JICA、UNHCR共催「トルコにおけるシリア難民支援セミナー」

2019年7月1日

概要

会議名:JICA、UNHCR共催「トルコにおけるシリア難民支援セミナー」
開催日:2019年7月1日
主催:JICAとUNHCRによる共催
協力:日本紛争予防センター(JCCP)
場所:東京、JICA市ヶ谷地球ひろば国際会議場

主な参加者

登壇者

ダーク・へベカー(UNHCR駐日事務所代表)
安井毅裕(JICAトルコ事務所所長)
瀬谷ルミ子(JCCP理事)
ファトマ・シャーヒン(トルコ ガジアンテップ市長)
山田順一(JICA理事)

参加者 約86名

背景・目的

2011年3月に勃発したシリア内戦から8年が経過し、その間シリア国外へ逃れた人は500万から600万人ともいわれる。シリアと最も長い国境を接するトルコは、内戦直後からシリア人を受け入れ続け、今やその数は360万人、世界一の難民受け入れ国となっている。トルコ南東部に位置するガジアンテップ市は、シリア国境に接しており、多くのシリア難民を受入れ、支援してきた。今般、シリア難民支援円借款事業の対象自治体でもある同市のファトマ・シャーヒン市長(元国会議員、元家族・社会政策省大臣)を日本に招待する機会を捉え、トルコにおけるシリア難民の現状と日本の支援に関するセミナーが開催された。

内容

2019年7月1日、「トルコにおけるシリア難民支援セミナー」が、JICAとUNHCR駐日事務所の共催により開かれた。平日夕方からの開催にもかかわらず、民間企業、公的機関、メディア、研究者、学生など幅広い層から86名もの聴衆が集まった。最前線で難民受入の指揮を執っているシャーヒン市長の他、へベカーUNHCR駐日事務所代表、安井JICAトルコ事務所長、また現地で難民支援にあたっている日本紛争予防センター(JCCP)の瀬谷理事長から、現在のトルコにおけるシリア難民問題が抱える課題が聴衆に共有された。

最初に、ダーク・へベカーUNHCR駐日事務所代表より、世界全体における難民問題の現状と、シリア国内における国連の活動内容がデータとともに共有された。へベカー代表は、難民問題に取り組む鍵として、教育など基本的な権利や社会サービスへの難民の包摂、難民の将来への備え、ホストコミュニティへの支援を挙げた。これに加え、中東から遠く離れた日本においては、シリア支援のための意識啓発を強化していく必要がある点についても指摘した。

安井毅裕JICAトルコ事務所長の発表では、まずシリア情勢の経緯や難民数の推移、トルコでの難民受け入れ状況が説明された。安井所長は、大多数がキャンプ外で暮らしていることや、難民生活の長期化などの課題を挙げ、これら課題に対処するための社会インフラ整備や人材育成などのJICAの取り組みを紹介した。そして、社会経済的に多様なシリア難民のニーズに合った形で支援が届くように、多様な機関が協力していく必要性を強調した。

続いて瀬谷ルミ子JCCP理事長からは、JCCPの活動拠点であるトルコ南部のメルスィン県のシリア難民の現状が、豊富な事例とともに紹介された。瀬谷理事長は、トルコにおけるシリア難民が抱える問題として、経済的困窮、言葉の壁、行政サービスや支援情報の不足、メンタルヘルス・心理社会的課題、ジェンダーに基づく暴力被害の5点を挙げ、こうした問題を解決するための多岐にわたるJCCPの取り組みについて説明した。

最後に、ファトマ・シャーヒンガジアンテップ市長より、同市が行っているシリア難民支援活動について紹介された。人口200万人の都市に約40万人のシリア難民が流入した同市が直面したとりわけ深刻な問題は、上下水インフラのキャパシティ不足であった。市長はこうした状況に際してJICA事業を通じて行われた日本からの支援について改めて感謝の意を述べるとともに、引き続いての支援を求めた。また、市長はシリア難民の過激化、テロ組織との接触を防ぐため、子供たちへの学校教育や職業訓練が重要であると述べたうえで、共に学び、共に働く共生モデルの実現のため、子供たちのドロップアウトを防ぐためのフォローの重要性についても強調した。

セミナー閉会挨拶では山田順一JICA理事が、世界にはシリア以外でもロヒンギャやアフガニスタン、南スーダンなど、多くの難民がおり、JICAは今後もUNHCRやNGO・民間セクターとの協力関係を強化して、難民が元の生活を取り戻せるよう努めていくと述べ、国際社会が協力して対処するべき課題である難民支援に対する一層の理解と支援を求めた。

質疑応答では、新たなビジネス創出など世界を多様化するといった難民問題の正のインパクトについての各登壇者の見解や、難民を受け入れる際の政治家のリーダーシップ以外の要因、シリア安定後の難民帰還問題に関するトルコ政府の立場、等の質問が寄せられた。フロアからはこのほかも多くの質問が寄せられ、改めてシリア難民問題への聴衆の関心の高さを伺わせた。

資料

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ファトマ・シャーヒン市長による発表の様子

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会場の様子