2019年3月6日
仙台防災枠組にはグローバルターゲット(e)「2020年までに国家・地方の防災戦略を有する国家数を大幅に増やす」が掲げられていますが、レスポンスプランのみで既存及び将来のリスク削減に繋がらず、適切な地方防災戦略(計画)を持たない国が多く存在しています。そこで、現在JICA地球環境部 防災グループはそれらの国における地方防災計画策定に向けた支援に注力しており、今回は3つの具体的な取り組み事例を紹介します。
2019年1月7日(月)から2月15日(金)にかけて、9ヵ国(ハイチ、インドネシア、メキシコ、ミャンマー、ネパール、パキスタン、フィリピン、スリランカ、ベトナム)から10名の行政官が参加し、「地方防災計画」策定演習を実施しました。
防災グループが提案する「地方防災計画策定8ステップ」に基づき演習は5回に分けて行われ、研修における講義・視察を演習に関連付けて配置し、計画案の策定を進めました。各研修員とも演習を経る度に理解を深め、最終日には各ステップの要点を的確にカバーした地方防災計画案を作成することができました。本研修は研修委託先のモデレーターとともに演習の実施方法を試行錯誤しながら取り組んでおり、2019年度も実施を計画しています。
今後も研修で得られた教訓を演習ガイドラインや8ステップに反映させ、より有益な演習にしていく予定です。
スリランカ地方防災計画策定セミナーの様子
2019年2月26日(火)にスリランカ国コロンボにて、地方防災計画策定推進のためのセミナーを、スリランカ行政・災害管理省の長井専門家と同省が共催で実施しました。
セミナーには、スリランカからは同省大臣・次官以下幹部に加え、同省地方出先機関、地方自治体、関連省庁(灌漑省など)、日本からは駐スリランカ日本大使や国土交通省など、総勢140名が参加しました。
本セミナーでは地方防災計画の重要性と実践的な策定手順(8ステップ)を日本側より発信しました。またスリランカ側からも地方防災計画策定に向けた防災行政の現状と取り組みについて発信(上記の「総合防災行政(A)」に参加した研修員も登壇)され、日本・スリランカ双方で今後の課題と計画実施における課題について議論を行いました。これにより、各関係者が念頭に置くべき事項や実施すべき活動を具体的にイメージできるようになり、特に中央省庁と地方自治体の連携促進への共通認識を醸成できたと考えています。
本セミナーの結果を踏まえて、これから長井専門家と先方が協力し、カル川流域において地方防災計画の策定を行っていき、また2019年度の新規技術協力プロジェクトにおいてケラニ川流域における地方防災計画の策定を支援していく予定です。
竹谷上席国際協力専門員のプレゼンテーション
2019年3月6日(水)にベトナム国ハノイにて、地方省を対象に仙台防災枠組の実施推進に係るワークショップを開催しました。ベトナムMARD(農業農村開発省)/VNDMA(防災総局)の舘専門家が主催し、当日は、VNDMAのHoai総局長やベトナムの全地方省(63省)から防災関係者が参加し、地方防災計画の策定・実施の促進について議論しました。
ベトナム側からは、3省から地方防災計画策定に関する現状や課題、今後の改善案が紹介されました。
JICA側からは、これまでの災害対応メインの活動から、仙台防災枠組を踏まえた事前投資と防災計画策定の重要性について改めてインプットしました。また「地方防災計画策定8ステップ」を紹介しました。
今回、現行の地方防災計画が災害対応中心となっている事が改めて分かりましたが、全地方省の担当者には防災分野における事前投資・予防対策へとシフトする事の重要性を強調し、防災計画に反映されるよう発信することができました。
今後は後任の専門家により引き続きベトナムへの支援を行うとともに、実施中及び実施予定の技術協力プロジェクトとも連携し、地方防災計画策定を推進していきます。