルディスカッションを行い、地方防災計画を促進していく上で各国の課題や取り組みの優良事例、他国の活動で取り入れたい事をテーマとして登壇者の意見を伺いました。その中で、課題にどう取り組んで行くべきかに焦点をおいた意見が多く述べられました。
最後にJICAから、ターゲット(e)の目標達成は確かに難しいが、ドナーのみではなく会議に参加したすべての国の代表団を含めて合意を取り設定されていたものであり、全ての国が主体的に取り組んでいくべきと主張しました。本イベントを通して、各国の登壇者を含む参加者に改めて仙台防災枠組とターゲット(e)達成の重要性を伝え、引き続き目標達成促進の必要性を発信できました。